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朴槿恵大統領を風刺するビラ、“レーム・ダック”から“デッド・ダック”へ

2015年02月16日 | 三千里コラム

2月12日夕方、釜山市内に撒かれた風刺ビラ



朴槿恵大統領への支持率が一向に回復しない。30%を境にして、3週間も停滞している。韓国社会では政権の支持率を判定する際に、30%を「心理的なマジノ線」と見なす。政権の統制力や求心力が急速に低下する末期症状、いわゆる“レーム・ダック”状態に陥ったと分析するのだ。

5年任期の半分も経過していないのに“レーム・ダック”とは、いささか早急すぎる感じがしないでもない。だが、2月1日付『ハンギョレ新聞』のコラムを読んで、状況はもっと深刻なのかもしれないと思った。コラムは“デッド・ダック”という題名だった。“レーム・ダック”が「末期症状」なら、“デッド・ダック”は文字通り、「臨終もしくは瀕死の状態」を意味するからだ。

コラムで筆者のイ・ドンゴル教授は、次のように指摘している。
「新年の記者会見が重大な契機となった。朴槿恵大統領は国家の最高指導者に相応しい品位、知性、寛容に欠けているだけでなく、大統領職を遂行するだけの知的能力も自信も持っていないことを露呈した。そして、人間として自身を振り返る自省能力さえもないことを証明した。だが、本当に決定的だったのは、大統領の政治スタイルが全く変わっておらず、これからも決して変わらないだろうことを国民に印象付けたことだ。」

2012年12月の大統領選挙では、国家情報院が組織的な世論操作を行い、選挙結果に重大な影響を及ぼしたと告発されている。当時の国家情報院長、元世勲(ウォン・セフン)氏に関する裁判が進行中だ。一審は選挙法違反の容疑を無罪と判決し、彼は執行猶予で釈放された。だが、2月9日の控訴審でソウル高裁は選挙法違反の事実を認定し、懲役3年の有罪を宣告した。彼は法廷からソウル拘置所に収監された。

朴槿恵政権には大きな痛手となる判決だが、大統領は自らの関与を否定し、すべての責任は李明博・前政権が負うべきだとしている。しかし、大統領当選の合法性に、深刻な疑念が生じたことは否定できまい。最高裁(大法院)の判決が注目されるところだ。

そして2月12日、釜山市の中心部では、朴槿恵大統領を風刺する大量のビラが撒かれた。ビラの「表面」には着物姿の朴槿恵大統領が描かれており、背景に沈没するセウォル号と‘7時間?’の文字。「裏面」には‘雪の女王’姿の朴槿恵大統領と、作業服姿の李明博・前大統領。現大統領には「退陣せよ!」、前大統領には「投獄せよ!」のスローガンが英語で書かれている。

本日(2月16日)、国会では朴槿恵大統領の推挙を受け、李完九(イ・ウァング)議員の国務総理任命同意案が採決される予定だ。今回の人事も、野党だけでなく与党議員の一部が反対しており、世論の反応も芳しくない(過半数が反対)。違法な不動産投機や兵役逃れなど、国会議員としての資格すら問われている人物であるからだ。朴槿恵政権は総理の人選で失敗をくり返してきた。今回は与党単独で、強行採決も辞さない方針だという。

しかし、適格な国務総理すら選出できずに右往左往する政権なら、もはや国政を担当する資格も能力も喪失したと見なすべきだろう。“デッド・ダック”という聞き慣れない言葉、好ましくは思わないが、言い得て妙な気がするこの頃である。(JHK)