新村ロータリー付近で撒かれたビラ(2月25日、ソウル市)
「大統領直属機関である国家情報院の院長が、公職選挙法違反で拘束されました。この事件一つで、朴槿恵政権の正統性は完全に崩れてしまうのです。」
2月25日、新政治民主連合のイ・ヘチャン議員が国会の対政府質問で投じた言葉です。以前のコラムでも紹介したように、2月9日、元世勲(ウォン・セフン)前国家情報院長は公職選挙法違反で有罪判決を受け、法廷拘束されました。イ・ヘチャン議員は続けて、次のように現大統領を糾弾しています。
「全斗煥大統領の時ですら、国家情報院がこれほど露骨に選挙介入をしたことはありません。なぜ、わが国がこのようにブザマな姿になりましたか。大統領直属機関の前院長が拘束されたのですよ。これほどの事態になったら、大統領は国民の前に謝罪しなければならないものです。」
当日の対政府質問では、イ・ヘチャン議員に先だち、与党・セヌリ党の李在五(イ・ジェオ)議員も、政府を厳しく批判しました。
「‘傲慢な政府’は悪い政府です。ところで、‘傲慢な政府’よりさらに悪いのが、‘無能な政府’です。そして‘無能な政府’よりさらに悪いのはどんな政府か。‘正直でない政府’です。選挙公約を破っておきながら、公約違反で申し訳ないと、国民に一言も発しないような政府は‘正直でない政府’です。国民は‘無能な政府’はがまんするが、‘正直でない政府’には耐えられないものです。」
国家情報院の大統領選挙介入に有罪判決が出たことは、朴槿恵政権の出発点(正統性)そのものへの問題提議となります。例えば、大学入試での不正合格(カンニング)が発覚すれば、当然ながら入学許可は取り消されます。2012年の大統領選挙は「無効」だと最高裁でも判定されそうな現状ですが、朴大統領は相変らず沈黙しています。3月1日から 、116名の大規模な財界視察団を引率して、中東諸国を外遊する予定です。
しかし、民心を侮ってはなりません。今月に入って、政権批判のビラが全国に広がっています。12日、釜山市内でのビラ散布が嚆矢でした。16日に大邱市のセヌリ党本部前、24日に慶尚北道のヨンヤン邑地域と北上し、25日の午後には、ソウル都心で大量のビラが撒かれる事態となりました。
ソウル市内では、あろうことか大統領官邸前の歩道と、新村(シンチョン)ロータリー付近で撒かれています。ビラは二種類です。一つ目のビラは朴大統領と情報院長の写真を掲載し、「不法・不正選挙疑惑が事実と判明。朴槿恵氏、あなたの進退は?」と書かれています。もう一つのビラには「じゃあ、私に辞退でもしろというの?」という大統領のセリフに続き、「うん。そうだよ!」という有権者の回答が続きます。ビラの名義は2枚とも、『民主主義を念願する市民たち』でした。
植民地統治期に、李相和の抵抗詩「奪われし野にも春は来るのか」(1926年発表)が人々に愛唱されました。朴槿恵大統領の心境はどうやら、「疎まれし政権にも春は来るのか」といったところでしょうか。(JHK)