魚屋夢遍路

流されているのか、導かれていのか、突き進んでいるのか、当事者には計り知れない。

どっこい、生きてた、管直人 (菅さんが総理になる前の時です)

2012-11-18 09:01:08 | 旅行

 目覚めてみれば、雨模様で、風も出ている。携帯電話のウェブで、天気をチェックしてみる。台風が近づいている様子だ。
果たして、今日は如何したものか?困った時の巫女頼みで、車御殿に朝のご挨拶かたがた伺うことに・・・
 すると、車内では、朝食に焼く魚を、さばくのに難儀されている。ここは出番とばかりに鯵を開き、ついでに焼いて差し上げた。
ならば、昨日〆た鯛もあると言われ、みれば食べごろだ。すぐさま刺身に引き、潮汁を仕立てる。
どうせならと、鬼嫁らも呼び、豊後水道の海の幸で豪華な朝食と相成った。
 お金を持っている人が食材を接待し、手に職のある者が調理を接待する。まさにお遍路様さまである。
刺身もさることながら、潮汁の鮮烈な香りのジャブでくらっとし、透明に丸く点在する鯛の脂と刻みねぎの汁を飲み込んで、旨みのフックに腰が砕け、目玉と唇をしゃぶりコラーゲンストレートをくらい、ノックダウンしてしまった。なんという育ちの良い鯛であろうか! 親の顔が見てみたい。いや、豊饒の海の賜物か。
 食後のコーヒーまでいただきながら、四国には八十八ヶ所に加えて、「別格二十箇所のコース」が在ることや、さらには日本中には「観音巡り」とか「薬師廻り」など様々なお寺参りが、数限りなくあり、さらにはキリスト教やイスラム教にも、色々な巡礼の習慣や遍路道があると教えてくれた。
この人はかなり廻ったらしく、変わった風習など、よく話してくれた。
私は小心者だが負けず嫌いでもある。密かにこれはもう仕事どこではなくなるなぁ、とおぼろげに思った。
 車内で、つけっ放しにしてあったテレビの画面が、天気予報に変わった。台風はまだ沖縄北方で、どうやら本日の南予地方は、そう荒れる気配はなさそうだ。
巫女さん達は海岸線をのんびり走り、番外のお寺などをめぐると言うが、路銀に限りのある我がお遍路チームは、そういう訳には行かない。丁寧にお礼を述べていると
「そだら気にするもんでね、わらし怪我さすでねど、はぁ、いげ」
 なんともアッサリとしていて気持ちの良い別れだ。
 めずらしく、のんびりと朝食をとったせいか、雨のせいか、いつものせっかちな気分は何処へやら、十一時頃、ゆっくりと愛媛県南部の中心都市宇和島へ入る。
 ここには水産高校がある、言わずと知れた「宇和島水産高校」だ。
平成十三年二月十日、ハワイ・オアフ島沖の南約十海里付近で、米海軍原子力潜水艦「グリーンビル」が急浮上し、実習船「えひめ丸」に衝突。えひめ丸は衝突後5分程度で沈没。
 えひめ丸に乗船していた実習生4名、教官2名、船員3名が死亡した。原因は極めて不埒な理由による原潜の操艦ミス。
当時の日本政府の弱腰、アメリカの大国エゴには、憤懣やるかたない思いをさせられたものだ。私は漁師ではないが、魚のお陰で飯を食っている。仲間が殺された気がした。
 車を学校の脇に止めて、しばし手を合わせた。もし自分の子がと思うと、鎮魂などと言う、ありきたりの気持ちではいられない。
合掌はしたものの、何をどう祈ればいいのだろう?気持ちが分からないから言葉にならない。だだ、手を合わせるしかなかった。
 第四十一番札所龍光寺には、昼前に到着。雨は小休憩といった空模様、車疲れした留吉と、その守りに鬼嫁を残し、小春と車を出る。
本堂への石段を登って見上げれば、上から降りてくるのは、テレビで見たことのある政治家の顔。
間違いない、元民主党代表の管直人氏である。しかし、超多忙を極める大物政治家が、お遍路など考えられない。ましてや一人である。
 近づくにつれ、かなりふらついて見える。これはあやしいと思い、私よりも霊感の強い小春に、
「あそこにおじさんが見えるか」
と確認する、小春がうなずく。ならば。あれは霊体か? うちのワンワンじいちゃん同様に、死後、思うところあっての、お遍路だろうか?
 いくら有名人でも、お化けとなったからには、こちらも遠慮がない。石段を上下にすれ違いざまに思いきって、声をかけてみる。
「やぁ、菅さん、ご苦労さんです」
 振り向いた菅さんは、いつものあの爽やかな笑顔だった。支持者のどなたかと思われたのだろうか、返事をしてくれた。
「ああ、お元気ですか」
 誰と勘違いしているのだろうか分からないが、幽霊に、元気かと、問われても、やりようがない。人なっこい目元につられ、つい、かまわず聞いてみた。
「いつ死んだんですか?」
 すると、さわやかな笑顔は、一変、しめやかな怒顔となり、差し出した金剛杖が私の足に触れた。え! もしかして幽霊でなく実体?
「からかうのはお止めなさい、無礼にも程がある。ただ、例の件で、反省のお遍路してるだけだ。いずれ復帰しますよ!」
 生きている実物、ご本人であった。そうとなれば、貫禄に気圧されて、足がガクガクと震えてきた。
睨まれている。パニクッて、お詫びの言葉が出て来ない。言うに事欠いて
「民主党万歳」
と叫んで、キョトンとする小春を背負い、山門に逃げ込んだ。
 手水場で水を飲み、一息つき下を見れば、管直人の背中が笑っているように見えた。この人、いずれ天下を取るかも・・・
 心臓がドキドキしたまま、本堂でお経を上げる。納経所で改めて訪ねてみたが、やはりご本人であった。
 このお寺は「お稲荷さん」も一所に祭られており、こちらには商売繁盛を祈願してお参りをすませた。
頃合を見計らって龍光寺を後にした。鬼嫁に事の次第を話したが、信じてもらえなかった。無理もない。



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