前略
もうあなたは,忘れてしまったかもしれませんが。
あのバイクに夢中だったころ,よくあなたとバイクでのデートを。あなたを後ろに乗せて山あいの道をよく走っていましたね。
その中で,いちばんの想い出は,突然の雨でトンネルの中で,雨宿り。
雨がやみ日がさしてくると,虹が。
「あの虹追いかけよ」
急いで,エンジンをかけ,あなたを後ろに乗せて。
ずっとずっと追いかけたんだよね。でもさぁ。虹ってさぁ,ほんの少し離れてるだけなのに,スピードを上げると,虹もスピードアップ。こちらがとまると,待っている。
どれぐらい追いかけたんだろう。山あいの道から水田の広がるところへ。道は,T 字路。その向こうに虹が。追いかけられない。
まるであなたのように,追いかければ逃げていく。止まれば,待っている。
でも,そこにいるんだけど,追いかける術が。
そして,あなたは,遠い奈良の大学へ。今も,幸せでいることを願っています。
草々
PS
あの時から,幾星霜。一世紀ぐらい前の思い出だったかなぁ。なんせ,この頃健忘症が,ひどく齢(よわい)100年ぐらい経ってるのかな。
この写真は,チェンマイ郊外の灌漑用の貯水池。その堰堤で見かけたバイク。野太い4ストのエキゾーストサウンド,痺れます。
こんなバイクで公道が走れるんだよなぁ。良いなぁ。