今、自衛隊の在り方を問う!

急ピッチで進行する南西シフト態勢、巡航ミサイルなどの導入、際限なく拡大する軍事費、そして、隊内で吹き荒れるパワハラ……

宮古島駐屯地に配備された自衛隊情報保全隊――住民を監視するスパイ組織の配備を弾劾する!

2019年07月03日 | 主張
 情報公開文書でバクロされた、宮古島駐屯地への自衛隊情報保全隊の配備

(情報公開で提出された宮古島駐屯地への配備部隊)

 筆者は、2019年4月10日付で「奄美、与那国駐屯地に公然と配備された自衛隊の情報機関・情報保全隊―このスパイ機関が宮古島に配備されたのは確実だが、これは重大な住民への背信行為だ!」という記事を投稿し、この記事の中で情報保全隊は、宮古島・石垣島への配備は不可避であり、すでに3/26開設の宮古島駐屯地に配備されているのは確実だ、と主張してきた。

 今回防衛省への情報公開請求で明らかになったのは、まさに、この与那国・奄美についで開設された、宮古島駐屯地への自衛隊情報保全隊の配備だ。
 しかし、何ということか。防衛省は、宮古島駐屯地への情報保全隊の配備を「黒塗り」して隠すという処置に出たのだ。上の情報公開文書「宮古警備隊の部隊編成」では「その他の部隊」が完全に黒塗りされている。

 ここには本来、自衛隊情報保全隊とともに、自衛隊警務隊などが明記される箇所である。実際、宮古島警備隊の上級部隊である第15旅団(沖縄島)の機関紙には、宮古島警備隊へは、普通科中隊などともに「その他警務隊など」が配備と明記されている(この情報公開文書では、警務隊をも隠蔽したというわけだ!)

 しかし、驚くなかれ、防衛官僚どもの浅知恵というか、愚かしさというか、全国への自衛隊情報保全隊配備文書では、与那国・奄美大島とともに、宮古島への自衛隊情報保全隊の配備が明記されているのだ(下記の配置図参照)

(明らかになった宮古島駐屯地への自衛隊情報保全隊配備と全国部隊への配備――右端の配備地名一覧に赤字で奄美、宮古と明記。またその横の一覧の最下部に与那国と明記)

 宮古島警備隊・奄美警備隊などへ配置された自衛隊情報保全隊の任務は、住民監視と治安弾圧!

 
 この自衛隊情報保全隊が、宮古島・与那国島などで、南西シフト態勢下でいかなる任務をなそうとしているのか。この実態は、すでに書いてきた筆者ブログを参考にしてほしい。
 以下は、4月10日付の筆者ブログ「奄美、与那国駐屯地に公然と配備された自衛隊の情報機関・情報保全隊」からの重要箇所の引用だ。ここで書いたことが、現在の南西シフト態勢態勢下の、自衛隊情報保全隊の任務である。全文は以下。
https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/dd39c1bec98ceb795c80eec2e1d3c883

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 治安出動態勢下に隊員監視から住民監視へと変遷した旧調査隊
 
 本来、「部隊等の運用に係る情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行う」(「自衛隊情報保全隊に関する訓令」第3条「(情報保全隊の任務」)として、部隊内の「隊員らからの秘密漏洩」のために設置された自衛隊情報保全隊(旧調査隊)は、防衛大臣直轄の「常設統合部隊」として、2009年に新たに調査隊から名称替えしてスタートした。この組織は、全国に中央保全隊ほか東北・西部など5つの保全隊が設置されていることから明らかだが、本来の保全隊の組織的配置は、陸でいえば「普通化連隊規模の大部隊内」への配置。これが、わずか160人の与那国、約600人規模の奄美、そして約800人規模の宮古島駐屯地に配備されるのは、異例の状況である。

 さて、この情報保全隊が、隊員らの調査・監視業務から、大きく離れて、もっぱら住民の調査・監視、スパイ(諜報活動)に任じるようになったのは、自衛隊の主要任務である「治安出動」と関係している。
  すなわち、1960~70年安保闘争による反戦運動の社会的広がりの中で、自衛隊はその最重要任務の1つとして、この時代に治安出動態勢に突入した。もっとも、この自衛隊の「国民を敵にして暴力的鎮圧」を行うという、血なまぐさい任務は、当然にも自衛隊員に動揺を生じさせることなった。

 この自衛隊の恒常的な治安出動態勢づくりは、治安出動態勢下における情報収集、対住民・市民対策として、旧調査隊の工作員を集会・デモなどに監視・潜入させるとともに、これらの部隊が日常的に「隊員監視」という業務から「住民監視」へと任務を変えていくことになったのである。

 住民を調査・監視し、「島嶼戦争」の「対スパイ戦」の任務にあたる情報保全隊 

 あまり知られていないが、自衛隊法の第78条「自衛隊の治安出動」には、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と規定され、第79条2には、「治安出動下令前に行う情報収集」として、「防衛大臣は、事態が緊迫し……治安出動命令が発せられる……ことが予測される場合において、当該事態の状況の把握に資する情報の収集を行うため特別の必要があると認めるときは、……自衛隊の部隊に当該者が所在すると見込まれる場所及びその近傍において当該情報の収集を行うことを命ずることができる。」と規定されている。
 
 重要なのは、この治安出動の規定は、国内の大規模デモなどを「間接侵略事態」(デモなどは外国からの教唆・煽動)として認定し、武力鎮圧を正当化していることだ。自衛隊が「災害派遣」などで、あたかも「国民を守る」かのような虚構に惑わされている人々にとって、この国民の正当なデモなどを「外国の教唆・煽動による間接侵略」とする規定は驚くことであろうが、これが自衛隊の本質であり、実態なのだ。

 陸自教範『野外令』『対ゲリラ・コマンドウ作戦』が策定する間接侵略論と情報保全隊の住民工作

 まず、陸自教範『野外令』は、第5編「陸上防衛作戦」の第7節「警備」の項で、警備の目的として「敵の遊撃活動、間接侵略事態等に適切に対処」、「間接侵略事態の様相は、多種多様である。……地域的にも局地的な事態から広範囲にわたる事態があり、その程度も非武装の軽度の様相から武装化した勢力による一般戦闘行動に準じる様相」、「間接侵略事態の主体勢力は、識別が困難であり、地域と密着した関係部外機関との協力なくしては、対処が困難である。また、武器使用に当たっては、非軍事組織に対する行動であることに留意」という(社会批評社刊『自衛隊の島嶼戦争ー資料集・陸自「教範」で読むその作戦』所収)。

 そして、結論として「多様な様相に適切かつ主動的に対処するため、早期から関係部外機関と緊密に連携した継続的な情報活動により、適時に情報を入手することが重要」「対象勢力に関する情報を……継続的に確保することが必要」としている。
 
 明らかなように、ここでいう間接侵略事態の対象は、武装したゲリラだけではなく、「非武装程度の様相」の「非軍事組織に対する行動」、つまり、基地・自衛隊に反対する、あるいは戦争に反対する市民・住民ということである。

 つまり、自衛隊は「陸上防衛作戦」の「島嶼戦争」下に、島々の住民対処――これは戦時下の住民避難としての対象ではなく、自衛隊の軍事行動を阻害し、妨害する反対勢力として、住民を対象化しているということだ。
 陸自教範『対ゲリラ・コマンドウ作戦』の第3編「不法対処行動」についても、自衛隊の治安出動下においての、情報収集活動や住民対策を規定しているが、これは別の機会に述べよう


(与那国駐屯地『配備された自衛隊情報保全隊[情報公開文書])


(奄美駐屯地へ配備された自衛隊情報保全隊[2019/4/1付奄美新聞])


(自衛隊情報保全隊の部隊章)


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