高く振りあげた剣を、そのまま静かに前に突き出す。微かな葉擦れの音が夜を際立たせ、闇をより深く引き寄せる。
鈍く光る剣はこの世のものではない妖しさを帯び、闇に力を与えている。
剣先を見つめる視線の先には黒い雲が流れ、山の向こう側の街灯りに浮かんで見えるその稜線が遠い。
この世はきれいなものばかりではない。
それらを葬ることが私の与えられた任のはずだった。
剣先を見つめる視線の先には黒い雲が流れ、山の向こう側の街灯りに浮かんで見えるその稜線が遠い。
この世はきれいなものばかりではない。
それらを葬ることが私の与えられた任のはずだった。
だがこの剣は、そういう人の世が定めた善悪美醜こそ忌み嫌う。人間が分けた《穢れたもの》という箱に投げ入れたものたちを祓おうとすれば、こちらがたちまち闇に呑まれてしまう。
私が剣を操るのではない。
剣が私を試している。
「お前は穢れのない存在なのか。祓う方の側なのか」と。
空で役目を終えた人口衛星が、オレンジの尾を引いた。
「お前にとって、あれは、美しいものなのか」
剣先に流れていくオレンジの光が消えても、私の中に解はない。
私はこの星に立ち、なにをしようとしているのか。これまで何を見てきたのか。
途切れた雲の先に広がるものを、鈍く光る剣の意味を、草木の声さえ、私は知らない。
私が剣を操るのではない。
剣が私を試している。
「お前は穢れのない存在なのか。祓う方の側なのか」と。
空で役目を終えた人口衛星が、オレンジの尾を引いた。
「お前にとって、あれは、美しいものなのか」
剣先に流れていくオレンジの光が消えても、私の中に解はない。
私はこの星に立ち、なにをしようとしているのか。これまで何を見てきたのか。
途切れた雲の先に広がるものを、鈍く光る剣の意味を、草木の声さえ、私は知らない。