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ロバート会議規則(20)

2022-05-29 11:45:31 | 日記

電子的会議規則の紹介
 ここからは、厳密には「ロバート会議規則」ではありません。ロバートの会議規則の(私が持っている)最新版には、電子的会議の記述はありません。また、「民主主義の文法」にもその記述はありません。私が持っている「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」に記述があります。ここでは電子的会議でロバートの会議規則を適用するにはどのようなことに注意を払うべきかということを話していきます。
 今や新型コロナウィルスの蔓延もあり、電子的に会議をすることが当たり前になってきました。多くの方がもう既に電子的会議を何回も経験していらっしゃると思います。
 ここでは、「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」をベースに、電子的会議をロバートの会議規則を念頭に整理していきます。ただし、「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」も2005年の出版ですから、そこから時代が進み、技術が格段に進歩しています。そこで、「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」を私の知識で補いながら、記述を進めていきたいと思います。
(ア)電子的会議の種類
 電子的会議の種類には次のものがあります。
i) ビデオ会議
ii) コンピュータ会議
iii) 音声会議
 以下、それぞれを説明します。
a) ビデオ会議
 いわゆるTV会議です。画像を映しだせる機器を使って相手の顔や会議場の様子が見える会議の形態です。以前は専用端末や専用のネットが必要だったりしましたが、現在はインターネットを使ってPCやスマホでビデオ会議が実施可能です。従前のビデオ会議では、会議資料を郵送、FAX、ネットで別送しなければなりませんでしたが、現在ではネットで共有することが普通になっています。
 皆さんも、Zoom、Webex、Skype等で相手の顔が見えるビデオ会議を経験されていると思いますが、この形態のビデオ会議は、2つ目の「コンピュータ会議」の1部となっています。
b) コンピュータ会議
 コンピュータ端末を使ったビデオ会議と表現してもよいと思います。コンピュータ端末には、PC、スマホ、タブレット等があります。コンピュータ間をつなぐネットワークは現在ではインターネットの利用が大半です。
 コンピュータ会議の最大のメリットは、会議資料を瞬時に会議参加者と共有でき、会議資料を画面に表示して会議ができることです。
 コンピュータ会議では、チャットと呼ばれるテキストベースの通信機能を具備しているものがあり、この機能を使うことにより、他の会議参加者の邪魔をすることなく、特定の会議メンバー(議長であることもあります)と情報交換ができるメリットがあります。私の経験では、Webexで授業をし、質問や意見を私宛てのはチャットで募ると、顔を合わせた授業より多くの質問、意見が寄せられました。チャットのメリットの1つを物語っていると思います。
 インターネットを使ったコンピュータ会議は(短時間、長時間)接続が失われてしまうことがあり、その点に注意が必要です。
c) 音声会議
 電話会議といってよいと思います。電話回線を使って会議メンバーと接続し会議を行う方法です。電話回線の代わりにインターネットを使う音声会議もありますが、あまり使われていないようです。
 この会議では、資料は郵送、FAX、ネットで別送しなければなりません。
 音声だけの会議はあまりメリットが多くないと考える方もいらっしゃると思いますが、手軽で意外と有効な会議方法です。
(イ)電子的会議のメリット
 「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」には、以下に示す電子会議のメリットがあげられています。これはその通りだと思います。
i) 大規模な国内会議、国際会議のコストを低減できる
ii) 単純な問題解決、情報共有、手順的な課題等に有効である
iii) 時間的制約、天候の問題、交通問題等で会議に参加できない構成員が会議に参加できるようになる
iv) よく準備され十分な機能をもつ電子会議では、顔を合わせて行う会議より全構成員が会議に参加することが多くなる
(ウ)電子会議のデメリット
「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」には、以下に示す電子会議のデメリットがあげられています。技術的障害、機器の障害が起こることがある
i) 非人間的であり、容易な人間関係の雰囲気を築きにくい
ii) 交渉を必要とするような複雑な問題の決定が難しい場合がある
iii) 構成員全員が電子会議のスキルを持っているとは限らない
iv) 生産的な会議には構成員のより多くの準備が必要である
v) 会議参加者の発言順序の指定など、会議場をコントロールすることが難しい場合がある
ii)は、顔を合わせて行う会議とうまく組み合わせることで回避することができます。iii)は会議の運営法で回避できると思います。v)は、端末の起動、ネットワークの確認、資料の到着確認などの準備が必要ですが、慣れによりそれ程面倒なことではなくなると考えます。
(エ)電子会議を導入する上での留意点
 「Robert’s Rules in Plain English Second Edition」には、以下に示すことが記述されています。電子的会議と会議規則の関係に言及しています。
 「グループで行う全ての種類の意思決定を支える民主主義的な原理を守ることが極めて重用である。電子会議は人々をつなげるが、グループの意思疎通や意思決定の複雑さを変えるわけではなく、むしろ悪化させることもある。技術が提供するすべてのメリットを享受する一方で、構成員は電子会議が自分たちの組織にとって邪魔するものか支援するものかを自分たちで評価しなければならない。顔を合わせて行う会議のメリットを低く評価しないことが重要である。次のような言葉がある。『仮想新婚旅行がリアルな新婚旅行を置き換えたら、仮想会議がリアルな会議を置き換える。』」
 上で言う仮想とは、電子的に実現されるという意味です。上の文章で重要なことは、①電子会議の評価は自分たち自身で行うことと、②顔を合わせる会議を低く評価しないことという2点です。①は会議は組織ごとにかなり違いますので、その組織の実情に合わせて考えるべきだということです。
(オ)会議からの要求事項
 議事規則は、「意思決定は、正式に招集され定足数を満たす会議で出席している構成員の過半数で決定されなければならない」、と定めています(なお、「出席している構成員の過半数」は、正しくは、「出席している構成員が投じた票の過半数」です)。議事規則は、顔を合わせて行う会議を前提に造られています。電子会議は、従来の顔を合わせて行う会議とは大きく異なっています。このため、先の議事規則を満たすために、電子的会議は次の議事要件を満たす必要があります。
i) 組織の規約に電子的会議の開催を認める条項があること
ii) 適切な会議開催通知がなされること
iii) 定足数を満たす構成員が出席していること
iv) 各構成員が自分の意見を述べる機会と他の構成員の意見を聞く機会が与えられていること
v) 電子会議での投票を確認するために、法的な投票は書面による承認によって入手できること
 i)、ii)、iii)は、組織が認める正規の会議であり、その開催要件を満たしていること、iv)は顔を合わせて行う会議と同じように構成員全員が会議で意見を言えること、最後にv)は、法律に関わるものは表決の確認手段があることを要求しています。
(カ)電子会議に要求される特別規則
 民主主義的な会議の進め方を保証するために次のような特別な規則を設ける必要があります。
i) 構成員定足数を確認する手段
例:議長が全構成員の名前を呼ぶ
ii) 審議(討議)のための規則
例:全員が話す機会を与えられたことを確認するまでは、構成員は1回しか発言できない。
iii) 発言権の獲得方法
例:「議長、〇〇(名前)です。発言を求めます」と発言し、議長が指名するまで待つ
iv) 投票方法と確認方法
例:議長が名前を呼び、賛成か反対かを問う。当然秘密投票はできない
v) いつ、どのようにして電子会議を開くかの基準をつくる
 技術が進んだ現在、i)及びiv)は電子的な方法が可能であり、秘密投票も可能であると考えます(電子的に本人が投票したことが確認できてかつ投票内容は秘匿する)。しかし、簡易な会議システムを使用する場合は、機能は限られており、そのようなことができず、上記は今日でも重要なことです。
(キ)電子会議を導入する場合に考慮すべきこと
 電子会議での会議の実施を検討する場合、次のことを考慮すべきです。
i) 構成全員が電子会議に違和感を持っていないか
ii) 全構成員がコンピュータ(PC)を操作でき、電子メール(Eメール)アドレスを持っているか
iii) 当該問題について、電子会議が最も適した方法か
iv) 問題は、顔を合わせて行う会議で十分に議論すべきではないか
(ク)どこから始めるか
 それ程議論が必要ないか、議論が全く必要のない情報共有、あまり重要でない事項、ルーティン的な事項から電子会議を始めるとよいと思います。これがうまくいけばより重要な問題を電子会議で行うっことを試みたらよいでしょう。



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