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ロバート会議規則(11)

2022-03-25 16:19:54 | 日記

進行をはかどらせる議事上の技術

この項では、貴重な時間を効率的に利用するための、議事運営上の技術(テクニック)を紹介します。

(ア)可能であれば全会一致の表決を用いる

 「全会一致の表決」とは、次の項で述べる「声による表決」の1形態です。このとき議長が会議参加者全員に対して「異議はありますか」と問い、誰も異議を唱えなければ、全員が合意している判断することを指します。一人でも「異議あり」と言えば、通常の表決を行います。議長が議場を見渡して、当該案件に意義がないようだと判断できるときは、この手法を使い会議の進行を速めることができます。

 なお、全会一致の表決の英語は、「民主主義の文法」の原書では”General Consent”、 「Robert’s Rules of Order Newly Revised」では、”Unanimous Consent”と”General Consent”の二つで表されています。いずれにしても、「全体の合意」の意味で、出席者全員が同意していることを表しています。

(イ)声による表決に基づく選挙も可能

 「声による表決」は、厳密な過半数のよる表決が要求されていないときに使用される表決手段です。声による表決は、まず議長が「賛成の方は賛成と言ってください」と言って、賛成と言っている人の大まかな人数を把握します。次に、「反対の方は反対と言ってください」と言って、反対と言っている人の大まかな人数を把握します。声から判断される賛成/反対の数に応じて表決の結果を決めます。賛成と言っている人の人数が明らかに多くても、必ず、反対の数を把握します。

 この項のタイトルにある「選挙」とは例えば役員の選挙等を指します。この役員の選挙は規約に正規の表決が必要であるとの規定がないとします。このとき、委員会などから指名されている役員が1名であり、かつ、議場からの指名がないときは、会議時間の節約のため、声による表決で構わないということです。

 なお、声による表決の英語表現は、voice vote、viva voce、by acclamation等があるようです。英文を読むときの参考にしてください。

(ウ)構成員の発言を議案化していく

 構成員が発言権をもとめ、議案提出という手順を踏まずに議論を始めたとき、議長は、上手に発言を遮り、発言者が取り上げたい問題を議案化する手助けをします。これは、1つ前の議題が終わった後の発言に対応するものでなければなりません。そうでなければ、「今審議している議題は○○です。この議題に沿った発言をしてください」と促さなければなりません。

(エ)討議の主眼があいまいな場合、常に検討中の議案を復唱すること

 上記(ウ)の後半部分のことです。ここの「討議(discussion)」は「発言」と置き換えた方がいいかもしれません。また、「主眼があいまい」は、英文では「wandering from the subject」で「主題から外れる」です。こちらの訳の方がよさそうに思います。

 討議に関連はするが、直接関係ないことを発言するというのは実際の会議ではよくあることです。これが、混乱を与えたり、正しい表決につながらなかったり、時間を浪費することになりますので、議長は適切に処理をしなければなりません。

(オ)議案の撤回を求める

 議案提案者が、議案の撤回を求めた場合、次のように対処します。

 ・議案の撤回は議案の提出であるが、支持(セカンド)は不要です

 ・全会一致の表決で決めます

 異議が出た場合、議案撤回の議題の表決を行い、その結果によって元の議題に戻って議論を続けるか(撤回が否決された場合)、新しい議題に移るか(撤回が認められた場合)します。

 撤回された議題は、あたかも何もなかったかのように処理され、当然議事録にも記録されません。

(カ)議論が割れない議事には一括議程表を使用する

 一括議程表は、複数の議題をまとめて掲示したものです。一括議程表の個々の議案を個別に表決を行うのではなく、掲示されている全議題に対して一括して表決を行います。これにより、時間を節約し、重要な議題に十分な審議の時間を与えることができます。

 一括議程表に掲示する議題は、メンバーの辞任の承認など、「意見が割れない」議案を載せますが、議長や専任のスタッフが作成します。

 一括議程表は、過半数の表決か、全会一致の表決を用いて表決を行います。

 

引き延ばし策について

 ここまでは会議を効率的に進めるための技術について述べてきました。この項はその逆の行為に対する対処です。

 引き延ばし策とは、故意に表決を遅らせるために無駄な発言や表決の延期を求める(画策する)ような方策です。組織としてある行動を起こすための期限がせまっていて、それには組織としての決断が必要であるが、そうはさせたくないときなどに使われます。一般市民の会議では、引き延ばし策が使われることは極めてまれだと思いますが、行政の会議などでは時々見かけます。会議メンバーは会議が正しく運用されて、その結果を享受する権利があります。したがって、引き延ばし策は会議メンバーの権利を奪う行為です。

 議長は、引き延ばし策に対しては、発言を遮って結論を急ぐように要求したり、場合によっては発言を認めないなどの断固とした処置をしなければなりません。


ロバート会議規則(10)

2022-03-23 06:59:37 | 日記

議程表の例

 以下に議程表の参考例を示します。

1.開会宣言

2.開会式

 (a)開会の辞

「民主主義の文法」にはこの後、次の祈祷及び誓約がありますが、これは日本の会議ではほぼ行われることがないと思います。また、日常的に行われている会議では、開会の辞は必要ないと思います。このときは、開会宣言の後、すぐに次の事項(議事録確認議事)に移ると良いと思います。なお、開会の辞は、例えば、年度当初の最初の会議などでは必要かもしれません。

(b)祈祷(まず神に対して)

(c)忠節の誓約(まず神に対して。続いて国家に対して)

3.前回会合の議事録の朗読と承認

4.役員の報告

 (a)会計報告、等

5.執行委員会の報告(年次会合の時)

 執行委員会の英語はExecutive Boardです。会議(会合)が所属する組織を管理運営する人々の会議のことだと思われます。

6.常設委員会の報告

7.特別委員会の報告

8.特別予定議事

 指名時期が決まっている委員会委員指名、活動報告・決算報告の承認などがこれに当たると思います。

9.継続議事と一般予定議事

 会議の前に付議することが分かっている議案の審議です。

 予定議事も、会議では提案者が説明します。

10.新規議案

 会議が始まってから会議に出席しているメンバーによって新たに提出される議案です。後に改めて述べますが、提案されたらすぐに審議に入るのではなく、議案が提出されたら必ず1名以上の同意(Second)を得たものだけが議題として取り上げられます。

11.連絡事項、催しもの

12.閉会

 


ロバート会議規則(9)

2022-03-22 20:48:24 | 日記

議程表

議程表は、議事次第、アジェンダ等とも呼ばれます。

(ア)会合で審議するもの、報告する情報のリストです

(イ)標準的な議程表のひな型を作っておくとよい

(ウ)報告を行う役員、委員会は、規約に掲載されている順序で並べます(順番は意外と重要です)

(エ)事前に報告することが分かっている役員、委員会だけを議程表にのせます。すべての事前に予定されている(即ち議程表に記載されている)報告が終わった後で「他に報告する方はいらっしゃいませんか」と聞くとよい。

(オ)指名や報告時期が決まっている事項は、事前に調査して、漏れがないようにします。

(カ)延期された表決がないか、会議前に議事録などで調べておき、必要であれば、議程表に記載します。

(キ)議事録
議程表の最初の議題は、議事録の確認です。「民主主義の文法」では、議事録は配付を前提とせずに、会議が始まってから読み上げるというスタイルをとっています。審議事項の多い役員会を除き、議事録の配付は必要とされていません。しかし、議事録は、議事録案として全メンバーに配布、それも事前配布することがよいと考えます。事前配布によって、会議メンバーの意識を高めたり、誤りの発見を早くして会議の効率を高めることができます。議事録を配付しても、会議の中で読み上げたり、会議参加者に黙読を要求したりすることはよいことだと考えます。


ロバート会議規則(8)

2022-03-21 14:04:18 | 日記

議長の心構え

 議長は、議事規則(ここで説明している議事を進めるためのルール)に従って会議を運営する責任があります。ここでは、議長を務めるうえでの心構えを述べます。なお、議長は、座長と呼ばれることもあります。

※英語版の単語はpresidentです。これを会長と訳すと紛らわしくなるため、ここでは座長という言葉を用います。

(イ)時間厳守で(会議場に)到着し、定刻に会合を開始すること

 大きな組織であれば、事務局が必要な手配をしてくれるでしょうが、小さな組織の議長は、会議に関するあらゆることを自分自身でやらなければなりません。会議開始の十分前に会議場に到着して、会議室の状況(椅子やテーブル、白板などの準備状況)、定足数に達するかどうか、議事担当者はいるかどうか、会議メンバーに配布する資料はそろっているか、などを把握しておく必要があります。そして最も重要なことは、定足数を満たしていれば会議を定刻にすみやかに始めることです。

(ロ)用意周到であること

 会議を進める予定表(議程表、議事次第、アジェンダ等と呼ばれます)を事前に作成し、それに従って会議を進める必要があります。

(ハ)どのようなことが起こっても対応できるように備えておくこと

 ここでいう「どのようなこと」とは議事進行に関することです。会議の進行が乱れても、議事規則や前例に従って、きちんと対処し、会議の秩序を取り戻すことができるように準備(勉強)しておく必要があります。

(二)教師であること

 議長は、手順を明確に説明し、順番として次に行う事柄を伝えて、会議メンバーが共同して作業(会議)を進めるようにしなければなりません。

 議案が不明瞭であれば、言い換えや文書提出を求めるようにしなければいけません。

(ホ)発言権を統制すること

 議長は、会議出席者を統制しなければなりません。

 ・発言の意思を示している人(たいていは挙手をしている)に公平に(できれば)名前を呼んで発言権を与える

 ・発言者の発言を遮ったり、大きな声で発言を妨害しているものに対して以下を言い渡す

  ・今は別のメンバーに発言権が与えられていること

  ・意見は発言権が与えられるまで控えなければならないこと

 ・私語は禁止されていること(他の発言者の発言中は沈黙を守らなければいけない)

(ヘ)公平無私であること(公平であること)

 発言権は、発言を希望するメンバーに公平に与えられなければならなりません。意見が賛成と反対に対立しているような場合、可能であれば賛成派、反対派に交互に発言権を与えるようにします。

(ト)落ち着いていること

 議長は、会議を進めるために常に冷静でいる必要があります。会議が紛糾しても、慌てず落ち着いて処理する必要があります。議事の紛糾や混乱には笑顔やユーモアが役に立つこともあります。

(チ)正確であること

 会議は正確に運営されなければなりません。このため、表決の前後で次のことを行わなければなりません。

 ・表決の前には、必ず表決する議題を再度読み上げること

 ・表決後は、選択された行為を解釈して、表決の結果を出席している会議メンバーに知らせること

 声による表決では常に正確さに留意する必要があります。必要であれば、起立、あるいは挙手による再表決を会議メンバーに要請しても構いません。

(ツ)焦点を定めること

 議長は無関係な議論を認めてはいけません。発言者の発言が、議題と関係のない方向に向かった場合、直ちにその発言者に対して、議案を再度説明し、必要であれば、「発言を検討中の議題に限定するように」と要求しなければいけません。

(テ)節度を保つこと

 この項は、米国の会議では広く使われ、日本の会議では使われない会議用の「槌」に対する戒めが書いてあります。槌は、開会と閉会の時に1度ずつ使うようにと。

日本の会議でもみんなの意識を集中させるために、呼び出しベルを議長席に置いておくのもいいアイディアではないかと思います(ただし使用は節度を持って)。


ロバート会議規則(7)

2022-03-14 09:50:03 | 日記

会議の進め方

 今回は少々長めです。

 会議に出席するにあたって、まず、心得ておくべきことをまとめています。

(ア)組織(グループ)の権利は構成員(メンバー)一人一人の権利に優る

 少々分かりにくいかもしれません。

 組織は、組織の目標・目的、構成員(メンバー)、構成員の権利、構成員の義務などが書かれた規約(Bylaw)があることが前提です。構成員は、組織の目標・目的に向けて協力し合わなければなりません。そのとき、各構成員は、自分のやりたいこと(やれること)を犠牲にする必要が出て来る場合もあります。組織の目的・目標は、組織を擬人化すると組織の権利という表現になり、自分のやりたいこと・やれることが個人の権利になります。もちろん、セクハラ、パワハラを許し、人権などを犠牲にせよと言っているわけではないはずです。組織の権利が個人の権利より優先するということは、組織の会議にも当てはまります。

 「民主主義の文法」には、会議中に「意見を述べることは俺の権利だ」といって、勝手に話続け、議長に「会議を進めること(組織の目的に向かって進むこと)を妨害している」として、制止、あるいは、退場を命じられる例が出ています。これが分かり易いかもしません。

(イ)すべての構成員は平等であり、彼らの権利も平等である

  会議に関する権利として、「民主主義の文法」では以下の権利を上げています。

 ・会議に出席すること

 ・議案を提出し、討議(審議)で発言すること

 ・役員を指名すること

 ・役員に就任すること

 ・表決すること

 上の2つ目のポツは議案を提出した構成員に関する記述のように見えますので、「議題に対して自分の意見を述べること」という項目があった方がいいように思います。

 3つ目のポツは、英語版(原書)では目的語がなく、単にnominateと書かれています。後ほど出て来る委員会の委員、委員長などを指名することもあるでしょうから、「指名すること」とした方がよさそうに思います。

 「役員」は「officer」の訳語ですが、誰なのかは明確に書かれていません。「presiding officer」だけは明示されており、議長は役員の一人であることは間違いないようです(preside:議長をする)。その他は、会計や書記なども役員と考えているようです。

 「表決」とは、要するに「決を採る」ことです。つまり、議題に対する会議(組織)の態度を決めることです。

 似た響のある言葉に、「決議(resolution)」があります。重要である、あるいは複雑な問題である、あるいはより公式性が必要である、等の議案は書面で提出されます。この書面で提出された議案を「決議」と呼びます。紛らわしいのですが決議は表決されるまで、一議案です。

(ウ)審議を進めるためには定足数以上の出席が必要である

 定足数とは、公式の会議を開くために必要な出席者数です。組織を代表しない少人数の人たちがいろんなことを決めることを防ぐために、定足数は会議に出席できる最大数の過半数とすることが多いようです(組織の構成員の半数を超えていれば、その人たちは組織を代表しているとみるということです)。ここで、過半数は半分を超えるという意味であることに注意が必要です。例えば、会議に出世する資格のある人が全体で60人であれば、過半数は31人であり、全体が59人であれば、30人になります。

 余談ですが、半数以上は、半数を含みますので過半数を説明するときには不適切です。

(エ)過半数が決する

 ある議題が賛否を問うものだとします。このとき、会議出席者全員が表決に加わり(後程説明する棄権する人がいない)、その半数以上が議題に賛成であれば、その議題で提案された内容が組織の結論であるとするということです。これも(ウ)の定足数と似た考え方です。

 注意すべきは、会議出席者が会議に出席する資格のある人の半数+1で、会議出席者全員が表決に加わり、議案賛成する人がその半数+1であったとすると、会議に出席する資格のある人の1/4+1.5人というわずかな人数で組織の方向が決められてしまうと言うことです。会議に出席することの重要性が分かると思います。

 表決は、会議出席者のうち表決に加わった数で可否が決定されます。表決に加わらないことを「棄権」と言います。表決は会議出席者の数から棄権の数を引いた数で可否が決まります。例えば、会議出席者数が10人だとします(定足数は満たしているとします)。ある議題の表決で、賛成3,反対2、棄権5だったとすると、表決に加わった数は5で、そのうち過半数の3人が賛成していますので、この議案は賛成多数として処理されます。

(オ)沈黙は同意を意味する

 棄権によってその議題に対して沈黙(賛否を表明しない)する場合、沈黙した会議参加者は、表決の過半数の決定に従うということを表明していることになります(従わなければなりません)。棄権は、どうしても態度を示したくないという以外、避けるべきです。

(カ)3分の2による表決

 構成員の権利を制限したり、はく奪したり、あるいは既決の事案を変更するなどの重要な議題の表決は、表決に加わった、すなわち、棄権者を除いた会議参加者の3分の2以上で採択する表決を行わなければなりません。

 3分の2による表決の事案は、予め規約で決めておくか、会議の中で議案として提出し、審議し(審議しないものもあります)、表決する必要があります。

(キ)1度に1つの議題、1度に1人の発言者

 審議している議題に直接関係ない議案は取り上げられません。例えば、自治会でゴミの出し方のルールを決めている議題の審議中に、ゴミ集め場所の掃除当番の回り持ち順序についての議案は、(一般には)取り上げられません。一方、ゴミの出し方のルールについては十分審議を尽くしたから表決に移ってくれ、という議案(議事進行議案)は取り上げられることが多いと思います。

 さらに、1人の構成員(会議出席者)の発言が認められると、その構成員には発言権が与えられ、他の構成員は発言を途中で遮ることはできません。他の構成員が発言するためには、発言していた構成員の発言が終了し、次に発言を希望する者(一般に挙手でその意を示す)に発言が認められてからでなくてはなりません。

(ク)討議が認められている議題は十分に討議されなければならない

 議事進行役(一般に議長)は、会議出席者がその議題を討議(審議)しなければならないという意思がある限り、それを無視して表決に持ち込むことはできません。討議(審議)の途中で表決に持ち込むためには、議案としてそれが提出され、出席者の権利を制限することになるため、3分の2による表決が必要です。

(ケ)いったん議題が表決されると、その議題を審議した会議で同一の議案やそれと本質的に同様な議案を取り上げる(議題とする)ことはできません

 要するに蒸し返して、議論を堂々巡りさせるな、ということです。この裁定(それはすでに審議して結論が出ているから議題として取り上げない)は議長が判断し、議案の審議を行うことはないのが普通です。

(コ)討議(審議)において個人攻撃をしてはいけない

 言わずもがなです。議論は論理的、理性的に行われるべきです。場合によっては客観的な証拠に基づいて行わなければなりません。会議参加者は個人として尊重される権利を有しています。