海野 碧(うみの あお)氏の作品を読むのは、はじめてである。いつもと同じパターンで図書館で目に付いて、頭を少し読んでというか、帯や、裏側の紹介文を読んで、面白そうと感覚的に掴んで、どうせタダだからと2週間に一回ずつ同じような事を繰り返している。
さて、今回はハードカバーの帯の紹介分だけで借りたのだが、紹介文より、中身がはるかに面白かった。ミステリー小説の分野に入るのか分からないが、逆にハードボイルド的な、泥臭い所と、どんでん返しを含めたとても楽しめる作品であり、本ブログを見てくださっている方に是非ともこれはオススメの作品です。
ネットで探していないが、TVドラマになっていそうな気もするが、2008年10月初版の為それは流石にないと思うが、それぐらい面白い。前回の作品神永 学(かみなが まなぶ)『タイム・ラッシュ』もミステリー小説(或いはサイコメトラー?ホラー?)の範疇に入ると思うが面白かった。前回の主役は若い青年真田だったが、今回の作品の主人公は、本来の自分の名前が、だまされて変わってしまい、その時アメリカのサバイバルスクール(訓練所)で生き残るすべを身につけた中年の男性であり、元やくざの同僚、フリーライターの女性と主人公を慕う若本4人の副業、つまり色々なトラブルを解決する始末屋の話である。
物語は、自分の本名(つまり同姓同名の人間)を名乗る男が無くなった事から始まる。元やくざの同僚から、ボスの依頼を引き受けるが、調べて行く内に、自分の分かれた母親との出会い、殺された自分の名前を持った男の背景となぜ殺されたのか?やくざのボスの実の息子の失敗と愛人の娘。その愛人の娘と恋愛関係に落ちた著名政治家の息子。その息子の家族とボスの息子と自分の名前を持つ男との関係。最後のどんでんがえしまで暴き、最後は母親の事故を自分で処理する事を選び、始末屋から足をあらおうとする男の物語である。
書 籍:『真夜中のフーガ The Fugue』
著 者:海野 碧(うみの あお)
発行年:2008年10月25日初版発行
発行所:株式会社 光文社
価 格:1,700円(税別) 縦1段組み352ページ
<ハードカバー帯の紹介> こんなことは面と向かってはとてもいえないが、 いい機会だから今言っておく。 母さん、ありがとう、産んでくれて。
自分と同姓同名の人間の死亡記事を見つけた朝、 「私」こと大道寺勉の歯車は回り始めた。 ---かって私を捨てた母との再会。 逃げられぬ邂逅は、男に何をさせようというのか?
過去。それは全てを赦すために存在する。
浄化される苦き思いと共に、人は生きる。静かなる感動に満ち溢れた傑作。
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<著者紹介> 海野 碧(うみの・あお) 長野県生まれ。短歌結社「白夜」幹部同人。『水上のバッサカリ』で第10回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。他著に、デビュー作や本作品と同じく大道寺勉が登場する『迷宮のファンダンゴ』がある。
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《主要登場人物:私の独断で記載》
・大道寺勉 ---通称ベンさん。18才まで橿原驟介(かしわら しゅうすけ)と言う名前(戸籍)だったが、18才で運命の悪戯としか言いようのないなりゆきで、戸籍を失う。やくざの弁護士に騙され、大学用のお金もパスポートも奪われ、米国のサバイバルスクールに閉じ込められる。7年後その弁護士に助け出され、今の大道寺勉の、戸籍を手にする事になり、以後、 車の修理業「サンモータース」を経営しながら、副業で始末屋を岡野、紫野、ヒデの4人でやっていたが、そろそろこの副業にも疲れ、そろそろ始末屋から足を洗おうと考えていた。
・岡野和明 --- 元極星会の組員だったが、見切りをつけ、かたぎとなり、大道寺と副業やその他金融業や手広くビジネスを展開している切れ者。
・戸矢崎紫野------フリーライターで主に女性週刊誌や月間の女性誌向けの記事を書き、警察官だった父親が残した興信所の調査員もしている。
・児島秀則 -------カメラマン志望の28歳の若者。通称ヒデ。大道寺を慕って、一緒のアパートによく泊まる。
・古賀敬一郎--- 関東最有力広域指定暴力団埴輪組の幹部で極星会のボス。今回の依頼人。つまり、愛人前田美香の娘、つまり目に入れても可愛い自分の娘の沙織が強迫されている件で、大道寺に調査と解決を依頼する。
・古賀哲郎---敬一郎の長男。次男はやくざ家業に嫌気をさし、親戚に養子として出て行った。極星会での後継者争いに血眼になり・・・。
・前田美香---古賀敬一郎の愛人だったが、古賀の力も借り、鎌倉で、自分の力を発揮しブティックを成功させた。地元でも有名人。
・前田沙織---美香の娘。つまり古賀敬一郎の娘。
・多田芳樹---沙織の恋人。
・多田葉子---著名な政治家で芳樹の母親。
・多田まりも---葉子の長女だが、要領が悪くのろい所等から、親にも兄弟にも馬鹿にされ家政婦同様の扱いを受けていた。
・橿原驟介---というか大道寺の戸籍を手に入れた人物。
・アツコ・モトミヤ・チャン---大道寺勉(橿原驟介)の実の母親で、18歳まで育てた後、シンガポールのかなり年上の財産家と結婚し、大道寺を捨てていった女性。
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