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シュタークスミス博士の大発明 2 ―平和のバクテリア―

2007年10月19日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで世界から戦争がなくなるぞ」
 博士の発明したものは、武器を感知してそれを食べてしまうバクテリアだった。戦いに使うものを食料として認識させるのにとても苦労したが、何とかバクテリア自身で判断できるまでに成長させたのだ。
 博士は笑顔を浮かべ、硬く栓をしたフラスコを持ち上げて言った。
「さあ、世界を平和にするのだ!」
 博士はフラスコを床に叩きつけた。バクテリアは空気に触れた途端に無限とも思われるほどに増殖し、風に乗って移動する。計算では明日中には世界中に広まっているだろう。
 しかし、博士の笑顔が急に消えた。
 バクテリアが砕けたフラスコを食べているのだ。ガラス片がどんどん小さくなって行く。
「確かに砕けたガラスは十分武器として使えるものな」博士は納得したような声で言った。「これは思った以上に知能が高いと言うか、判断力が高いと言うか。我ながら凄いものを発明したものだ」
 博士が胸を張っている間に、バクテリアは続いて研究室のコンクリート製の壁や鉄製の棚や薬品や木の柱なども食べ始めた。
「確かにどれもこれも使い方一つで武器にはなるが・・・いてててて!」
 博士は悲鳴を上げた。
 バクテリアが博士を食べ始めたのだ。
 考えてみれば、人間が戦いを生み出した張本人なのだから、バクテリアが武器中の武器と見なすのは当然と言えた。
 食べつくされた研究室で残ったのは、実験でしおれてしまったタンポポだけだった。

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