「これで全部揃ったわけね……」ジェシルはフリソデを着て、適当に巻いて余っているオビの端をぶらぶら振りつつ、デスクに置かれた三体の女神像を見比べていた。「どれも本物っぽくて、贋物ぽくって…… やっぱり分析器じゃないと分かんないわね」
ジェシルはデスクの一番上の小抽斗を開けると、熱線銃型の携帯分析器を取り出した。
これは宇宙パトロールの公式のものでは無く、その強烈な性格故に宇宙パトロール機器開発部を追われ、現在はフリーランスの機器開発屋となった、ドクター・ジェレミウスがジェシルのために作ったものだった。
ドクターとジェシルは、祖父と孫娘程の年齢差があったが妙に気が合った。ドクターは頑固で依怙地で偏屈で疑心暗鬼で、決して笑わず、常に怒鳴り散らし、機器開発部を暗い雰囲気に陥れていた。しかし、ジェシルと会うと何時もにこにこし、無理難題な武器や道具も最優先で作ってくれた。
そんなジェシルの頼れるドクターを辞めさせたのはトールメン部長だった。いずれはドクターの開発してくれたハイパープラズマ銃を部長に撃ち込んで、この世から消し去ってやろうと、ジェシルは密かに決意していた。
ただ、ドクターは現在フリーランスなので、犯罪者や犯罪組織からの開発を依頼され事もあり、宇宙パトロールから監視対象となっている。なので、ジェシルもドクターとの関係が露見すると、捜査官を辞めさせられる可能性は高い。そうなれば、その日が部長のいなくなる日になるだけの話ね。ハイパープラズマ銃の銃口を向けらた部長が、慌てふためくさまを想像して、漠然とその日が到来するのを期待しているジェシルだった。
分析器を銃のように構える。この銃型になっているのは、ジェシルの好みをドクターが考慮して作ってくれたものだった。
開発部にいた頃に「ジェシル、お前さんはぶっ放すのが好きだよなあ。わしも大好きだがな。かっかっか!」と、ドクターは笑いながら良くそう言って、熱線銃のパワーを少し上げてくれたりしたものだった。
「さすが、ドクター。わたしの好みを知り尽くしているわ」ジェシルは楽しそうに言い、撃ち倒すかのように、一体ごとに狙いを付け、スイッチである引き金を引く。銃口の形をした部分から白っぽい光線が発射された。「……これは違う。……これも違う。やっぱり、お相手の気を引くために、こんな尤もらしい贋物を作ったのね」
ジェシルは任務で赴いた地球の日本で聞いた「かぐや姫」の話を思い出していた。かぐや姫と結婚したいがために、かぐや姫の言った品をでっち上げて本物だとぬかした者たちだらけの話だ。
「あんな未開の惑星の住民共と、本質的に変わりが無いなんて、もう偉そうな事が言えなくなっちゃうじゃないの!」
ジェシルは最後の一体に光線を当てた。銃型の本体がピコピコと鳴った。
「これが本物ね!」
ジェシルは、その像を掴むと部屋を飛び出した。
つづく
ジェシルはデスクの一番上の小抽斗を開けると、熱線銃型の携帯分析器を取り出した。
これは宇宙パトロールの公式のものでは無く、その強烈な性格故に宇宙パトロール機器開発部を追われ、現在はフリーランスの機器開発屋となった、ドクター・ジェレミウスがジェシルのために作ったものだった。
ドクターとジェシルは、祖父と孫娘程の年齢差があったが妙に気が合った。ドクターは頑固で依怙地で偏屈で疑心暗鬼で、決して笑わず、常に怒鳴り散らし、機器開発部を暗い雰囲気に陥れていた。しかし、ジェシルと会うと何時もにこにこし、無理難題な武器や道具も最優先で作ってくれた。
そんなジェシルの頼れるドクターを辞めさせたのはトールメン部長だった。いずれはドクターの開発してくれたハイパープラズマ銃を部長に撃ち込んで、この世から消し去ってやろうと、ジェシルは密かに決意していた。
ただ、ドクターは現在フリーランスなので、犯罪者や犯罪組織からの開発を依頼され事もあり、宇宙パトロールから監視対象となっている。なので、ジェシルもドクターとの関係が露見すると、捜査官を辞めさせられる可能性は高い。そうなれば、その日が部長のいなくなる日になるだけの話ね。ハイパープラズマ銃の銃口を向けらた部長が、慌てふためくさまを想像して、漠然とその日が到来するのを期待しているジェシルだった。
分析器を銃のように構える。この銃型になっているのは、ジェシルの好みをドクターが考慮して作ってくれたものだった。
開発部にいた頃に「ジェシル、お前さんはぶっ放すのが好きだよなあ。わしも大好きだがな。かっかっか!」と、ドクターは笑いながら良くそう言って、熱線銃のパワーを少し上げてくれたりしたものだった。
「さすが、ドクター。わたしの好みを知り尽くしているわ」ジェシルは楽しそうに言い、撃ち倒すかのように、一体ごとに狙いを付け、スイッチである引き金を引く。銃口の形をした部分から白っぽい光線が発射された。「……これは違う。……これも違う。やっぱり、お相手の気を引くために、こんな尤もらしい贋物を作ったのね」
ジェシルは任務で赴いた地球の日本で聞いた「かぐや姫」の話を思い出していた。かぐや姫と結婚したいがために、かぐや姫の言った品をでっち上げて本物だとぬかした者たちだらけの話だ。
「あんな未開の惑星の住民共と、本質的に変わりが無いなんて、もう偉そうな事が言えなくなっちゃうじゃないの!」
ジェシルは最後の一体に光線を当てた。銃型の本体がピコピコと鳴った。
「これが本物ね!」
ジェシルは、その像を掴むと部屋を飛び出した。
つづく
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