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霊感少女 さとみ 番外編 22

2019年05月30日 | 霊感少女 さとみ 番外編(全32話完結)
「……あの、高瀬川さん……」落ち着きを取り戻した建一は、さわやかな笑みを浮かべる。「今日の君は、何だかいつもと違っている。いつもの君は、こんな事をする人じゃない。何かに取り憑かれているみたいだよ」
「おや、鋭いねぇ……」楓はつぶやくと、さらに艶っぽい笑みを浮かべた。「そんなことは気にしないのさ。さ、我慢しないで、わたしを好きにして良いのよう。こんなちんちくりんの小娘なんか、やめちゃってさぁ……」
「高瀬川さん」建一は真面目な顔になった。「ぼくに好意を持ってくれているんだよね?」
「そうよ、建一ちゃん」楓はさとみの両肩をつかむと、ずずずと横へずらし、建一と対峙する。「あなたが望むなら、わたし、何をされても良いのよぉ」
 じっと楓を見つめていた建一は、突然、頭を下げた。
「ごめんなさい!」建一は頭を下げたまま楓に言う。「ぼくが好きなのは、さとみちゃんなんだ! 高瀬川さんは、今日はどうかしているだけなんだよ。本当、何かに取り憑かれてるとしか思えない。だから、今日のことは忘れるよ」それから、建一はさとみに向き直る。「今日の高瀬川さんは、ちょっと変なだけだよ。すぐにいつもの高瀬川さんに戻るだろうから、決して絶交とかしないでほしい」
「須藤君……」さとみの両目から大粒の涙があふれる。「あなたって、とっても優しいのね…… わかったわ! わたし、麗子とずっと友達!」
「うん。ありがとう」
 二人は再び並んで歩き出した。さっきより二人の間の距離が少しだけ縮んだようだ。
 しばらく歩いてから、さとみがてこてこと楓の前に戻って来た。
「麗子! ありがとう! 本当は、わざとこんなことしてくれたんでしょ? おかげで、須藤君の気持ちがはっきり聞けて、とっても嬉しかったわ!」
「え? あ、はあ……」
 自信が崩壊してしまった楓は、心ここにあらずの返事をした。
 さとみは、楓のお尻をペちぺちと叩くと、建一の隣へ駆け戻って行った。
 楓はただ呆然と立っている。

つづく


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