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霊感少女 さとみ 番外編 21

2019年05月29日 | 霊感少女 さとみ 番外編(全32話完結)
 ちょうど、公園の角を曲がって、さとみと建一が並んで向かって来た。二人は笑顔で、時たま顔を見合わせては赤くなっている。並んで歩いているが、少し距離がある。それでも、二人だけの「幸せの世界」が出来上がっていた。
「あああああっ!」楓が地団駄を踏んで髪を掻きむしった。「なんだい、なんだい、な~んなんだい! あの幸せそうな、あのうぶうぶな雰囲気は! 見てるこっちのからだが痒くなっちまう、あのほんわか加減は!」
「なるほど、あれでは、さとみ殿は建一殿しか見えていないはずだ……」みつはつぶやいた。「それにしても良い雰囲気じゃないか。何やら手出ししたくない気分だ……」
「何を甘ったれたこと言ってんだい!」楓はみつをたしなめる。「それじゃ、剣士様はここにいるんだな! わたし一人でやってやらぁ! 良く見ておきな!」 
 楓は、ずんずんと、さとみたちの前へ進んだ。驚いて立ち止まったさとみたちを、楓が見つめる。
「な、何よ、麗子!」さとみが道をふさぐ楓に口を尖らせて文句を言う。「午後からいなくなったと思ったら、いきなりこんな所に現われるなんて!」
 今のさとみは楓だとはわからない。楓は、さとみから建一に目を移す。とたんに、うるんだ甘えたような眼差しになった。
「ふう~ん、近くで見ると、かわいい子じゃないか」楓は言い、建一に歩み寄る。「こりゃ小娘にはもったいないねぇ」
「やめてよ、麗子!」さとみは建一の前に立って両手を広げた。麗子の声が楓の声になっているのにも気づいていない。「麗子も、わたしと須藤君のこと、喜んでくれたじゃない!」
「うるさいねぇ……」楓はさとみをにらむ。「知らないのかい? 女心と秋の空ってさ。女の心変わりは、当たり前のものなのさ!」
「そんな、おばさんみたいな諺、使わないでよう!」
「おばさんだってぇ……」楓はむっとした顔になったが、すぐに思い直し、とろんとした甘えたような眼差しで建一を見つめた。「建一ちゃん…… こんなちんちくりんな小娘より、わたしの方が良いだろう?」
 楓の、いつの間にかはずしたブラウスの上二つのボタンの下に、白い胸元が見え、丸いふくらみの作る深い谷間が覗いている。
「どうだい? もっと見たいかい?」
「麗子! やめてよう! どうしちゃったのよう!」さとみが叫ぶ。「周りの人たちにも見られているのよ!」
「あらそう?」楓は周囲に目をやる。生身の男子生徒や男の霊体たちが立ち止まって見ている。「こらぁ! 見せ物じゃねぇぞ!」
 楓の迫力ある怒声に、クモの子を散らすように皆消えた。楓は、ふん! と鼻を鳴らし、改めて建一に艶っぽい視線を送る。
「……どう? 建一ちゃんが望むんなら、触らせてあげるよぉ」楓は言いながら、お尻を突き出す。「ここも触っていいんだよぉ。もちろん、どこでも構わないけどさぁ」
「麗子!」さとみが泣き出す。「いったい、どうしちゃったのよう!」

つづく

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