ちらりほらりと下校する生徒たちが、段々と増えて行く。
「百合江さん! 来たよ!」
見張り役の竜二が、大あわてで百合江の前まで駆けて来た。
「竜二さん……」豆蔵が呆れたようにため息をつく。「走って来なくても、来たのがわかった時点で、ぽんとここへ現われりゃ良いじゃねぇですか」
「え? あ、そう、そうだよな……」竜二はてへへと笑う。「でも、あわてちゃってさ。死んでるの忘れてたよ」
「……まあ、いいわ」百合江はえへんと咳払いを一つして気を取り直す。「じゃあ、手筈通りに、二人ともお願いね」
百合江は、楓とみつの肩をぱんぱんと叩くとウインクした。
「任せときな!」楓はぽんと胸を叩いてみせる。「楓姐さんの手練手管にかかりゃあ、五歳の坊主だって、めろめろのめろになっちまわぁ!」
「わたしも、百合江殿に御教示頂いたこの技で……」みつは技を試してみせた。男の霊体たちが雄叫ぶ。「必ずや仕留めてみせます!」
「そうよ、二人には、ここのみんなの存亡がかかっているのよ」百合江は袂から火打石と火打鎌を取り出し、カチカチと打ち合わせて火花を散らした。出発前の厄払いだ。「じゃあ、しっかりね!」
楓は余裕の笑みを浮かべて楽しそうに、みつは決闘に挑むような真剣な表情で、公園の門まで進んで行った。
「……じゃあ、あっしと竜二さんとで様子を見てめえりやす。何かありやしたら、お伝えに来やすので……」
豆蔵は言うと、竜二と共に消えた。
「ふふふ……」百合江はベンチに座り直し、袂から煙草を取り出してくわえ、火をつけ、ふうっと長く煙を吹き出した。「さとみちゃん、覚悟してね。まだ、他の人には渡したくないわ……」
楓とみつは公園の門の所に立っている。竜二がすっと現われて、うなずいてみせた。それを合図に、二人は門を出た。
つづく
「百合江さん! 来たよ!」
見張り役の竜二が、大あわてで百合江の前まで駆けて来た。
「竜二さん……」豆蔵が呆れたようにため息をつく。「走って来なくても、来たのがわかった時点で、ぽんとここへ現われりゃ良いじゃねぇですか」
「え? あ、そう、そうだよな……」竜二はてへへと笑う。「でも、あわてちゃってさ。死んでるの忘れてたよ」
「……まあ、いいわ」百合江はえへんと咳払いを一つして気を取り直す。「じゃあ、手筈通りに、二人ともお願いね」
百合江は、楓とみつの肩をぱんぱんと叩くとウインクした。
「任せときな!」楓はぽんと胸を叩いてみせる。「楓姐さんの手練手管にかかりゃあ、五歳の坊主だって、めろめろのめろになっちまわぁ!」
「わたしも、百合江殿に御教示頂いたこの技で……」みつは技を試してみせた。男の霊体たちが雄叫ぶ。「必ずや仕留めてみせます!」
「そうよ、二人には、ここのみんなの存亡がかかっているのよ」百合江は袂から火打石と火打鎌を取り出し、カチカチと打ち合わせて火花を散らした。出発前の厄払いだ。「じゃあ、しっかりね!」
楓は余裕の笑みを浮かべて楽しそうに、みつは決闘に挑むような真剣な表情で、公園の門まで進んで行った。
「……じゃあ、あっしと竜二さんとで様子を見てめえりやす。何かありやしたら、お伝えに来やすので……」
豆蔵は言うと、竜二と共に消えた。
「ふふふ……」百合江はベンチに座り直し、袂から煙草を取り出してくわえ、火をつけ、ふうっと長く煙を吹き出した。「さとみちゃん、覚悟してね。まだ、他の人には渡したくないわ……」
楓とみつは公園の門の所に立っている。竜二がすっと現われて、うなずいてみせた。それを合図に、二人は門を出た。
つづく
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