「それで赤いゲートなんだけど」ジェシルはマーベラに顔を向ける。「わたしたちが出てきたゲートからは戻れなかったわ。近くに戻れるゲートがあるのかどうかを調べる前にベランデューヌの民の子供に見つかっちゃて……」
「わたしたちのゲートはどうかしらね」マーベラがジェシルに顔を向ける。「多分、同じよね……」
「そう思うわ。元々が出口専用なのか、あるいは機能が停止されたのか……」
「機能停止……?」
「誰かが意図的に止めたって事だよ、姉さん」トランが割り込む。「誰かってのは、今のところは分からないけど」
「でも言えるのは、誰かがゲートを設置したって事よ!」ジェシルは力強く言う。「古代の物なら有り得るかも知れないけど、あんな精密な機械が偶然にそこにあったなんて考えられないわ!」
「ぼくもそう思う」ジャンセンが言う。「しかも、設置されていた場所も、あまりの意図的だ」
「わたしたちの場合は、一番下の地下三階に、いかにもって感じで置かれていたわ」ジェシルが言う。「あんな感じで置かれていたら、どうしても関心をもっちゃうわよ」
「ぼくたちもそうでした」トランがうなずく。「しかもデスゴンの衣装まであって……」
「ぼくたちもそうだった」ジャンセンが言う。「アーロンテイシアの衣装が、いかにも着てくださいとばかりに人型の木型に着せられていた」
「ショウウインドウに飾られたマネキンって感じだったわ」ジェシルが言う。「マーベラもそうだったんじゃない?」
「そうね。見ているうちに着たくなっちゃったわ(「わたしもそうだったわ)ジェシルが大きくうなずいて言う)」マーベラが答える。「で、こっちに来たら仮面が転がっていて、付けたくなっちゃった(「わたしには仮面が無かったわ」ジェシルは不満そうに言う)……」
「……それで、思うんだけど、何だか、仕組まれている感が満々ねぇ……」ジェシルは腕組みをし、考えを巡らせている。「……これは明らかに。わたしたちを狙ったものだわ。犯罪行為だわ」
「こんな事して、誰が喜ぶの?」マーベラが首をかしげる。「考古学者って言っても、世間から見れば目立った事はしていないわよ?」
「でも、誰かが喜んでいるんだわ……」ジェシルは言いにくそうな顔でマーベラを見る。「マーベラ、あなたに言うと怒るかもしれない人かも……」
「え?」マーベラの表情が険しくなる。「それって、まさか、マスケード博士の事を言っているの?」
「あくまでも可能性よ」ジェシルはなだめるように言う。「博士が誰かに利用されているって事だってあるわ」
「そうだよ、マーベラ」ジャンセンが言う。「ぼくだけじゃなくて、ジェシルも一緒だろう? ジェシルは評議院に顔が利く。煙たがっている連中も多いんじゃないかな?」
「考古学者なんかより、宇宙中に影響のあるあなたを狙う方が筋よね」マーベラは言って、目を細める。「じゃあ、わたしたちはついでって事かしら? 迷惑だわ」
「でも、マスケード博士からの依頼でぼくたちは動いただろう?」ジャンセンがマーベラに言う。「考古学に関しては、ジェシルは全くのど素人で、何も知らない無知蒙昧だ(「悪かったわね!」ジェシルは言うとぷっと頬を膨らませる)。だから、どっちかって言うとジェシルの方が、ついでじゃないかと思うんだ」
「マスケード博士は考古学の権威よ!」マーベラは苛立たしそうに言う。「マスケード博士自らが考古学を潰そうとするなんて考えられないわよ!」
「だから、博士が利用されているんじゃないかって事なんだ、姉さん」トランがなだめるように言う。「きっと大きな力に脅されているんだよ。何故ぼくたちが狙われたのかは分からないけれど……」
「真相を聞き出すために、直接博士に訊いてみなくちゃだわね……」ジェシルは言うと、にやりと笑う。「そうと決まれば、マーベラたちが出てきたゲートを調べなきゃね」
つづく
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