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シュタークスミス博士の大発明 27 ―携帯自動車―

2019年06月12日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで自動車の全ての問題は解決したのだ!」
 博士の発明したものは、折りたためる金属で作った自動車だった。開発した金属の塊を特製のプレス機で整型すると出来上がる。 
「製造費用も安く、行程も短い。しかも、ここをこうして…… こうやって……」言いながら、博士は自動車をまるで布のように折りたたんで行く。最後は折りたたまれたハンカチのようになり、ポケットに納まった。「これならば、駐車スペースがいらなくなるし、渋滞でイライラしたら折りたたんで歩いたりできる。しかも、素材は柔らかく軽いので、人や物に当たっても壊れるのは自動車の方だ。さらに、衝撃を吸収する素材でもあるので、運転手も同乗者も無傷だ。う~む、我ながらなんと素晴らしい発明なのだ。久し振りに人類に役立つ発明ができたぞ!」
 博士は自信満々に、色々な自動車メーカーに売り込みに行った。しかし、どこも採用してくれなかった。
「やれやれ……」博士はため息をついた。「自動車を作るのに、車体やらエンジンの部品やらネジの一本にまで、それぞれに業者がいるとは思わなかった。彼らを失業させるのかと怒られてしまった。さらに、駐車場が無くなると経営者が生活できなくなるとか、事故が無くなると保険会社が商売上がったりになるとか…… 仕方ない、自分用の自動車だけにしておこう」
 今の世の中、独走してはいけない。持ちつ持たれつなのだ。



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