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日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

シュタークスミス博士の大発明 18 ―真の善人―

2008年09月14日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで人類から悪人がいなくなるぞ!」
 博士の発明したものは小型のパラボラアンテナのようなものの付いた金属製の箱だった。作動させるとアンテナの部分からある特殊な電波が流れ、それを浴びた人たちの悪の心が無くなり、真の善人に代わると言うものだった。
「動物実験では天敵同士が寄り添い合うと言う良い結果が得られた」博士は満足げに言った。「では人で試してみよう。素晴らしい結果になるはずだ」
 博士は装置を抱えて、近くの公園に行った。休みで天気が良かったので、沢山の人が居た。
「うーむ、ぱっと見た感じでは、平和で穏やかな人たちだが、みんな悪の心があるんだ」博士は装置を作動させた。「今から悪の心は取り去られるのだ!」
 装置をあちこちに向ける。電波を浴びた人たちは、頭を抱え、その場にうずくまり、自分はなんと悪い人間だったのかと思い知らされ、おいおいと泣き出した。
 「まずは自分の悪い心に気付いて深く反省し、そこから真の善人として立ち直るのだ」
 十分に電波が行き渡ったのを見届けて、博士は装置を止めた。
 うずくまって泣いていた人たちは立ち上がると、誰彼構わず互いに指を差し合って、わめき始めた。
「どうしたのだろう?実験は失敗かな?」
 博士はつぶやき、わめいている人たちに近付いた。
「私は悪くない! 悪いのは君だ!」
「オレは悪くないぜ! 悪いのはオマエだぜ!」
「あたしは悪くないわ! 悪いのはあなたよ!」
 わめいている人たちは、みんな口々にそう言い合っていた。
「・・・そうか。自分が真の善人なら、周りは真の悪人になるよなぁ・・・」
 博士はすごすごと帰って行った。


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