お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

ヒーロー「スペシャルマン」・2

2009年03月25日 | スペシャルマン
 オレは「スペシャルマン」と呼ばれる正義のヒーローだ。常人の及ばない様々な特殊能力を秘めている。この力で悪を倒し続けているのだ。
 さて、ヒーローの条件の一つとして認識されているものに、変身を人に見せてはならないと言う事がある。
 オレはこれが不満だ。何故見せてはならないのだ? はっきり言って悪い事をしているわけではないのだ。その逆じゃないか。オレは世のため人のために悪と戦っているのだ。それならば、何をこそこそする必要がある? どこからともなく現われる正義の味方の方が、いやらしいと思わないか? 
 だからオレは堂々と変身姿を見せている。最近はびこっている悪の軍団「ブラックシャドウ」の活動が増しているだけに、一々隠れて変身などしている暇も無い。
 今日も営業で会社巡りをしている最中に「ブラックシャドウ」のアーマーメカが暴れている場面に遭遇した。アーマーメカを操縦しているのは「ブラックナイト二号」だった。大した敵ではない。オレは余裕の笑みを浮かべて、アーマーメカの前に出た。
「変身!」
 オレは叫び、変身ポーズを取る。普段では決してしないポーズを取る事で、体内の変身細胞がメタモルフォーゼをするのだ(オレにもよく分からないが、そう言う事らしい)。
 両腕を真上に上げ、それを前方へゆっくり降ろす。胸元まで下ろした時、バッと左右に開く。その後しゃがみ込み、顔を天に向け、「てやぁーっ!」と気合を入れて飛び上がる。空中で一回転し、その間に変身を遂げ、「スペシャルマン」として地に立つ。
 しかし、気合を入れて飛び上がろうとして瞬間に、真上からアーマーメカのごつい手で押しつぶされてしまった。
「はっはっはぁーっ!」とブラックナイト二号が笑う。「スペシャルマン、変身中は隙だらけだぞ! そんな事にも気付かず、毎度毎度変身ポーズを見せつけるとは、愚か者としか言いようがないな!」
 確かに、変身中は隙だらけだ。正々堂々としたつもりだったが、全くの逆効果だったようだ。迂闊だった。下手に変身を見せるんじゃなかった。それにしても、誰もその点を注意してくれなかったのはどう言うわけだ! ひどい話だ! こんなんじゃ、オレが悪のヒーローになってしまうかもしれない。




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