オレは「スペシャルマン」と呼ばれる正義のヒーローだ。常人の及ばない様々な特殊能力を秘めている。この力で悪を倒し続けているのだ。
さて、ヒーローの条件の一つとして認識されているものに、ヒーローたるもの一人で戦うと言う事がある。
正義のヒーローは悪を倒してなんぼの世界だ。キャーキャー黄色い声援を受けるために存在しているわけじゃない! それなのに、イケメン(オレにはその基準がまったく分からない!)ヒーローだの、群れを成して戦う軟弱ヒーローだのが多い。多すぎる! 変身して顔をプロテクターなどで保護しちまえばどんな面だって見えやしないじゃないか! 馬鹿か! それに、どうして敵が一人しかいないのに群れて戦うんだ? それは集団いじめと変わらない! 正義のヒーローがそんな雰囲気を作ってどうするんだ! それとも、相手が強すぎて一人じゃ立ち向かえないからか? だったら自分を鍛えれば良いだろうが。奴らに正義のヒーローの自覚があるとは思えない!
さらに、仲間がいると、そいつらの事も気にかけねばならない。戦闘中に倒れでもしたらコワガラナクテモイイと言い、普段何か悩んだり仲間内でもめたりしたらツマラナイカラヤメロと言い、・・・とてもじゃないが落ち着いて集中して正義のヒーローなんてやっていられない!
いいか! たった一人で、巨大な悪と戦うって言う所に、正義のロマンが赤々と燃え上がるんじゃないか!
それに、世の中を見てみろって言うんだ。どんな些細な事でも、全ては自分自身が判断し、実行しているんだ。流れの任せているって言うヤツも、突き詰めれば、そう言う判断を自分でしたって事だろう。集団の意見だって、誰かの発言に自分自身で同意したって事じゃないか。
そう、最後の頼れるのは自分自身。それをしっかりするために、日々心身を鍛えなければならないんだ。イケメンヒーローだの集団ヒーローだのなんぞ、クソくらえだ!
ある日曜日、政府の要人から呼び出しを受けた。オレは翔子とのデートをすっぽかして赴いた。
「スペシャルマン、今日は提案があるのだが・・・」
「なんでしょう?」
「ブラックシャドウと言う組織、どの位の規模だか把握しているかね?」
「いいえ」オレは気楽な口調で答えた。「ですが、ボスがいて部下がいてって言う組織なのは分かっています」
「いいか、スペシャルマン・・・」要人の表情が強張った。「ブラックシャドウは全地球的な規模の組織なのだ。さらに、某国の調査機関によれば、首領は異星人だと言う事だ」
「そうですか。それは益々倒し甲斐があるってもんです!」
「その意気込みは買おう、スペシャルマン。しかし、だ」要人はオレに詰め寄る。「世界のあちこちで同時に暴れだしたとしたら、手に負えるかね? 首領と決戦になったとしても、異星人相手に地球育ちの君が本当に太刀打ちできるのかね?」
「心配ありません。正義は最後には必ず勝つのです!」
「君の考えは分かったが、やはり一抹の不安は拭えない」要人はオレの熱い思いをサラリとかわした。「そこで、我々も各国と連携しブラックシャドウに対抗する組織を作る事にした。名付けて『国際スペシャルレンジャー隊』だ!」
オレは絶句した。名前のヒドさもさる事ながら、一番イヤな事態になったからだ。
「オレは組織はイヤです。重荷です。面倒を見切れません。それに、国際的組織ならば英語が共通語でしょう? オレ、話せませんし・・・」
「何を言っているのだ、スペシャルマン?」要人は不思議そうな顔をオレに向ける。「この組織の指揮権は国連だ。君は組織の一員として、今までどおり活躍してもらいたい」
「ですが、国際的組織ならば、海外にも戦いに行かなくては・・・」
「そんな心配はしなくてもいい。海外にも正義のヒーローはいるよ。きちんと組織立っていたり、いわゆるカッコイイ連中がね。彼らはこの提案を快く受け入れてくれたよ」
「そうですか・・・」
「そう。君はここ日本だけを守ってくれれば、それで良いんだよ。今までのようにね」
「・・・わかりました」
オレは力なく答えた。迂闊だった。世の中は組織の時代だったんだ。ヒーローも、単にその中の一人に過ぎないんだ。何も考えず、言われた通りにしていれば良いんだ。任務を果たせばそれで良いんだ。
良いわけねえだろうが! オレのプライドは? 俺の正義のヒーローとしてのアイデンティティは? はっきり言おう! 一人だと目立つんだよ! カッコイイんだよ! それが無くなっちまうなんて! こんなんじゃ、オレが悪のヒーローになってしまうかもしれない。
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さて、ヒーローの条件の一つとして認識されているものに、ヒーローたるもの一人で戦うと言う事がある。
正義のヒーローは悪を倒してなんぼの世界だ。キャーキャー黄色い声援を受けるために存在しているわけじゃない! それなのに、イケメン(オレにはその基準がまったく分からない!)ヒーローだの、群れを成して戦う軟弱ヒーローだのが多い。多すぎる! 変身して顔をプロテクターなどで保護しちまえばどんな面だって見えやしないじゃないか! 馬鹿か! それに、どうして敵が一人しかいないのに群れて戦うんだ? それは集団いじめと変わらない! 正義のヒーローがそんな雰囲気を作ってどうするんだ! それとも、相手が強すぎて一人じゃ立ち向かえないからか? だったら自分を鍛えれば良いだろうが。奴らに正義のヒーローの自覚があるとは思えない!
さらに、仲間がいると、そいつらの事も気にかけねばならない。戦闘中に倒れでもしたらコワガラナクテモイイと言い、普段何か悩んだり仲間内でもめたりしたらツマラナイカラヤメロと言い、・・・とてもじゃないが落ち着いて集中して正義のヒーローなんてやっていられない!
いいか! たった一人で、巨大な悪と戦うって言う所に、正義のロマンが赤々と燃え上がるんじゃないか!
それに、世の中を見てみろって言うんだ。どんな些細な事でも、全ては自分自身が判断し、実行しているんだ。流れの任せているって言うヤツも、突き詰めれば、そう言う判断を自分でしたって事だろう。集団の意見だって、誰かの発言に自分自身で同意したって事じゃないか。
そう、最後の頼れるのは自分自身。それをしっかりするために、日々心身を鍛えなければならないんだ。イケメンヒーローだの集団ヒーローだのなんぞ、クソくらえだ!
ある日曜日、政府の要人から呼び出しを受けた。オレは翔子とのデートをすっぽかして赴いた。
「スペシャルマン、今日は提案があるのだが・・・」
「なんでしょう?」
「ブラックシャドウと言う組織、どの位の規模だか把握しているかね?」
「いいえ」オレは気楽な口調で答えた。「ですが、ボスがいて部下がいてって言う組織なのは分かっています」
「いいか、スペシャルマン・・・」要人の表情が強張った。「ブラックシャドウは全地球的な規模の組織なのだ。さらに、某国の調査機関によれば、首領は異星人だと言う事だ」
「そうですか。それは益々倒し甲斐があるってもんです!」
「その意気込みは買おう、スペシャルマン。しかし、だ」要人はオレに詰め寄る。「世界のあちこちで同時に暴れだしたとしたら、手に負えるかね? 首領と決戦になったとしても、異星人相手に地球育ちの君が本当に太刀打ちできるのかね?」
「心配ありません。正義は最後には必ず勝つのです!」
「君の考えは分かったが、やはり一抹の不安は拭えない」要人はオレの熱い思いをサラリとかわした。「そこで、我々も各国と連携しブラックシャドウに対抗する組織を作る事にした。名付けて『国際スペシャルレンジャー隊』だ!」
オレは絶句した。名前のヒドさもさる事ながら、一番イヤな事態になったからだ。
「オレは組織はイヤです。重荷です。面倒を見切れません。それに、国際的組織ならば英語が共通語でしょう? オレ、話せませんし・・・」
「何を言っているのだ、スペシャルマン?」要人は不思議そうな顔をオレに向ける。「この組織の指揮権は国連だ。君は組織の一員として、今までどおり活躍してもらいたい」
「ですが、国際的組織ならば、海外にも戦いに行かなくては・・・」
「そんな心配はしなくてもいい。海外にも正義のヒーローはいるよ。きちんと組織立っていたり、いわゆるカッコイイ連中がね。彼らはこの提案を快く受け入れてくれたよ」
「そうですか・・・」
「そう。君はここ日本だけを守ってくれれば、それで良いんだよ。今までのようにね」
「・・・わかりました」
オレは力なく答えた。迂闊だった。世の中は組織の時代だったんだ。ヒーローも、単にその中の一人に過ぎないんだ。何も考えず、言われた通りにしていれば良いんだ。任務を果たせばそれで良いんだ。
良いわけねえだろうが! オレのプライドは? 俺の正義のヒーローとしてのアイデンティティは? はっきり言おう! 一人だと目立つんだよ! カッコイイんだよ! それが無くなっちまうなんて! こんなんじゃ、オレが悪のヒーローになってしまうかもしれない。
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