お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

シュタークスミス博士の大発明 12 ―車道でも博士が通ればこわくない―

2008年03月17日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで交通事故はなくなるぞ」
 博士の発明したものは、自分の周りに小さなバリアを張り巡らせる装置で、このバリアは自動車が当たっても、スポンジに軽くぶつかる程度の衝撃しか与えない。もちろん、自分は平気だし、車も運転手も傷つかない。
「人にも車にも優しい装置だ。さっそく試してみよう」
 博士は外に出て装置を作動させた。それから、わざと赤信号で横断歩道を渡り始め、中央あたりで立ち止まり、車の方へからだを向けた。走ってきた車は軽く突き飛ばされたように後退して停まった。
「うまくいったぞ! 人も車も傷一つ付かないぞ!」
 博士は満足げにうなずいた。が、次の瞬間、表情がこわばった。
 停まった車に、後続の車が追突してきたのだ。追突された車は博士の方へ押され、博士の発生させたバリアにぶつかり後退した。後退した車は追突してきた車にぶつかり、共に後退し、さらに後続の車が追突した。追突された二台は博士の方に押され、博士の発生させたバリアに再びぶつかり後退した。さらに後続の車がそれに追突し、博士の方に押し出され、バリアでまた後退し、後続の車が追突した。これが何度も繰り返されて、博士の前に何台も連なってしまった。
「車は何台もあったんだ・・・」
 呆然とした顔で博士はつぶやいた。
 自分の周りだけ良くしても、決して解決にはならないものなのだ。

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