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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第三章 窓の手形の怪 1

2021年12月17日 | 霊感少女 さとみ 2 第三章 窓の手形の怪
「先生、それって、どう言う?」しのぶがずいっと前に出る。「そこの所、詳しく!」
 ……うわっ、しのぶちゃんの心霊モード! さとみはうんざりする。昨夜の疲れが一気に出始めたさとみは、早く帰ってベッドに転がりたかった。しかし、しのぶはきらきらした瞳を井村先生に向け、帰ろうとしない。
「詳しくって言われても、わたしも今日聞いたのよ」井村先生が言う。「用務員の高島さんがね、話してくれたのよ。骸骨がグラウンドで壊されていたじゃない? わたしは生物の担当だからって事で、後片付けをするように教頭から言われたわけ。その時に高島さんが手伝ってくれたのよ」
「先生、ちょっと待ってください!」さとみが割り込む。「警察とか来ないんですか? これだけの事件なのに?」
「学校ってね、面倒を避けたいものなのよ」井村先生はため息をつく。「一通り点検し回って、骸骨標本以外に実害が無かったの。もう一度購入すれば良い事だし、騒ぐ必要はないって事になったわけ。わたしは、窓が開いていたのに、警備会社に通報が行っていなかったんじゃないかって言ったんだけど、後で警備会社に確認しておくって事でおしまいになったわ」
「そんな事で良いんですか?」
「他の先生方もそれで良いって事になったわけ。ま、多数決の論理よね。良くないって文句を言ったのは、わたしと松原先生くらいかな? 普段は少数の意見を聞いて取りこぼしの無いように、なんて言っているんだけさ。当てはまるのは生徒に関してだけのようね」
「そうなんですか……」
「特に今の校長も教頭も、問題を起こしたがらないわね。出来るなら内々で解決したいって性格ね」
 これだけずけずけと言う先生は初めてなさとみだった。さとみは何故が井村先生に好感を持ち、授業を受けてみたいと思った。
「でも、先生、気になる事があります」しのぶが言う。心霊モードが影を潜めている。「窓は開いていたとして、出入りのドアはどうだったんですか?」
「グラウンドに壊れた骸骨標本がある、理科室の窓が開いている、そこから持ち出されたんだって言う流れになったわね」井村先生は頭をがりがりと掻き回し始めた。「そう言えば、理科室の鍵を開けて入ったわね…… 鍵は壊されていなかった。と言う事は、誰かが理科室の鍵を使って開錠して施錠したって事よね? 理科室の鍵は準備室の壁にぶら下がっているけど、準備室を最後に出たわたしが室内を確認して準備室を施錠した…… 準備室の鍵は事務室のキーボックスの中にしまったし、朝一で出て来たわたしが準備室を開けた。え? じゃあ、わたしが犯人? そんな馬鹿な!」
 混乱した井村先生は両手を頭に突っ込んで、両手でがりがりと掻き回し始め、「……ひょっとして」とか「いや、きっとこうやって……」とかつぶやき続けた。
「会長……」しのぶが井村先生を見ながら言う。「真相を話した方が良いんじゃないですか? このままだと、井村先生今日一日悩みそうです」
「悩みの種を植えたのはしのぶちゃんよ」
「いえ、わたしがそう言えば、井村先生は霊の仕業だって思ってくれるって確信したんですけど……」
「井村先生は現実主義者のようね」さとみはため息をつく。「まあ、今日の所は帰りましょう。北階段に骸骨と続いて、さすがに疲れが出ちゃったわ」
「でも、三階の窓の手形は?」
「実害が出たって話が無いから、明日以降にしましょう」
「会長、なんだか学校の言い分に似ていますね」しのぶは真剣な顔で言う。「それとも、一歳違うと、おばさん化が激しくなって、疲れるんでしょうか?」
「もうっ!」
 さとみはぷっと頬を膨らませながら、しのぶを促し、あれこれと悩んで、ぶつぶつつぶやいている井村先生を置いて理科室を出た。


つづく


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