「おい、お前はいつもそのままでシャワーを浴びるのか?」
ソファに座っている妖介から皮肉な声が飛んだ。葉子が下着を取らずに浴室へ入ろうとしたからだった。
「そうじゃないわ!」葉子がむっとした顔で振り返る。「そうじゃないけど・・・」
妖介に裸にされシャワーを浴びせられたとは言え、それは自分の意識が無い時の話だ。
「もうお前の裸は隅々まで見ているし、触りもした」妖介は興味のなさそうな声を出す。「今さら恥ずかしがってどうするんだ」
「じゃあ、そんなにじろじろ見ないでよう!」葉子は思い切って言った。無遠慮なまでに葉子を見据えている妖介の視線が痛かった。「どうせ大した魅力も無い詰まらない身体だったんでしょう!」
「いいや、反吐と小便臭い身体だった」妖介が笑った。鋭い犬歯が垣間見えた。「今は妖魔臭くなっている」
葉子の脳裏に先ほどの恐怖がよみがえった。・・・そうだ、わたしは妖魔に殺されかけたんだ。いつまた襲われるか、分からないんだ・・・ 自分でも分かるくらいに血の気が引いた。浴室の前に座り込む。助けを求めるように妖介に視線を送る。
「心配するな」妖介は立ち上がり、葉子の方へ歩み寄る。座り込んだ洋子と視線を合わせる。「オレが居てやる」
・・・この人が居てくれるんなら、安心だわ。妖介が手を指し伸ばした。葉子はためらわずにその手を握り、視線を合わせたまま、ゆるゆると立ち上がった。
「・・・それに」妖介はすっと手を放した。「早く出かけたい」
「・・・」葉子の胸に湧き上がりかけた甘い感情もすっと消えた。無理な笑顔を作った。「そうね、待たせちゃ悪いわね・・・」
温度調節をし、浴室に入り、擦りガラスのはめ込まれたドアを閉める。
擦りガラス越しに見える妖介の姿が居間の方へ向かって行った。
蛇口をひねり、打ちつけるシャワーの温度が上がるの手の甲で計る。ちょっと熱めの葉子の好みの温度になった。シャワーの本体を持ち、頭から浴びた。シャワーのコードが大きく揺れた。
・・・どうしてこんな事になっちゃったのかしら。夢を見ているみたいだわ・・・
葉子は、顔に、胸に、背に、腹に、脚にと順にシャワーをかける。熱い湯が現実だと洋子に告げる。
・・・あの人もわたしを共に戦う仲間としか見ていないみたいだし・・・
シャワー本体を壁の高い位置のフックに掛ける。空いた手で下着を脱ぎ始める。
ホックレスのブラジャーを服を脱ぐようにして取った。濡れそぼったただの黒い布だった。浴槽へ投げ入れる。
Tバックのパンティの腰の細い部分に両親指を挟んで膝まで下げ、脚を抜き取るようにして脱ぐ。葉子は片手にすっぽりと収まった、その小さく縮んだ黒い布を見た。
・・・幸久との馬鹿な思い出はこれで終わりだな・・・
葉子の耳に妖介の皮肉な声が聞こえるようだった。葉子は浴槽に投げ入れたブラジャーの上にそれを放った。何故か涙が溢れた。
降り注ぐ雨のようなシャワーに向かい顔を上げた。熱い湯が葉子の涙を流し去った。
・・・もう、後戻りは出来ないんだわ。そうよ、怖がっていても仕方が無いんだわ!
葉子はシャンプーのボトルに手を伸ばした。
つづく
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「そうじゃないわ!」葉子がむっとした顔で振り返る。「そうじゃないけど・・・」
妖介に裸にされシャワーを浴びせられたとは言え、それは自分の意識が無い時の話だ。
「もうお前の裸は隅々まで見ているし、触りもした」妖介は興味のなさそうな声を出す。「今さら恥ずかしがってどうするんだ」
「じゃあ、そんなにじろじろ見ないでよう!」葉子は思い切って言った。無遠慮なまでに葉子を見据えている妖介の視線が痛かった。「どうせ大した魅力も無い詰まらない身体だったんでしょう!」
「いいや、反吐と小便臭い身体だった」妖介が笑った。鋭い犬歯が垣間見えた。「今は妖魔臭くなっている」
葉子の脳裏に先ほどの恐怖がよみがえった。・・・そうだ、わたしは妖魔に殺されかけたんだ。いつまた襲われるか、分からないんだ・・・ 自分でも分かるくらいに血の気が引いた。浴室の前に座り込む。助けを求めるように妖介に視線を送る。
「心配するな」妖介は立ち上がり、葉子の方へ歩み寄る。座り込んだ洋子と視線を合わせる。「オレが居てやる」
・・・この人が居てくれるんなら、安心だわ。妖介が手を指し伸ばした。葉子はためらわずにその手を握り、視線を合わせたまま、ゆるゆると立ち上がった。
「・・・それに」妖介はすっと手を放した。「早く出かけたい」
「・・・」葉子の胸に湧き上がりかけた甘い感情もすっと消えた。無理な笑顔を作った。「そうね、待たせちゃ悪いわね・・・」
温度調節をし、浴室に入り、擦りガラスのはめ込まれたドアを閉める。
擦りガラス越しに見える妖介の姿が居間の方へ向かって行った。
蛇口をひねり、打ちつけるシャワーの温度が上がるの手の甲で計る。ちょっと熱めの葉子の好みの温度になった。シャワーの本体を持ち、頭から浴びた。シャワーのコードが大きく揺れた。
・・・どうしてこんな事になっちゃったのかしら。夢を見ているみたいだわ・・・
葉子は、顔に、胸に、背に、腹に、脚にと順にシャワーをかける。熱い湯が現実だと洋子に告げる。
・・・あの人もわたしを共に戦う仲間としか見ていないみたいだし・・・
シャワー本体を壁の高い位置のフックに掛ける。空いた手で下着を脱ぎ始める。
ホックレスのブラジャーを服を脱ぐようにして取った。濡れそぼったただの黒い布だった。浴槽へ投げ入れる。
Tバックのパンティの腰の細い部分に両親指を挟んで膝まで下げ、脚を抜き取るようにして脱ぐ。葉子は片手にすっぽりと収まった、その小さく縮んだ黒い布を見た。
・・・幸久との馬鹿な思い出はこれで終わりだな・・・
葉子の耳に妖介の皮肉な声が聞こえるようだった。葉子は浴槽に投げ入れたブラジャーの上にそれを放った。何故か涙が溢れた。
降り注ぐ雨のようなシャワーに向かい顔を上げた。熱い湯が葉子の涙を流し去った。
・・・もう、後戻りは出来ないんだわ。そうよ、怖がっていても仕方が無いんだわ!
葉子はシャンプーのボトルに手を伸ばした。
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