お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

シュタークスミス博士の大発明 18 ―天然照明―

2008年07月12日 | シュタークスミス博士(一話完結連載中)
「大発明だ!」シュタークスミス博士は叫んだ。「これで環境問題解決に一歩踏み込めたぞ!」
 博士の発明したものは淡いクリーム色をした壁紙だった。それに博士が苦労して改良を重ねた発光バクテリアを吹き付けてある。
 このバクテリアは、昼間は太陽の光を吸収し、日が沈んでから吸収した光を発する。いわば天然の照明だ。しかも、生物には全く無害ときている。
「これで照明器具は過去のものとなった! 一般家庭全てがこれを使えば、相当量の電気が節約できるのだ!」
 博士は笑いながら、実験室へと入って行った。実験室の壁と天井と床にバクテリアの壁紙を張ってある。ドアを開けると、昼間のような明るさが漏れて来た。
「よしよし、思った通りだぞ」博士は一人うなずいた。「これだけ明るければ申し分は無いだろう」
 翌日は曇りだった。夜の実験室の光は少し弱かった。
「うーむ、曇りだとあんまり活発にはなれないのか、光は十分には吸収できないようだ。今後の課題だな・・・」
 その翌日からは晴天が続いた。
 博士は毎日、一日中実験室のこもり、昼は太陽の光、夜はバクテリアの光の中で研究を続けた。
「なんだ、これは!」
 ある日の夜、用があって外へ出た時、博士は自分を見て叫んだ。
 博士の体が昼間のような明るさを発していたのだ。
「そうか! 晴天の続き過ぎでバクテリアが大繁殖して、壁紙からあふれ出て、実験室の中を舞っていたんだ。人体に影響が無いので全く気が付かなかったが、この体にびっしりと・・・」
 環境問題解決の道のりは遠そうだ。


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