お話

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大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  拾伍

2008年10月25日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
 日本から飛び立ったモヘラが向かった先は、廃墟となったロンドンだった。瓦礫の上に降り立ったモヘラは、羽根を広げたまま動かなかった。
 人々は、ロンドンに現れたモヘラは、オチラを倒した英雄、オットールコーウェン大佐へ礼を言いに来たのではないかと、噂しあっていた。実際モヘラはなんら破壊活動をする事も無く、ただ大人しく瓦礫の上にいるだけだった。たまに羽根を小刻みに震わせて鱗粉を撒き散らすが、分析の結果は「マナ」と同じ成分で、付着した場所は雑菌が減っていた。
 また、モヘラは外見に凶暴性が感じられず、大きな複眼とゆっくりと円を描くように動く触覚などは、むしろ愛嬌あるものに感じられた。玩具メーカーが可愛らしさを強調したモヘラのぬいぐるみを売り出したところ、爆発的に売れた。他の玩具メーカーのも追随し、様々なタイプのモヘラが売り出された。
 日本から各国の研究機関に供与された「マナ」の分析も進んだ。その成分には、地球上には存在しない物質が含まれていたため、合成する事は不可能だった。しかし、フランスの生物学者ピエール・サトラシューを中心としたチームが、培養し増殖させるシステムを完成したと発表した。しかも、このシステムは比較的簡易な設備で実行する事が可能なものだった。
 フランス大統領のサンダルージは「このシステムは汚れた地球を救うものとなる。どこかの大国ならば一国独占を主張するだろうが、我が国はそんな下品な事は考えない」と挑発的なコメントを発表し、望む国には進んでシステムの情報開示を行った。そのため、世界各地に設備の建設が進んだ。
 モヘラは動く事なくロンドンの廃墟の上に留まっていた。
 人々の口にいつしか広がり始めた事があった。
 ――モヘラは何を食べているのだろう――


次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 拾六」を待て。



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