当時、ぼくの住んでいた地区には貧乏人が多かった。そのため、みんな夏休みだからと言って、どこかに遊びに連れて行ってもらうことはなかった。
とはいえ、たまには「おれ、明日から3日間いなかに帰るけ」などという奴もいた。それを聞いた誰もが「えっ、いなかに帰るんか!?」と驚きと羨望の入り混じった声を上げた。
「いなかはどこなんか?」
「○○」
「そうか、○○か。いいのう」
とは言ったものの、その○○がどこにあるのか誰も知らなかった。
みんなの連想では、「○○→いなか→空気がいい→水がきれい→スイカがなっている→昆虫の宝庫→カブトムシやクワガタがいる」だった。そのため、工場街に隣接する地域に住んでいるぼくたちにとって、○○は憧れの場所となった。
ところが、後年、その場所を知って愕然とした。そこは、うちから車で15分とかかからない場所で、ちゃんと工場もあり、そこそこ空気も汚れていたのだ。川はあるものの、川幅も狭く、水も汚かった。
しかし、『いなか』という響きはよかった。
ある日、母に「ねえ、うちのいなかはどこなん?」と聞いてみた。母は大阪で育っているので、もしかしたらその辺に『いなか』なるものが残っているのではないかと思ったわけである。母は「いなかなんかないよ」と素っ気なく答えた。その時の寂しかったことといったらなかった。
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