初夏の里山は鮮やかな緑で覆われている。
草むらの道ばたには
ピンと立った茎にらせん状に幾つもの花が並んでいる野草を
この時期よく見かける。
関東も梅雨入りしましたが里山歩きの日は雨降らずのお天気でした。
淡いピンク色の小さな花。
図鑑で調べると「捩花(ネジバナ)」、ラン科の花と載っている。
万葉の時代には「根都古草(ねつこぐさ)」と呼ばれていたらしい。
芝付の御宇良崎なる根都古草 逢ひ見ずあらば吾恋ひめやも
しばつきのみうらさきなるねつこぐさ あひみずあらばあれこいひめやも
三浦半島の芝付に咲くねつこ草のような可愛い貴女に逢うことがなかったら
どうしてこんなに恋い悩むことがあったろうか。(巻十四 3508/よみびと知らず)
ねつこ草が翁草であるという説もあります。
翁草はかつては日当たりのよい草地で
普通に見られる植物だったらしいので
その可能性がありますが
小さくて可憐な捩花とする説に一票です。
今は神奈川県では絶滅危惧種IA類に指定されているそうです。
《翁草》
西洋では捩花を Ladys tresses と呼ぶのだそうです。
”レディの巻き毛”とはとてもお洒落だと思います。
横から見て片仮名の「ミ」に見える巻き方は右巻き。
左巻き、右巻き、ストレート、カラーもピンクにホワイトと捩花の個性が光ります。
花言葉は「思慕」
思慕とは離れている人をどうしようもなく慕わしくて切ないほどに心ひかれること。
万葉の世に、既に、この花言葉があって
この花言葉に託して根都古草の恋歌を詠んだ人の切ない気持ちが
恋人に届き
万葉集の選者の心を響かせたに違いありません。
きっと・・・