=校長に会った=
先週の金曜日青森南高校の先生と一緒に
本校の校長に会った。
相当に構えて会いに行った。
なにしろ、ここを突破しなければ、少なく
とも校舎内での公演はできない。
話は高校の先生から切り出した。
この10年撮りためた写真を展示して、
思い出を振り返るのだ。最後の授業まで
あと2ヶ月あまり。この間も写真を撮り
続けたい。そしてそれを取材するマスコミ
も校舎に入る。この3点を許可してほしい
そんな感じのお願いであった。
「願ってもないことです。子供たちも地域
の方々もとても喜ぶでしょう。」
校長は、あたかも自分が地域の方々の代表
のように感謝の言葉を丁寧に語った。
それは思ったよりあっさりと認められた。
そして今度は踊りの番だ。
私の手は汗ばんでいた。写真はモノを言わな
い。廊下に展示するくらいなら、願ってもな
いことだ。だが、踊りとなると話は別だ。
だいいち、大事な閉校式のセレモニーの時に、
踊りだかなんだか訳のわからないもので、集ま
った人たちにヒンシュクを買ったりすれば、
許可した校長のコケンにかかわる・・。
といったようなことを校長は考えているかもし
れない・・。
私は、口早に10年前にこの分校で踊ったこと、
当時県内にあったすべての分校で踊ったこと、
消え行く青森県最後の分校の児童と地域の人た
ちにぜひとも見てもらいたいこと、そして、
今年から、これまでに巡演した場所を訪ねて
もう一度踊りを踊ることにしたことなど、その
場で思いついたことを次々に話した。
校長の大きく分厚いメガネの奥の目蓋がかすかに
緩んだような気がした。
「先生の踊りで分校の最後を有終の美で飾れる
ことはとてもありがたいことだと思います。」
最初は耳を疑った。が、校長が話した言葉は、
間違いなくそんな意味合いのことであった。
話はとんとんと進み、3月11日午前中に分校の
講堂で閉校式のセレモニーを行い、それから学校
の下にある集会所で思い出を語る会を開催する
予定だが、その間にやってもらうのはどうか。
セレモニーのために紅白の幕があるが、それは
邪魔にならないか。時間はどれくらいか。前回は
夕方の公演で、雪の深い校庭に出て踊ったよう
だが、昼の公演だと幻想的な雰囲気が出ないのでは
ないか、などと校長から矢継ぎ早に質問があり、
私はいつものように、何も考えずに問題は何もあり
ませんと即座に回答した。
「これまで様々な場所で五百回以上やってきましたの
ですから、まったくノープロブレムです。」
校長の言質さえとれれば、あとは何とでもなる。
これまで、どんな劣悪な条件でも公演してきたのだから。
深々と頭を下げ、高校の先生と私は本校をあとにし、
その足で入内の町会長の家に向かった。(つづく)
写真は、97年1月。公演開始前に入内分校の
正門から集落の方へ門付けに出る道路劇場。
先週の金曜日青森南高校の先生と一緒に
本校の校長に会った。
相当に構えて会いに行った。
なにしろ、ここを突破しなければ、少なく
とも校舎内での公演はできない。
話は高校の先生から切り出した。
この10年撮りためた写真を展示して、
思い出を振り返るのだ。最後の授業まで
あと2ヶ月あまり。この間も写真を撮り
続けたい。そしてそれを取材するマスコミ
も校舎に入る。この3点を許可してほしい
そんな感じのお願いであった。
「願ってもないことです。子供たちも地域
の方々もとても喜ぶでしょう。」
校長は、あたかも自分が地域の方々の代表
のように感謝の言葉を丁寧に語った。
それは思ったよりあっさりと認められた。
そして今度は踊りの番だ。
私の手は汗ばんでいた。写真はモノを言わな
い。廊下に展示するくらいなら、願ってもな
いことだ。だが、踊りとなると話は別だ。
だいいち、大事な閉校式のセレモニーの時に、
踊りだかなんだか訳のわからないもので、集ま
った人たちにヒンシュクを買ったりすれば、
許可した校長のコケンにかかわる・・。
といったようなことを校長は考えているかもし
れない・・。
私は、口早に10年前にこの分校で踊ったこと、
当時県内にあったすべての分校で踊ったこと、
消え行く青森県最後の分校の児童と地域の人た
ちにぜひとも見てもらいたいこと、そして、
今年から、これまでに巡演した場所を訪ねて
もう一度踊りを踊ることにしたことなど、その
場で思いついたことを次々に話した。
校長の大きく分厚いメガネの奥の目蓋がかすかに
緩んだような気がした。
「先生の踊りで分校の最後を有終の美で飾れる
ことはとてもありがたいことだと思います。」
最初は耳を疑った。が、校長が話した言葉は、
間違いなくそんな意味合いのことであった。
話はとんとんと進み、3月11日午前中に分校の
講堂で閉校式のセレモニーを行い、それから学校
の下にある集会所で思い出を語る会を開催する
予定だが、その間にやってもらうのはどうか。
セレモニーのために紅白の幕があるが、それは
邪魔にならないか。時間はどれくらいか。前回は
夕方の公演で、雪の深い校庭に出て踊ったよう
だが、昼の公演だと幻想的な雰囲気が出ないのでは
ないか、などと校長から矢継ぎ早に質問があり、
私はいつものように、何も考えずに問題は何もあり
ませんと即座に回答した。
「これまで様々な場所で五百回以上やってきましたの
ですから、まったくノープロブレムです。」
校長の言質さえとれれば、あとは何とでもなる。
これまで、どんな劣悪な条件でも公演してきたのだから。
深々と頭を下げ、高校の先生と私は本校をあとにし、
その足で入内の町会長の家に向かった。(つづく)
写真は、97年1月。公演開始前に入内分校の
正門から集落の方へ門付けに出る道路劇場。