その山に水撒きし夜は燦らめける氷の森の顕われるらし
しろいもの 雪・羽・ミルク・雲・ひかり・百合と梔子・アイスクリーム
（森 水晶）
写真：糸田ともよたといあなたがたの罪は緋のようであっても、雪のように白くなるのだ。紅（くれない）のように赤くても、羊のようになるのだ。
（「イザヤ書」）
蟇蛙ねむれる土にやわらかく降り積むものは百合色の雪
水村をさまよひ行きし少年時いままなうらにポプラのそよぐ
（大野誠夫「川狩」）
空と沼と。
十日の月は二つ浮び。
そのセロファンの水底の。
もやもやの藻も透えてみえる。
ふとそよ風がどこかで沸けば。
水（み）のもの月はちりめんにゆれ。
（草野心平「月夜」）
ゆらめける魚の影のうつりたり朝のスープの皿にたまゆら
（森 水晶）
うつくしき硝子の魚穢れなき至純のひかりわが生涯の
（森 水晶）
釣りあげし銀の魚をことごとく放ちて部屋を沼となしたり
（森 水晶）
あなたの ゆびのなぐさみのために、
この 月の沼によどむやうな わたしのほのじろい頸（くび）をしめくくってください
（大手拓次『藍色の蟇』「頸をくくられる者の歓び」）
雪の夜カンテラもって立っていた遠いあなたを照らしていたの
（森 水晶）
写真：糸田ともよ幾千枚の白紙が飛ぶ、雪の羽が降る、ひらひらと舞ふ白き鳥、鳥、鳥、天から降りたか、波から生まれたか、海上一面に舞ふ。
（河井酔茗「鳥柱」）
お兄様、お兄様、曇った日でも夜になれば一緒ね。
（安西冬衛『軍艦茉莉』「菊」）
私は蝶をピンで壁に留めましたーーもう動けない。幸福もこのやうに。
（安西冬衛『軍艦茉莉』「再び誕生日」）
俺にとってはほかのすべては砂粒さ 音楽と君だけが宇宙
（森 水晶）
