春の魚、ウミタナゴ。塩焼きが美味だが、この魚を捌くときは気をつけて・・・(詳しくは本文参照)。
私を含め、多くの釣り人は釣った魚を自分で料理している。
別に料理が好きだからとか、奥さんが魚料理が出来ないからとかいうわけではない。
初めのうちは奥さんも、「あら大漁ね」といって機嫌よく料理してくれるのだが、それが毎週のように続くとそのうち嫌になる。
遠からず、「今後、釣った魚は自分で料理すること(後片付け、生ゴミの処理を含む)。それが嫌なら持ち帰らないこと。」と言い渡されることになるのだ。
間違いない。
ここで釣り人は重大な選択を迫られる。
ブラックバスなどのキャッチ・アンド・リリース系の釣りに専念するか、それとも自ら包丁を握るかだ。
包丁を握る選択をした者のみが、キャッチ・アンド・イート系の釣りを続けることが出来る。
(ちょっと大げさ(笑))
釣り師の料理は、一時期巷で流行ったいわゆる「男の料理」の類とは違う。
魚を捌くことにかけては皆それなりの腕前になるのだが、必要に迫られて始めたことなので、必要以上に凝ったことはやろうとしない。
放っておくとみんな刺身か塩焼きか鍋物になってしまう(笑)。
わが家の場合も、私が作るものといえば刺身がメインで、せいぜい「なめろう」「塩焼き」「さんが焼き」「汁物」どまり。
今朝まで泳いでいた新鮮な魚なのでそれでも充分美味しいのだが、さらにひと手間かけたいときや、さすがにもう飽きたぞ、というときにはわが家のシェフ(家内)の登板を要請し、三顧の礼をもってお迎えする。
私が台所で魚を捌いていると、いつも子供達が興味深々で覗きに来る。
私も出来るだけ見せてやるようにしている。
学校では教えてくれないが、親がやるのを見ておけば、そのうち自分でも出来るようになる。
私も母親がやっているのを見て覚えた。
しかし、ひとつだけ、捌いているところを家族に(家内にも)見せないようにしている魚がある。
ウミタナゴだ。
この魚は卵胎生で、腹の中で卵が孵化し、幼魚になってから生まれる。
春、浅い藻場へやってきて子供を生むが、この時期に釣れたウミタナゴの腹を開くと、数十匹の愛くるしい幼魚がどどっと出て来る。これはかなり残酷でかわいそうな光景だ。
私も子供の頃に初めて見たときはショックを受けた。せめてこの小さな幼魚だけでも助けてやれなかったのかと。
しばらくの間、親父が獲ってくるウミタナゴを見るのも嫌で、食卓に出てきても食べられなかった。
わが家の場合、家内にも子供達にも免疫が無いので、いまだに見せていない。
案外、平気なのかもしれないが・・・。
わが家の小さな秘密なのである。
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