大学入学の祝いに油絵の具のセットを
いただきました
早速描いたのは 生家の母屋と離れをつなぐ
渡り階段の「下」でした
三角のトンネルになっている渡り階段の下の
構図が面白かったので描いてみたのですが
出来た絵はちっとも面白くない物になりました
大学入学の祝いに油絵の具のセットを
いただきました
早速描いたのは 生家の母屋と離れをつなぐ
渡り階段の「下」でした
三角のトンネルになっている渡り階段の下の
構図が面白かったので描いてみたのですが
出来た絵はちっとも面白くない物になりました
物心着く頃から
野原や林 田畑があれよあれよと宅地に変わり
次から次へと家が建てられていきました
大工さんがいないことを確かめて 私は誰の家とも知らない
近所のまだ壁もない骨組みだけの家の2階に登りました
木の匂いと遠くから大工さんが釘を打つ音
カンカンカン……が聞こえてくるのが好きでした
父の庭の端っこにはハランの繁る一画がありました
ハランはおせちの重箱には欠かせないアイテムでした
ギザギザにカットして ご馳走の仕切りに使うのです
出来るだけ家にある物でまかなう…
貧乏子沢山家庭ならではの工夫と妥協は
おせち料理にも生かされました
私の幼い頃の曖昧な記憶ではありますが
おせちは数の子と栗きんとんと蒲鉾以外は
母の手作りで占められていたと言ってもいいくらい
ホームメイドでした
給食を食べたあとベランダに出て
キクちゃんと電車を見ていました
高台にある校舎の3階からは 電車がガタンゴトン
暢気に走るのがよく見えるのでした
「次に来るのは何両かな?」
「うーん…6両かな」
やがて電車が来ます
「あ、はずれ 4両だ」
「残念…」
のんびりと過ごした午後のベランダの思い出です
ある年の真冬
父と義兄と隣のペンキ職人さんと私 素人4人で
育ち過ぎた庭の松の木を切り倒しました
いよいよ倒れる時の迫力
ミシミシ…バリバリバリ…ズドン!
断末魔にも聴こえる凄みのある松の木の最期でした
後に残ったのは横たわった松の木と切なさでした