銀座平野屋女将日記

銀座平野屋210年のあゆみと老舗女将の嫁日記

粋の総合芸術ーたばこ入れ(その1)ー ✳︎5/9変更あり

2019-05-08 | 日記

銀座平野屋には普段お客様の目にはふれないけれど、素敵なものが数々ございます。

それは江戸からの粋を伝える物であったり、先人の技や美を伝えるものであったり様々です。

その中で銀座平野屋には、先人の技が光る逸品もございます。

 

 

 
 
 
 
『雲龍文金糸縫取り 利休形たばこ入れ』
(上)叺(かます)12.6×7cm
(下)きせる筒19.5×2.5cm
 
 
上のかぶせのついた袋は、
龍と雲を配した図柄(雲龍文:うんりゅうもん)を
金糸(きんし)などで刺繍した「たばこ入れ」です。
(かます)」とも言います。
ここにたばこを吸う為の材料(刻みたばこなど)を入れます。
 
 
✳︎「叺」と「きせる筒」を合わせて「たばこ入れ」と言います。
 叺もきせる以外の、刻みたばこや火打石などの道具を入れるため
「たばこ入れ」ということがあります。
同じ名前からくる混同を避けるため、上の形状の袋を「叺」としました。(5/9変更)
 
 
 
利休形(りきゅうがた)”とは茶人千利休が好んだ嚢物(ふくろもの)の形で、
四角い、単純な形のものです。
 
 
下の細長い筒は、たばこを吸う為の道具である煙管(きせる)を入れる袋です。
きせる筒」と言います。
たばこ入れに合わせた雲の柄。明るい色がいいですねー。
 
 
 
ここからきせるを出し入れします。
 
 
 
 
おもて面。
見事な刺繍です!
金糸の龍や雲の立体感がよくわかります。
 
 
 
 
こちらは裏面。
龍の角や爪、手の躍動感!
刺繍だけで表現できるんですねー。
 
 
 
 
中はこのようになっています。
元々の生地を活かした作りですね。
龍の髭の一部が見られます。
 
かぶせ上部の半円形の爪(こはぜ)を、
かぶせ下にある白の細い紐状の部分(こはぜかけ)に引っ掛ける構造です。
 
 
 
 
こはぜ。
現在のようにスナップボタンなどない時代ならではの工夫ですね。
 
 
 
 
 
今回は、たばこ入れ第一弾として、
利休形」と呼ばれるものをご紹介しました。
利休形のたばこ入れは、使う人の素材(特に布地)へのこだわりが感じられて、
見ていて楽しくなります。
 
 素材も全て違うんですよ!
 
 
 
 
たばこ入れといえば、以前ご紹介した
 
鉈豆型煙管入(なたまめがたきせるいれ)』
 
 
籠と鼈(すっぽん)』
 
『たばこケース』→記事はこちら:
 
などを思い浮かべると思いますが、多岐に富んで奥が深いんです!
 
 
「たばこ入れ」は嗜好品のたばこを、いつでも楽しめるようにと
必要な道具をまとめて持ち歩く道具です。
身近な存在だからこそ、
自分の好みやこだわりを凝りに凝り
とことん追究していった「粋」な装身具です。
 
 
当然、それを作り上げる職人が存在します。
たばこ入れの場合、いくつかのパーツ(詳しくはまた後日)に
分かれていますので
袋物師や金具を作る金工師など、各パーツを作る専門の職人がいます。
そして全てまとめる仕立て師というプロデューサー的な職人もいます。
つまり、一つのたばこ入れを完成させるには、
複数の職人が関わっているのです。
 
一つのたばこ入れから、
形状や素材、意匠に至るまで、持ち手と作り手集団の
愛着や技が強く感じられる
これぞまさに『粋の総合芸術』!
 
 
 
 
まずは銀座平野屋で現在所蔵している「利休形たばこ入れ」から、
もう少しご紹介したいと存じます。
 
 
かねてより予告しておりました、令和最初となりますこのシリーズ。
まだ続きます。(気長にお待ちくださいね)
 
 
 

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