文庫 麦わら帽子

自作小説文庫

緑の指と 魔女の糸  序章

2016-02-18 | 小説


わたしは、2月21日に産まれた。

誕生花は『ネモフィラ』

花言葉は、『成功』『可憐』『あなたを許す』。

ネモフィラ・インシグニスブルー。 一面の蒼い花畑。

約束された、土地に、今わたしはいる。

かつて、大きな牙をむいた大海原も、また、蒼い。

激しく燃えてしまう一族が、わたし達。

でも、わたしは、こうして、大人になった。

夢を追って、ここに来た。

花畑。

黒い影が、近づいてくる。

母かと一瞬思った。

母がいるはずはないのに。

私は駆け出した。

待っていた、彼だった。

わたし達は、笑って抱擁する。

「長い間、待たせたね」

「おかえりなさい。こんなに痩せて、ちゃんと食べてるの?」

「もう、心配ない。もう、離れない」

彼の、柔らかい髪と、薄い色素の眸と、温かな体温を感じ、

「生きてくれたこと」を、喜ばずにはいられない。

さあ、はじめよう。もう一度、この手で、作っていこう。

蒼い花畑での約束。

何処かで、母が笑ったような気がした。











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