「次は決めた。これ以上ここに残る必要が何処にある?」
「しかし規定が......」
「退職の意思を示してから既にひと月以上経つ。法律的には構う必要などない」
「右に同じく」
「顧客に迷惑はかけられん」
「どの道期限が来たら消えることは同じなのだ。それが今かひと月後かの違いである」
即時離脱反対派の声は最早弱々しくなっていた。先日の過労による体力低下は嫌でも自身の死をさえ意識させ、メンタルにも重大なダメージを与えたのは事実であり、長年議論されてきた辞める辞めない問題の会議はここに雌雄を決した。
あまりにも長く辛く大きな葛藤であったことは間違いが無い。しかしながら今回全会一致にて即時離脱を可決した。
こんな会社である。これまで飛んできた人は数多くいた。
その中で運悪く捕まってしまった数少ない現職員こそ、元上司である。
彼曰く、辞めるならば弁護士がやっている退職代行が良いとのこと。値は張るが民間業者ではカバーし切れない法律上のノウハウを所有しているのだから仕方がない。
それを教えてくれた上司は辞めないのかと思うが、彼も様々な人を見てきているから簡単には決断できないのかも知れぬ。
しかし今は私の問題だ。辞めるか続けるか。
今再度問われても私は辞めるに全ベットだ。悪いがこれ以上身体的にも精神的にも追い詰めることは看過されない。
もう、疲れた。次のステップを踏む為にもここは最終手段を用いようと考えている次第である。