ふわりと翅を広げた瞬間を捉えたくてレンズを向けて待つのですが
シャッターを切るタイミングが遅いらしく、
たいてい、蝶が飛び立ったあとに残された花だけが写っています。
右端に紋白蝶…!
そのとき、
残された花だけが写っている画面を見たその一瞬、
まるで自分が
ひとり取り残されたように感じて、はっと竦むわたしがいます。
いまくらいの季節は蝶が多いのでそうでもありませんが、
晩秋や初冬などに淡い陽ざしのなかをふわりと舞う蝶を見かけると、
「あ、二つ折りの恋文…!」
と思って立ち止まり、ほとんど無意識にその行方を目で追いかけてしまう。
「お花の番地は見つかった?」 …と。
ご存じの方も多いと思う。
児童文学『にんじん』の著者ジュール・ルナールの詩の影響です。
二つ折りの恋文が、花の番地を捜してゐる
Le Papillon, Ce billet doux plié cherche une adresse de fleur.
--- Jules Renard
花から花へ
ふわふわとさ迷う蝶をラブレターにたとえて、とても愛らしく表現した詩。
なにより岸田國士さんの日本語訳が素晴らしいと思う。
二つ折りの恋文が、花の番地を捜してゐる
この詩が入っているルナールの『博物誌:Les Histoires Naturelles 』は
いろいろな生き物や草花がいきいきと描き出されている楽しい一冊。
Le serpent, Trop long.
蛇。
長すぎる
とか(笑)
ルナールの、対象への愛情が注ぎ込まれた簡明な文章は
くどくどと感傷的に書いてしまうわたしには、眩しいばかりです。
端的な文章を書きたい。
と思っているのです、この有り様でも。
裏庭のごちゃっと汚いなかに健気に芽を出すアガパンサス。
苞が破れて、蕾がでてきたところ。
ひとつひとつが内側に光を宿しているように見えて、見惚れてしまった。
ほんのりと淡い光。
背景が汚くて恥ずかしいけれど、見てほしくなりました。
*