生け垣に咲く
スイカズラが
甘くやさしい香りを漂わせると
はじまりの夏
ビーズのような
初夏の
光
葉っぱのすき間から
きらきらと
こぼれて
甘いけれど
爽やかで
強いけれど
やさしい香りに
誘われて
庭の奥へ
奥へ
スイカズラは
はじまりの夏の
香り
生け垣に
たわわに群れ咲く姿から
木々をつたって
高みへ登っていく花を追いかけて
ふり仰ぐ
降りそそぐ甘い香りと
しだれて
流れ
咲きほこる花はまるで
「野ばらとスイカズラの天蓋」
森の妖精と恋人たちの
夏至の夜
妖精王オーベロンの妃・ティターニアが眠る
タイムのベッドには
野ばらと
スイカズラの天蓋がついている
…想像して、
ため息
ウィリアム・シェイクスピア作
『真夏の夜の夢』
妖精が治める
みどり深い森のなかへ
心が跳ぶ
スイカズラの花咲く
庭の一隅
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