ドキュメンタリー番組での凛とした姿、
棘は無いけどキレのある言葉の数々が印象に残っている。
誰にも頼らずに、自分で道を切り拓いてきた人の強さが存分に伝わってきた。
しかし自然を見るまなざしは優しくて。
強き背骨を持つが故に優しい人だったのではないだろうか。
美文家で秀逸なエッセイもいくつか残している。
墨の創作に携わる人には、その意味はリアルな実体験を以て
墨が和紙に染み込むように、心に広がり伝わってくるが、
彼女が紡ぐ、哲学的で、宇宙的な言の葉たちは、芸術に関わりを持たぬ人でも
人生に置き換えて考えることのできるものではないだろうか。
『墨は重ねても一回性の重なりで下の墨は消えない。
人が一刻、一日と生きて、一つの生涯となるのと同じように思われる。
人が描くというしぐさには祈りに似た孤独の形がある。』
(篠田桃紅『墨いろ』)
今年108歳。になるはずだった篠田桃紅の
生涯の画業をたどる展覧会がそごう美術館で開催されます。