個展『樋口鳳香・墨美神展~春の水』の開催のきっかけは、
幸運なことに、目に見えない偶然の計らいでした。
画廊のスケジュールがそこの1週間だけぽっかりと空洞のように空いていたのです。
私を待ってくれていたような気がして、
準備期間がとても短いのを承知で、開催を即決しました。
準備期間の短さから、
当初は何から手をつけていいか分からないパニック状態になりました。
しかし、「ひとつずつ、確実に仕上げていくしかない」と自分に言い聞かせて
毎日、心臓のペースを超えないように走ってきました。
作品が徐々に仕上がり、少しずつ展示が形になって見えてくるにつれ、
「この季節に開催する」ということにも想いを寄せるようになりました。
桜をたくさん描いている内に
この淡墨桜は祈りの桜だな、と思うようになりました。
だって、会期中に当たる3.11は、多くの人にとってまだ記憶に新しい出来事だから。
今年はウィルスの拡散の影響を懸案して、式典は開催されないそうですが、
せめて、心は寄せていたいと思いました。
ここ数年、個人的に参加させていただいている
大竹昭子さんの声かけで始まったという『言葉のポトラック』も、
10年目を迎える今年、ウィルスの蔓延を不安視して開催見送りとなりました。
『言葉のポトラック』は、
毎年、大竹昭子さん、堀江敏幸先生、作家であるお二人がホスト役を務められて、
震災にまつわる話をゲストと深く掘り下げていき、
こぼれる言葉を拾い、集め、見えないヴェールで会場に集まる人の心をおだやかに包むようなイベントです。
講演会の最後には、書評家でもあるお二人おすすめの本を、
出版社の協力のもと販売して寄付に当てる
大竹さん曰く『本の叩き売り』をして、会を閉めるという
知的で真面目に楽しい素敵なイベントです。
「始めたのなら10年は続けないと、という堀江さんの言葉を受けて毎年やっているんです」
という継続の理由を毎回、伺っていたので、
10年の節目である今年が見送りになってしまったことが、
なんだかポケットに穴が開いたような、心細い気持ちになってしまいました。
(大竹昭子さんのカタリココ)
http://katarikoko.blog40.fc2.com/blog-category-0.html
…と、今日も取り止めもなくなってしまいましたが、
ようやくこうして言葉が出て来るようになったのは、
絵を描く脳からの脱却ができた時点である、ということかも知れません。
(鳳香は文章も書きますが、絵と文章の作業は、同時並行にできないので)
それから、個展の宣伝文句は
『墨で描く、かぐわしき美神たち〜『樋口鳳香・墨美神展~春の水』
と一行で終わる簡単なものですが、
思いは、意外と深いということを、伝えたかったのかも知れません。
皆さんのいろんな想いを聞くのも私にはとても嬉しい出来事です。
ぜひ緊張の糸をほどきに、会場においでくださいね。
お待ちしています。
個展『樋口鳳香・墨美神展~春の水』
会場:美の起原(中央区銀座8-4-2 高木屋ビル1F)
会期:3/9(月)~3/14(土)
12:00 ~ 18:30(最終日は16:00閉場)
☆14日13:00墨美麗組(すみれぐみ)によるライブペイントパフォーマンス開催!
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