地球が回っているということを意識して生活している人はほぼいないでしょう。我々が生活しているこの地球、実はとんでもない速度で自転しているのです。その速度は実に時速1700キロメートル。1日24時間で赤道を1回転するわけですから、これは簡単に計算できますね。この速度は秒速にすると465mというとんでもない速度なのです。つまり、地球のどの位置にいるかでこの速度は変わってくるのです。
■我々が回転していることに気付かない理由とは?
自転しているのは我々だけではありません、地面から建物、空気まで地球上全てのモノが等しく同じ速度で自転しているのです。その為いくらとてつもない速度で回転していても、それに気付く事はないのです。一番分かりやすいのが普段使っている電車。例えばここで時速80kmで走っている電車だとしましょう。そして電車の中で進行方向に向かって、時速20kmでボールを投げたとします。果たしてボールの速度はどうなるでしょうか?
これは物理などでは「観察者」と言いますが、見る人をどこで置くのかで変わって来てしまうのです。電車の中の人からすれば、ボールは時速20kmになるでしょうが、電車の外の人からすれば、もともとの電車の速度にボールの速度を足して時速100kmで飛んで行くように見えるわけです。物理運動を考える際に重要なのは、この「観測者」をどこに置くかということなのです。
ではもし仮に地球の自転が突如止まってしまったらどんな事が起こるのでしょうか?
残念ながら答えは簡単、全てのものがその場から吹き飛んで行き、とんでもない大惨事が起きます。これは先ほど電車を例に出しましたが、急ブレーキをかけられた事を想像すれば容易に想像がつくでしょう。しかもその速度は電車の比になっていません。
この力を「慣性力」といいGという単位で表されます。1Gは自分の体重を意味し、2Gだと自分の体重の二倍の力がかかることになります。赤道上にいる人が一番早く自転しているわけで、仮に1秒で自転が静止したとしても、約47.2Gの力が体を押すことになります。唯一生き残る術は、自転の停止が予測できた瞬間に、自転による影響のない北極か南極に行くことです。もちろん、予測できればの話ですが。
建物は崩壊し、多くの人は仮に運良く近くにあった棒にしがみつけても、更なる恐怖が襲いかかる事になります。それはこのGif画像が示す通り「強烈な風」です。「全て」のものが吹き飛ぶということは、空気も例外ではありません。地球の自転によって発生した恐ろしい強風は、赤道なら秒速465メートル、北緯37度のサンフランシスコにいたとしても秒速368メートル、これは原子爆弾による爆風よりも遥かに早い速度になります。さすがに棒にしがみついて一命を取り留めた人も、これでは生存確率0です。
また、それだけではありません。一日に昼と夜があるのは自転のおかげです。しかし自転がなくなってしまっては、地球は太陽の方を向いた灼熱地獄と、反対側の極寒の地に分けられてしまいます。自転の消滅によって失うものはこれだけではありません。我々は地磁気によって、宇宙空間から降り注ぐ「太陽風」と呼ばれる人体に有害なプラズマから守られています。しかし、自転がなくなることによって、この地磁気も無くなってしまうと予想されます。高濃度の放射線は容赦なく地表に降り注ぎ、もはやどこにも逃げ場はないのです。
■自転が止まる可能性は?
地球の自転は、地球が元々小惑星同士の衝突によって生まれたことに起因しているとされており、当初の自転周期は5時間ほどと考えられています。その速度は、1年で0.000015秒と僅かながら減速し続けている。そのブレーキをかけているのが、月がもたらす「潮汐作用」です。年に約3cmずつ遠ざかっている月は、地球の自転のエネルギーを、潮汐作用を通じて受けとっているのです。ともあれ、地球の自転が止まったら全てのものは「風と共に去りぬ」なのです