知り合いの友人が
知り合いの友人に
家を頼んだ
知り合いの友人は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
知り合いの不動産屋は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
たくさんの知り合いの知り合いが
たくさんの家をぶら提げて
暗い夜道を行列している
知り合いの友人は
行く先もわからず
いつしかその行列の最後尾で胸を張っている
知り合いの友人が
知り合いの友人に
家を頼んだ
知り合いの友人は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
知り合いの不動産屋は
知り合いの不動産屋に
家を頼んだ
たくさんの知り合いの知り合いが
たくさんの家をぶら提げて
暗い夜道を行列している
知り合いの友人は
行く先もわからず
いつしかその行列の最後尾で胸を張っている
月の暦で年のはじまり
太陽の暦で春のはじまり
立つは歩くのはじまり
歩けば旅がはじまる
僕の旅のはじまりは定かではないが
突然ここに着いたわけでもない
記憶は
鳥のように羽毛の軽さで飛びはじめ
今や五体の何倍もの荷物を背負ってる
その分筋肉は比例して形を作ってきたが
ここにきて支える骨が軋んできた
終わりが見えてはきたが
まだ終わりではない
思う以上に長い旅の途中かもしれない
そろりといたわりながら
まだずっと先に腰掛けて
最後に見る光景を想像しながら
一歩ずつ踏み出していく
それが今日のはじまり
咲き誇るなら
短い命の花だけでいい
指先ほどの花びらが集まって
幹も枝も隠し
群れとなり
大きな生き物になっていく
白色のあるいは薄紅色の
天に導く龍のようだ
限られたときの中で
命の色を保ったまま
散っていく
地に落ちた桜の花の道
無造作に歩くことはできない
空に
抱えきれないほどの雨を
孕んだ黒く大きな雲が
浮いている
望めば望むほど
望みは
人から離れ
天に舞い上がる
舞い上がった望みは
群れをなし
凝集し
巨大な化け物になる
支えきれなくなった雲から
雨が放たれる
家をながし橋を壊し
容赦なく道を消失させる
積み上げてきた
街が
積み上げてきた望みで
破壊された
これは
望みではなかったはず
そのままであること
それが最大の望みであったはず
雨が
程よく降ってきた
木も草も動物も人も
その恩恵に与る
望ましい雨が
望ましい命をはぐくむ
望ましい望みが
望ましい命を保つ
地中に撒き散らされた種
ひしめき合い摩擦する
地球の不順で
目を出せない
膨張する欲望
生命の本能が軋轢を生み
一つの種が地中を飛び出した
空に弾を撃った
バーン!
芽の息吹く音ではなく
芽が正気で失くなった瞬間である
日々眠り
日々目を覚ます
同じ場所への生還
闇夜伝いに
辿りつく
朝明けの頃
地上すぐの樹木が
高すぎる空を遮る
しなやかに伸びる四肢
取り戻す呼吸
風に木洩れ陽
午後の休息
米を研ぎ
水に眠らせ
成熟を待つ
わずかだが
また生き長らえた
夕べのひととき
異和感のあるあなたの中に入って
どうしてそうなるのか知りたい
お薬がどんどんあなたの中に入っていくけど
お薬はあなたの中で一体何をしているのでしょう
異和感がなくなったとは言えず
ただほんの少し生気がなくなっておとなしくなっただけ
だから
異和感のあるあなたの中に入って
どうしてそうなるのか知りたい
そして
苦しみから少しでも解放して
楽にしてあげたい
どうすれば
異和感のあるあなたの中に入っていけるのでしょう
心が手をつないで
輪になってすわると
どの心も見えるようになる
優しさも敵意も
熱意も怠惰も
みんな手をつなぐんだ
ぐるっと見渡して
みんな自分なのだ
僕が感じるほどに
君の心は動かない
君が気づくことに
僕は無関心だ
僕に見えるものを君は見ず
君に聞こえるものを僕は聞かない
そうなんだよ
誰もがみんなひとりよがり
それで気分を悪くする
ばかげた話だ
もう
まだ
試されるとき
波立つ水面の
空気の酸素なら上
水中の酸素なら下
人なら空気
沈むか
干上がるか
鍵はひとつ
上か下か
さあ
君よ
まだだろ
回すだけだ