ある女性のお話
幼いころ、私が風邪をひいて
寝込むと、 母は葛湯を
作ってくれました。
とはいっても、本物の葛では
ありません。
カタクリ粉にお湯を注して、
砂糖を溶かしたものです。
別に、簡単な食べ物ですが、
元気なときに自分で作って
みたら 上手く作れないです。
ちっとも美味しく
ありませんでした。
時が経って思うのは、それが、
お袋の味だったということです。
最近、家の近所にある和菓子屋
さんで、葛湯を買ってきました。
こちらは、本物の葛100%です。
湯を注いで、スプーンで
かき混ぜます。
とろりと透明な葛湯が
出来上がりました。
ひとくち口にして、また
母のことを思い出しました。
母はいつも、
「感謝しないかんよ」
「おかげさま、おかげさま」
と言っていたことを。
私が、愚痴を言ったり、
生意気なことを言うたびに、
「今日、生きさせてもらって
いるだけで、もったいない」
とも。
ちょっと年寄り臭いけど
一句浮かびました。
葛湯吹く 母の口癖 おかげさま