63歳の男性の話
私が銀行に勤め、
課長をしていた時、
ある新人女性行員が
私の部署に配属されました。
彼女は一生懸命に仕事を
頑張っていました。
しかし、1カ月ほどして
失敗をしてしまいました。
そして、支店長から
ひどく怒られました。
彼女は謝りながら
泣いていました。
その直後、私は彼女に
「気にしなくていいよ。
誰にでも間違いはあるのだから」
と慰めました。
彼女も涙をふきながら、小さな声で
「はい」と言いました。
それから、彼女は日に日に
事務知識を習得し、
その支店で「生き字引」と
言われる存在になりました。
月日が経ち、私は転勤し、
彼女とは別の支店で働いていました。
そんなある日、彼女から
電話がありました。
「この度、結婚するので
退職します。お世話になりました。
新人行員の時、
慰めてくれなかったら、
私は、辞めていました。
あの時はありがとうございました。
それを言いたくて、
お電話をしました」
私が何げなく言った言葉が、
彼女にとって強烈な救いと
なっていたのだと、
初めて気づきました。
言葉は「人生の分岐点」
になると知りました。