相模原殺傷被告、起訴内容認める考え 法廷に立つことは「気まずい」
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年、入所者19人を殺害し、26人を負傷させたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元同園職員の植松聖(さとし)被告(29)に対する裁判員裁判が来年1月8日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で始まる。初公判を前に、勾留中の植松被告が毎日新聞の取材に応じ、裁判で起訴内容を認める考えを示した。
起訴状によると、植松被告は16年7月26日未明、窓ガラスを割って施設の居住棟に侵入し、入所者らを殺傷したとされる。毎日新聞は17年3月1日から26回にわたって拘置施設で接見し、事件の動機などを尋ねてきた。起訴された殺人罪などについて、植松被告は当初から裁判で争わない考えを示し、先月25日の対面でも「認めます」と答えた。
「裁判はどのような場だと考えるか」と問いかけると、「言われたことに反対することもあるが、基本的には迷惑をかけてしまった(遺族や園の関係者などの)方々におわびする場」と説明。多くの遺族や被害者の父母が足を運ぶと予想される法廷に立つことは「気まずいでしょうね」「反省していないと言われるのもちょっと違う」と述べた。
判決に対する不安も垣間見える。今年4月には「無罪ではないと思うけど、死刑が下されるような行為ではなかった」と語った。7月の接見では厳しい判決が言い渡される可能性について「仕方ないです。今の日本の法律上は」と述べた後、「死刑は重すぎる。死刑になるつもりはない」と訴えた。入所者を突然襲ったことは「遺族に申し訳ない」と発言しつつも、「仕方がない」と繰り返している。
裁判員裁判は26回開かれ、3月16日に判決を言い渡す予定。
(毎日新聞 2019.12.8.)
植松被告接見一問一答(初回~8回目)「本当に申し訳ありませんでした」「死ぬのは怖い」「事件前に大麻」
相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者19人が殺害され、26人が重軽傷を負った事件で、殺人などの罪に問われた元職員、植松聖被告(29)に対する裁判員裁判が来年1月8日、横浜地裁で始まる。毎日新聞は起訴された後の17年3月以降、26回にわたり横浜拘置支所(横浜市港南区)などで被告と接見を続けている。事件後の取り調べで「障害者には生きる価値がない」という極めて理不尽な動機を語ったとされる植松被告。初の接見で語ったのは、意外にも謝罪の言葉だった。主な一問一答をまとめた。
本当に申し訳ありませんでした
■17年3月1日(初接見)
◎警察官2人と共に面会室に現れた植松被告は、上下黒のスエット姿で、小柄に見えた。事件前日に染めたという金髪は毛先に残る程度となり、肩まで髪を伸ばしていた。席に着くなり、「お時間を頂き、ありがとうございます。よろしくお願いします」といい、深々と一礼した。その後、あらかじめ用意したとみられる謝罪の言葉を、伏し目がちに、よどみなく続けた。
――どうして面会に応じる気持ちになったのか
私も話したいことがあり、謝罪の言葉を、お伝えするために面会をさせていただきましたので、お伝えさせていただきます。
――謝罪の言葉というのは
この度は……、私の考えと判断で、皆様を悲しみと怒りで傷つけてしまい、心からおわび申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。<机につくぐらい、深く頭を下げる>この言葉にうそ偽りはございません。苦労の連続であることを知っているからです。
責任能力で争ってほしくない
■18年2月26日(2回目)
◎手紙のやり取りを続け、再び接見できたのは1年後になった。刑事責任能力を調べる精神鑑定の結果、被告には責任能力があるという結果が示されていた。
――鑑定結果に納得しているか
もちろんです。責任能力がないとなるくらいなら死刑になりたいです。だから裁判でも責任能力で争ってほしくない。
――死刑は怖くないんですか
死ぬのは怖いです。死ってなんだと思いますか。
――え……。難しいですね。無だと思います。何もなくなるかなって。
僕もです。すごく怖いですよね。
――精神鑑定で「責任能力なし」と偽ろうと思っていないですか
そりゃ、もし外に出られるならなんだってしたいです。
<この日までに交わした記者との手紙の中で、被告は自らが傷つけた知的障害がある人たちのことを「心失者」と表記し、社会から排除すべきだと強弁した>
――「心失者」はどういう意味か
ざっくり言うと、自分で住所と名前を言えるか。自分の意思がない人と言いますか。
――いつから、いない方がいいと考えるようになったのか
やまゆり園で働き始めてから徐々に、という感じです。
――なぜ実行を決意した
手紙を送ったのに国がやってくれなかったからですね。自分がやるしかないと思って。
――思いとどまらなかったのはなぜか
社会のためにやらなくちゃいけないと思っていたので。
事件は正しいとは言えない
■18年7月30日(3回目)
――今も「障害者は不幸をつくる」と思っているのか
はい。
――その主張は、事件を起こさなくても言えたのではないか
事件を起こしたことを正しいとは言えないと、今は思っています。
――それはどういう意味か
傷つけてしまったんで。安楽死(という手段)ではなかったことを後悔しています。
――裁判では刑事責任能力の有無で争うつもりはないのか
責任能力がなければ即、死刑になるべきだと思っています。たとえそれが私でも。だからそこは裁判では全然、争ってほしくないです。
――裁判は早く始まってほしいか
すぐ始まってほしい。長すぎますよね、最高裁まで3回もやらなきゃいけないって。どんな判決でも早く終わりにしてほしいと思っています。1回で、もういいです。
本当にあほなことをした
■18年8月16日(4回目)
――最近はどのように過ごしているのか
どうしようもないですね。やることが何にもなくて。
――事件に罪悪感を感じることはあるか
急に殺したことについては申し訳ないと思っているが、仕方がないことだと思う。
――拘置所にいるのは不本意か
もうやることやったなと思います。長すぎますよね。本当にあほなことしたなって。
――それはどういう意味か
今やることがないんで。
――いつごろから思うようになったのか
最近です。
――事件前に戻れるならやらないか
いや、でもやるべきことだったので。出られるならなんでもいいですよ。
――やらなければ良かったと思うということか
やらなかったかもしれないですね。楽しいのはあっち(外)じゃないですか。意義があるのはこっちだけど、楽しいのはあっちなんで。
いらだちを募らせる
■18年10月15日(7回目)
<植松被告は福祉専門家とも面会しているが、自らの主張が理解されないことへのいらだちを記者との面会で吐露したこともあった>
(福祉専門家を指して)あいつら本当に意思疎通を図れなくて。理性と良心がないやつも死ぬべきだと思うようになりました。
――あなたは以前、住所と名前が言えず意思疎通を図るのが難しい人を「心失者」と呼んだ。その定義に新たな条件が加わったということか
そうです。
事件前に大麻を吸った
■18年10月16日(8回目)
<話すうちに、植松被告は自らが大麻を吸引した過去について語り出した>
――事件前も(大麻を)吸っていたのか
そうですね、2~3時間前に。
――どれくらいの頻度で使用していたのか
週3回とか。
――事件への影響はあったのか
役に立っていない人はいらないとは、うっすらと思っていたんですが、やっぱりいらないと思うようになりました。
――遺族は事件の後、つらい人生を歩いている
それは、僕が殺したせいでつらい人生になっているということですか。
――そうだ
人生の多くを使ってますから。
肌感覚で懲役20年くらい
■18年12月12日(9回目の接見)
◎植松被告は肩より長い長髪を後ろでくくり、眉毛をそっていた。眉毛が濃い面会者と会い、急に自分の眉毛が嫌になったのだという。週2回100回の腕立てをしていると話す通り、体つきも筋肉質になっていた。「脱毛をしたい」「身長を伸ばしたい」などと発言し、見た目への強いコンプレックスがうかがえた。
――以前、責任能力がないと判断されるのは嫌、と言っていたが
死刑と言われて、わかりましたと言ったら普通ではないですよね。もし死刑にならないんだったら何でもする。おかしいと思うけど(刑が)軽くなるなら、それでいいと今は思っています。でも問題が見過ごされるのは嫌ですが。
――問題とは
障害者福祉のあり方について、社会が目をそらして論じないことです。
――自分に対して、どのような刑が妥当と思うか
懲役20年くらいですかね、肌感覚で。
――拘置所内では本を読む機会が多いようだが、障害者に対する考え方は変わったか
それは変わっていない。
永遠に生きたい
■19年1月9日(11回目)
――まもなく事件から2年半になる。事件を思い出すことはあるか
特にない。
――なぜ、やまゆり園で働こうと思ったのか
家の近くだったし、仕事が楽と聞いたから。
――障害者と関わりたいと思ったことは?
特にそれはないです。
<話の中で、「若返りの薬がある」と語り出した>
――年を取るのは嫌だが長生きしたい?
永遠に生きたい。
――改めて聞くが、事件の目的は何か
人の役に立つと思いました。世界平和につなげたいと思いました。
――自分の行為に対して、いま何を思うか
反省するところはあるけれども。
――反省するところとは
(殺害方法が)安楽死ではなかったことですね。
――「反省するところはあるけれども」、…
(毎日新聞2019年12月8日)
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