「お前、とろいんだよ!」
56歳従業員を踏切自殺に見せて殺害か 会社社長ら4人を
殺人・監禁容疑で逮捕
「肛門に棒、熱湯、プロレス技」
壮絶いじめの果て
踏切に立たされた男性は警報音が鳴り響く中、どんな思いで迫り来る列車の光を見たのだろうか――。警視庁は、56歳の男性従業員を踏切自殺に見せかけて殺害した疑いがあるとして、建築関連会社社長ら4人を殺人と監禁容疑で逮捕した。職場では数年間にわたって壮絶ないじめがあったという。
12月8日、殺人と監禁容疑で逮捕されたのは建築関連会社「エムエー建装」社長の佐々木学容疑者(39)と同従業員の島畑明仁(34)、岩出篤哉(30)、野崎俊太(39)3容疑者。4人には、昨年12月3日0時過ぎ、同従業員の高野修さん(56)を板橋区内の踏切内に立つよう強要し、通過した電車に轢かせて殺害した疑いがかけられている。 現場は東武東上線下赤塚駅、東武練馬駅間の真ん中あたりの位置。踏切を挟んで辺りは住宅街が広がっており、人通りがない時間帯だった。踏切内で高野さんは志木駅発池袋駅行きの列車に跳ねられ死亡した。即死だったとみられる。 「当初、警視庁は自殺と見て捜査していました。しかし、現場の防犯カメラを調べるうちに踏切沿いの路上に停車していた不審な車の存在に気づいたのです」(警視庁関係者) 車には2人の男が乗っていて、高野さんはその車から降りて踏切内に入っていた。車は高野さんが列車に跳ねられるまで踏切が見渡せる十数メートル離れた位置に停車し、その後走り去った。
「高野さんが亡くなるまで見張っているように見える動きだった。警視庁は防カメ映像を把握後、高野さんが自らの意思で自殺したのではなく、男らに死ぬよう強要されたと見て捜査を開始したのです」(同)
調べを進めると日付が変わる前の数時間前、現場から2キロほど離れたところにある高野さんの自宅に4人の男が迎えに来ていたことがわかった。高野さんが勤務する会社の社長である佐々木容疑者と同僚の3容疑者である。4人は近くの駐車場に2台の車でやってきて、歩いて自宅に向かった。 自宅は木造アパートで細い路地が入り組んだ場所にあり、車が停車しづらいところだった。家賃は約3~4万円で、佐々木容疑者の会社が借り上げていた。
4人は高野さんを連れて一旦駐車場まで戻った。そして、島畑容疑者の車に野崎容疑者、高野さんが乗り込んで出ていった。まず向かった場所はそこから4キロほどある、荒川にかけられた「笹目橋」という橋だった。 「そこでも高野さんに橋から飛び降りるよう仕向けるような動きがあったと警視庁は見ている」(同) だが橋では何も起きず、車は踏切へと向かったのだった。
佐々木容疑者と岩出容疑者は駐車場で別れてからは姿を消して、橋や踏切には行っていなかった。 警視庁は4人を任意聴取したが、全員が関与を否定。だがその過程で新たな事実が判明した。 「4人に携帯電話を提出するよう求めたところ応じた者がいた。そこに目を背けたくなる凄惨な高野さんへの『いじめ動画』が残されていたのです」(同)
動画の中で高野さんは、肛門に棒を入れられたり、熱湯をかけられたり、プロレス技をかけられていた。佐々木容疑者らが「お前、とろいんだよ!」と笑いながらいじめる様子も含まれていたという。
高野さんは2015年に入社し、途中で一度退職したが数カ月してまた復職し、事件まで勤務していた。 「警視庁はこの間、佐々木容疑者らが日常的に高野さんを集団でいじめていたとみている。そして、このいじめの果てに4人が高野さんを死に追いやったとして、今回の逮捕に踏み切ったのです」(同) だが、容疑者らは高野さんに直接手を下していない。しかも車で連れ回したり現場にも行っていない佐々木、岩出両容疑者までもが殺人・監禁容疑で逮捕された。 「捜査一課は佐々木容疑者らも共謀して殺害に関わったことを示す、通信記録などの“隠し球”を握っていると思われます。ただそれでも殺人罪に問うには証拠が不十分な可能性がある。今回の逮捕で捜査幹部は『賭けに出た』とはっきり認めている。起訴時には自殺教唆や自殺幇助などの罪名に変わる可能性があります」(同)
記者は高野さんが亡くなった深夜0時頃、現場を訪れた。 車も人の往来もなく、周囲の住宅街は寝静まっている。踏切は幅3メートル程の、車が通れない小さなものだった。 20分ほどの滞在時間中に踏切を渡ったのは自転車に乗った若い男性一人だけだった。日中、踏切の目の前にある住宅を訪ねて当日の様子を聞いてみたが、「寝入っていたから全然気づかなかった」と話した。
終電が近づく時間帯だが、数分置きに上り下りと次々と列車はやってくる。列車が途切れた合間に踏切の真ん中に立ってみた。 遠くの踏切からカンカンと鳴る警報音が近づいてきて、やがて静寂を打ち破るように間近の警報音がけたたましく鳴り出した。同時に両サイドの警報ランプが赤く灯り出す。
続いて「ウィーン」と不気味な音を立てながら遮断機が降り、線路の先の闇の向こう側から列車の光が見えてきた。このまま立ち尽くして列車の到来を待った高野さんを想像すると、恐怖を感じた。 背後に “見張り”の視線を感じる中、高野さんはどんな思いで最期を迎えたのだろうか。
(2024.12.9.デイリー新潮編集部)
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