芝公園六角堂跡
西村賢太
文藝春秋
2017年1月刊
「芝公園六角堂跡」(文學界(掲載誌)2015年7月号)
「終われなかった夜の彼方で」(文學界(掲載誌)2016年新年号)
「深更の巡礼」(小説現代(掲載誌)2016年2月号)
「十二月に泣く」(すばる(掲載誌)2016年6月号)
芝公園六角堂跡 | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
図書館に西村賢太本があって経済的に助かります
今回も図書館レンタルなので損得はあまりありません
書評は賛否両論です
自分は損得がなかったぶん「賛」にしときます
西村賢太 『本を買わないで図書館で借りる奴がいる』
理由は 今までは時々しか顔を出してなかった 稲垣潤一が一発目からドバーっと出てきて
西村さんとの関係性をきちんと説明して下さり納得がいったことです
秋恵さんが好きで聴いてるやつを貫多も聴くよーになった のがフィクションの方で
実際は自分が中学時代から好きで秋恵さんに洗脳させて好きにさせたとゆーのがほんとのとこみたいです どーゆー感じで好きになったかとかシングル盤をどーゆーに買い求めたとか
どーゆーに聴かなくなり どーゆーに再び聴くよーになり
どーゆーに実際に出会い対談したり招待されたり飲み会に行ったりが詳細に説明してくれてます
自分は 稲垣潤一さんの歌はそんなに嫌いな方じゃないけど、
あえてレコードやCDなんかは買ったことも借りたこともない程度の認識しかありません
でもあのシルキーボイスにはどこか引っかかるもんがあり
今度機会があればゲオでベスト盤なんかを借りてみよーと思う
多分嫁も嫌いじゃないだろーから
ドライヴ時カーステレオから時々流れる分にはエエネタではないかと思う次第で
ついでに稲垣さんの書籍ハコバン話も気になったので
機会があれば古本で とゆー次第
闇を叩く (小学館文庫) | |
稲垣 潤一 | |
小学館 |
ハコバン70’s | |
稲垣 潤一 | |
講談社 |
そのライヴ帰り いつものごとく藤澤清造の野垂れ死んだ場所やなとゆー話になり
通常の 藤澤清造ネタ、田中英光ネタ、
毎度の古書店の新川さんが出てきてオークションのキチガイ札の話は楽しいし
そんなに新機軸でもないし マンネリとかネタ切れとかも思わない
通常通りの西村本だと思いました
文学界の悪口が時折ドピュっと飛び出すのがエエと思いますね
色んな方面に媚びまくりだが、そっち側には媚びない所がエエなーと思います
田中英光さんの小説は西村さんが紹介してくれるまで全く読んだことなかっので
オモロイ小説家を教えてくださってありがたいと思います
機会があれば 藤澤清造も読んでみたいところです
西村賢太(無頼派作家)が大ファン稲垣潤一と語り合った夜
(2014.1.7.フライデー)
西村 僕は稲垣さんのデビュー曲『雨のリグレット』('82年)から数えて、30年来の大ファンなんです。僕の小説は女性から反感を買いやすいので、そんなヤツが熱心なファンで申し訳ございません。
稲垣 会うのは5回目ですが、いつお会いしても恐縮することしきりですね(笑)。僕が賢太さんを知ったのは5年ぐらい前。ファンの方から「西村さんの作品に稲垣さんの曲が登場していますよ」と教えてもらったんです。本を読んだ感想は……とにかくムズかしい漢字が多い(笑)。この人はきっと天才で、文章を書くために生まれてきたんだな、と。
西村 中卒の、馬鹿特有の悪いクセで、ああいう書き方になってしまうんです。
稲垣 またまた! いろいろ読ませてもらいましたが、どの作品もいつの間にか映像が頭の中に浮かんでくるから凄い。
西村 小説では主人公と一緒に住んでいる女性が稲垣さんの大ファンという設定なんですが、実際は僕がファンなんです(笑)。「稲垣ファンに悪い女性はいない」というイメージから、勝手に名前を使わせていただいて恐縮です……。
稲垣潤一氏(60)は『クリスマスキャロルの頃には』('92年)などの大ヒット曲で知られた、日本を代表するボーカリストである。その稲垣氏が初の自伝的小説『ハコバン70's』(講談社)を発表し、話題を呼んでいる。小説の舞台は'70年代の宮城県・仙台。稲垣がデビュー前の9年間、キャバレーやディスコの「ハコバン」(生演奏をやる店のバンド)として活動する日々を描く。
一方、〝無頼派〟と呼ばれる芥川賞作家・西村賢太氏(46)は、その作風のイメージからは想像が難しいが、稲垣潤一氏の大ファンなのだという。
西村 実はこの場を借りてご報告がありまして……来年の春に発表する予定の短篇で、僕が稲垣さんのファンになった経緯を小説にしようと思っております。
稲垣 お、それは初耳。楽しみですね。
西村 ゴキブリのような男ですが、どうぞご期待ください。思えば僕の青春は、稲垣さんの曲とともにありました。高校に行かず、東京・鶯谷(台東区)の家賃8000円の三畳部屋に棲んでた頃にもずっと〝心の援軍〟でしたから。その頃はお金がなく、ラジオから流れてくる曲にどれほど勇気づけられたことか。
稲垣 僕も家賃滞納生活を経験しているので(笑)、その気持ちがよく分かります。デビュー前の僕はラジオから流れるビートルズに勇気づけられましたよ。
西村 いまでも原稿の校正、ゲラチェックの時は、ずっと稲垣さんのアルバムを聴いています。言い方が正しいか分からないけれど、まったく邪魔にならず、す~っと耳に入ってきて気分が高揚する。朝方仕事が終わった後、部屋で晩酌する時も、やっぱり稲垣さんの曲です(笑)。
『夏のクラクション』('83年)あたりから、稲垣さんは、若いアベックがドライブで聴きたい定番になってきたんです。当時、僕は曲を聴きながら、「そいつらは、ドライブしてセックスしているんだろうな」とイライラと腹立ちが募るんだけれども、なぜか稲垣さんからは離れられない。やっぱり、声と曲がいいんですよ。
西村 自伝的小説『ハコバン70's』も楽しく拝読させていただきました。稲垣さんも若い頃は「てめえ、この野郎!」みたいな口調の人だったんですね!
稲垣 発表できるギリギリの内容まで、エピソードを盛り込みました(笑)。
西村 感想を言わせていただくと、一言、「おもしろかった!」。人物描写が巧いんです。歌手の方が書いた自叙伝って、自分の名を成し遂げた自慢話が鼻につくことが多いんですが(笑)、この本に限っては一切それがなかったんです。
稲垣 ホントはもっとダメダメなんだけど、でき上がりを読むと、格好よく書きすぎたなぁ、と。ちょっと反省中ですよ。
西村 苦難の日々を淡々と描いているのが印象的でした。デビュー間際で話が終わるのも良くて、東京に行くシーンで仲間から、「いよいよスタートラインに立ったな」と言われ、「そうじゃねぇ。もうすでに、ハコバン始めた時からスタートを切ってんだ」と、稲垣さんが言う場面、すごく共感できましたよ。
稲垣 賢太さんにそう言ってもらえると、嬉しいな。僕、ハコバン時代から変わらず、いまもただの音楽バカですから。
西村 自分は20代のときに傷害事件で2回逮捕され、完全に四面楚歌になって、一人で小説にすがるしかなかった。37歳でデビューしたんですが、稲垣さんの文章を読み、自分も15歳で家を飛び出し、一人孤独に本の虫になっていた時から作家としての人生が始まっていた、って、初めて気づかされました。
稲垣 僕も就職して1日で会社を辞め、バンドマンになるような男なので(笑)、だから、ああいう言葉が出たんだと思う。
西村 話を戻しますが、なぜ自伝小説を書こうと思ったんですか?
稲垣 もともと'70年代の「ハコバン文化」を書き残したいっていう気持ちがあって。当時は正気じゃないバンドマンやミュージシャンが大勢いて、とても刺激的だった。アルコール依存症は序の口(笑)。そういう時代の雰囲気を含めて、次の世代に伝えたいと思ったわけです。
西村 僕が知っている稲垣さんの歌の世界観とは似つかわしくないエピソードが多く、とても衝撃的です(笑)。例えば「お金なんていいから、愛さえあれば」と女性から誘惑されて、稲垣さんが「いや愛はもっとないですから」といった具合に受け流すシーンとかサイコーです。
稲垣 ハハハハ、渋々削った四方山話も山ほどあるかも……。特に18歳から1年間、東京で活動していた時期はヒドかった。お金がなくて拾いタバコもしていたし、銭湯に行くこともままならず、1ヵ月間風呂に入らなかったこともあった。
当時は新宿もいまよりも物騒で、ディスコのステージで演奏していると、スタンド式の灰皿が僕らに飛んで来ることも一度や二度じゃなかったなぁ。
西村 個人的に好きだったのは、作中、いまでいう〝ソープ嬢〟とのエピソード話で、あえて〝トルコ嬢〟と表記し、巻末にきちんとお断りを入れているのには恐れ入りました。我々のような本職の作家だと、編集者に指摘されたら唯々諾々と直しちゃいますから(笑)。でも、稲垣さんはそこにこだわる。素晴らしいです。
稲垣 '70年代の記憶を時系列に沿って、その時代背景と照らし合わせながら検証し、書き進めていく作業はたいへんでした。でも、部屋に閉じ籠もって執筆している時間は意外にも楽しい時間でしたよ。
例えばキャバレーの楽屋のシーンを書くときに、「自分はあの席に座り、休憩時間にみんなでポーカーをしたんだっけ。『エロトピア』っていう成人誌を回し読みし、その時、そういえばダニー・ハサウェイの曲が流れていたな……」といった具合に、ページがめくれていくように次々に記憶がパーンと甦ってつながっていく時間は、とても心地良かった!
西村 なるほど、分かります。自分の場合は、私小説という特殊なジャンルの書き手なので、読者を想定すると書けなくなってしまうんです。筆が萎縮したり、読者の顔色を窺うようになってしまうと元も子もないので、客観的な視点には特に気をつけて執筆しています。音楽制作では味わえない魅力はありましたか?
稲垣 制約の多い作詞と比べると、本を書いている時間のほうが、楽しかったかも(笑)。と、言いつつ本業もまだまだこれから。今年で還暦になり、デビュー31周年を迎えて今が最も充実した状態です。いつか、賢太さんとも一緒に仕事ができたら、面白いね。例えばほら、作詞とか。
西村 とてもできないですが……稲垣さんに頼まれたら、「はい。死ぬ気で!」。
西村賢太が「今作は“北町貫多もの"の中で別格の作」と言い切る理由
作者本人を思わせる作家・北町貫多を主人公にした作品を、すでに50以上発表している西村さん。その「貫多もの」の中で、今作は別格の作だと言い切る。
表題作を書くきっかけは、2年前の2月にミュージシャンの稲垣潤一氏からライブに招待されたことだった。
「会場になった東京タワー近くの高層ホテルの前面あたりは、僕が歿後弟子を自任する私小説作家・藤澤清造が昭和7年に野たれ死にした場所になるんです」
かつて貫多は“一人清造忌"と称し、毎年祥月命日の死亡推定時刻午前4時にこの地を訪れていた。しかし著名な新人文学賞(現実では芥川賞)受賞後は、ライブの日まで一度も足を踏み入れることはなかった。
「ただ泉下のその人に認めてもらう為だけに私小説を書き始めたのに、最近は書く理由がずれてきていた。有り体に云えば、名誉欲が勝ってしまっていたんです
新人賞受賞後はその強烈な個性が注目され、数多くのテレビ出演もこなし、裕福にもなっていく貫多。しかしその為に、月命日の29日に清造の能登の墓所に出向くという長年の習慣を破ったことさえあった。
改めてその地を訪れて清造の“残像"を感じ、決意を新たにした貫多だったが、話はそれで終わらない。
「表題作では現存する人物に遠慮して、要らぬエクスキューズも付した。これでは書き切ることができなかった、という思いが残り、続く『終われなかった夜の彼方で』を発表しました」
同作では己の書く意味を問い直し、自ら表題作へのダメ出しを行う。極めて静謐な作だ。続く文庫版、田中英光作品の校訂作業を通し、表題作での決意の再確認を試みる「深更の巡礼」、七尾の、清造の菩提寺が舞台である「十二月に泣く」も同様で、「貫多もの」での読者人気が高い、暴力や性風俗の描写は皆無だ。
「これは自分の為に書いたもので、その種は処女作の『墓前生活』以来。いわば自分の内面の定点観測記に過ぎぬものではあるんです。ひどく野暮な作です」西村さんは言う。一方、
「暴力と罵詈雑言のシーンばかりを無意味に喜ぶ、くだらない“自称"読者にはうんざりしています」
と、はっきり述べる。
今作は、サービス精神が一切排除されているだけに、純化された作家の魂に直に触れるような熱さがある。
「あえて夜郎自大に言いますが、これが合わず、何も汲むところがなければ、もう僕の作は読まなくていい。縁なき衆生です」
評者:「週刊文春」編集部
(週刊文春 2017.04.13号掲載)
西村賢太さん、新境地示す小説集『芝公園六角堂跡』 分身の作家、突き抜ける個性
「欲も得もなく、読み手の存在なんか考えない。右顧左眄(うこさべん)せず、文学青年のたわ言を80歳まで書き続けたい」。作家、西村賢太さん(49)が語る。新刊の連作小説集『芝公園六角堂跡』(文芸春秋)で作風の幅を大きく広げてみせた。
北町貫多は私小説作家。西村さんの分身であり、その小説で主役を張り続ける俗悪な人物だ。2015年2月のある夜、貫多はあこがれのミュージシャンのライブを聴きに東京タワーに近い高級ホテルを訪れ、豊かな音楽世界を堪能して外に出た。貫多は文学上の師に対して<甚だ顔向けのできぬ思い>を抱いている。少し歩いて芝公園の一角に立つ。そこは自ら「没後弟子」として敬愛する私小説作家、藤澤清造(1889~1932年)が凍死した場所。<何(な)んの為(ため)に書いているかと云(い)う、肝心の根本的な部分を見失っていた>
それは、11年に『苦役列車』で芥川賞を受賞し、破滅型私小説の系譜を継ぐとして時の人となった西村さん自身の思いを映す。「それまで月命日の29日には何があっても清造の石川県のお墓に参っていたのですが、テレビの仕事を優先することがあって……。貫多が芝公園に行く場面は自動筆記というか、一気呵成(かせい)に書きました」
北町貫多といえば愚行だ。同棲(どうせい)の女性を蹴り倒してその肋骨(ろっこつ)を折ったり、家賃を踏み倒して大家さんに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせたりと、「読むに堪えない」とすら評される最低最悪ぶりが真骨頂。だが本書に収録の4編はいずれも、貫多が清造への思慕を確かめる筋書きで、とても殊勝だ。「今後も罵詈雑言ものは書きますよ。新たに清造への原点回帰ものを柱に加えたということです」。短気でひがみ根性が強く、粗暴だが小心な甘ったれ。徹底的に“下”に突き抜ける人物造形こそ読者の心を解放してくれるのだが「いやいや、フィクションと思えるほど強固なキャラクターの確立はまだです。ぜひ到達したい」と西村さんは意気込む。
自作の愛読者像について西村さんは「圧倒的に男性。しかもお金と女性に縁のない低俗な……」と笑うが、清らかなイメージの女優、南沢奈央(なお)さん(26)も大ファン。このほど八重洲ブックセンター本店(東京)であった西村さんとの対談イベントの際に取材に応じ「『苦役列車』でハマって、ほぼ全作読ませてもらっています。内容は過激で残酷、孤独で寂しいのですが、言葉が美しい。クスッと笑えて、読後にはドロドロしたものが残ります。『芝公園六角堂跡』は新境地だと思う」と話した。
作中、貫多が自らのことを<わけの分からぬ五流のゴキブリ作家>と繰り返すくどさは至芸だが、西村さんは「全くの反語。すごい一流意識なんです」と大笑い。ラストの一文は胸をつかれる。貫多、いや西村さん自身の人生を超えて、生きづらさのただ中にある読者の背をそっと押す。「まずは自分の本分を尽くしてみよう」と思わせてくれるのだ。
(毎日新聞2017年3月18日)
西村賢太-問題発言【放送事故】爆笑映像集
西村賢太 『本屋大賞 ふざけるな!』
西村賢太 「家族はいらないですね。親の面倒もみません」
「根がどこまでも土方スタイルにできてる貫多」
「貫多は真の根がひどくスタイリストにできていた」
「根の稟質がかなり下劣で、ひどく卑しくできている性分」
「一方の根がひどく気弱な後悔体質」
「根が血の巡りの渋滞体質にできてる彼」
「根が可憐にでき過ぎている貫多」
「根が極めてのお調子者にできてる貫多」
100点満点 西村 賢太 「苦役列車」
賞が欲っしい!!「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」
偉大なるコラボ「けがれなき酒のへど」西村賢太
inferiority complex 同棲時代 「暗渠の宿 」西村賢太
「焼却炉行き赤ん坊」西村賢太
行きは「小銭をかぞえる」 帰りは「人もいない春」 西村賢太
ワクワクウキウキの新作「寒灯」西村賢太
花岡さんの勇姿と前田さんの透けシミーズが観れます「苦役列車」
いつも通りの西村賢太節が嬉しい「歪んだ忌日」
小説にすがりつきたい夜もある(kindle版)
秋恵ものの最後「棺に跨がる」
「痴者の食卓」では「下水に流した感傷」がオモロ
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