殺人犯の妻は、自宅を売り払って即日新居を購入した…
大阪カラオケパブ殺人犯「3000万円賠償金払わず」
《懲役20年判決は妥当か》
2021年6月、大阪市北区のJR天満駅前のカラオケパブ「ごまちゃん」でオーナーの稲田真優子さん(当時25)が刺殺された。
殺人容疑で逮捕された宮本浩志被告(57歳)は、1審の大阪地裁で懲役20年が言い渡されていたが、判決に不満を持つ宮本被告が控訴、7月10日、大阪高裁は控訴棄却の判決が言い渡した。 判決当日、宮本被告は出廷しなかった。宮本被告は一審の段階から「自分は犯人ではない」と徹底的に争ってきたが、控訴審でも「第三者の犯行が可能だった。複数犯がいたかもしれない」と主張していた。 しかし大阪高裁は「宮本被告が犯人である」「一審判決に不合理な点はない」と断罪した。 そもそも宮本被告は「自分は犯人ではない」としながらも、懲役20年の判決の量刑が重すぎるという矛盾した主張もしていた。 裁判では、その情状のために宮本被告の財産を開示している。真優子さんの遺族が宮本被告に対して別途起こした民事訴訟では、損害賠償金として2980万円の支払いを命じる判決が出ている。 支払いは実際に行っていないものの、宮本被告は「私有財産を遺族に開示したので、量刑を軽くすべき」と信じがたい訴えをしていた。 しかし判決は「財産開示で量刑を考慮する必要はない。賠償もしておらず、そう支払うのかも明かしていない。遺族は許しがたいと言っており、被害弁償はされていない」とにべもないものだった。
この日の判決前に、被害者遺族として真優子さんの母、由美子さんは意見陳述でその点に触れ、宮本被告が「情状」とした損害賠償請求について、こう主張している。 「(宮本被告の口座にある)銀行の定期預金、微々たる金額を差し押さえられているだけ。(宮本被告の)年金は差し押さえが不可能である。また被告の元妻は(犯行当時住んでいた)家を売却し、即日新居を購入している。私たち遺族の感情として大変許しがたい」 宮本被告の犯行に加えて、損害賠償への対応についても舌鋒鋭く非難したのだ。 元妻が自宅を売却し、即日新居を購入したとはどういうことか? 宮本被告は犯行当時、兵庫県西宮市の83㎡の分譲マンションに妻と子ども2人と暮らしていた。 だが、逮捕後に妻と離婚している。不動産登記簿を見ると、宮本被告は所有している分譲マンションをこの元妻に贈与している。そして、2022年4月に不動産会社に売却されたと同時に、元妻は別の物件を購入していたのだ。その点について、由美子さんが怒りを露わにしたのである。 宮本被告の身勝手な主張は、1審の裁判員裁判からはじまっている。2022年9月の初公判では、裁判長から名前を聞かれても答えなかった。 「いかなる質問にも答えない」と反抗するように語ったかと思えば、突然「裁判員にお願いです、死刑にしてください」としゃべりはじめた。 「裁判の公判前整理手続きで、裁判官にも死刑にしてほしいと言った。もししゃべりたいことがあれば、手を挙げて発言を求めます」 「裁判員に死刑をお願いしたので、裁判員の判決には従います。それが裁判員裁判の意味だと思う。迷わずに死刑判決を出してください」
実際は、宮本被告は被告人質問には何も答えず論告求刑へと移った。 判決当日、裁判長が宮本被告に「最後に述べておきたいことがあれば」と声をかけると、 「えーっと、しゃべりたいことがある。まず……」と口火を切り、延々と身勝手な主張を続けた。 検察側が「宮本被告は真優子さんに執着していたことが犯行動機。LINEのメッセージを大量に送りつけていた」と指摘されたことに腹が立ったのか、宮本容疑者はこう主張している。 「気象情報などをLINEしていたのは真優子さんから『役に立つ』と言われたから」 さらにこう続けている。 「彼女に、付き合っている人がいるの? 結婚願望あるの? と聞くと答えは『NO』でした。最後にそれを確認したのは令和3年5月のことです」 そして、真優子さんから誕生日プレゼントをもらったことについては、こう得意げに語っている。 「大阪府警の取調べされた時に『お前、プレゼントもらっとるやろ』といわれた。真優子さんは『一生懸命に選んだ』と何回もいい、封を開けてワインを飲んだ。2000円以上3000円未満のワインだった」 「その日の帰りに『明日店行くね』というと『はい』と答えてくれた。私は次の日、店に花を持って行くと、飾ってくれました」
真優子さんとの付き合いを懐かしんで自慢しているかのようだ。さらに、発言は捜査機関への批判にまで及んだ。 「お客さんに付きまとわれ、住んでいるところまできて、怖い目にあった。その後、安全性の高いレディースマンションに引っ越したと教えてもらった。怖い目にあったという真優子さんがカギをかけないわけがない。第三者的にみた場合、検察は証明していない、どうかと思う」 「証拠は、捜査しても見つからなかったじゃないか。裏を返せば見つけられなかったということ。捜査機関の不手際であり、失態というか隠すために私に証拠隠滅と言っているし、そうともとれる。実際、誰が店に入って(犯行に及んだか)推測、推測……残念だな」 宮本被告は最後にこう語った。 「私は死刑を望んでいます。死刑は国家が人を殺す、死刑を宣告していただきたい」 だが宮本被告に求刑されたのは無期懲役。死刑は一般的にはあり得ないにもかかわらず、そう吠えたのだ。 「娘が殺害された凄惨な事件です。まゆ(真優子さん)はいつも『お父さんとお母さんのことは自分が守るから何の心配もいらない』と勇気づけてくれました。しかしそれが突然、奪われました。宮本被告は事件の真相も話しておらず、謝罪の言葉すらない」 母親の由美子さんが、こう怒りを吐露するのも無理はない。 懲役20年の判決となったが、控訴したことで190日間、拘置所で勾留されていることが「未決算入」で受刑扱いとなった。1審でも290日を算入されており合計で480日。つまり宮本被告の受刑は、実質的には18年半ほどになる。上告すれば、そこでも「未決算入」があるのが一般的だから、するとさらに刑務所での受刑は短くなる可能性がある。 現在大阪拘置所にいる宮本被告は、面会も自由で、カネを払えば弁当もお菓子もジュースもゼリーもコーヒーも取り寄せて味わうことができる。身勝手なストーカーがこのまま18年半後に社会復帰できるのだ。