10月22日、茨城県那珂市の海野徹市長は、茨城県東海村にある日本原子力発電東海第2原発の再稼働に反対する意向を明らかにした。
「実質的な事前了解権」を含む新たな安全協定を原電と結んだ周辺6市村の首長で賛否を明らかにするのは那珂市が初めて。
・・・ということをダマスコミ系が報じた。
東京新聞を読むと「ただ海野市長は来年2月に任期満了で、再出馬については明言していません」と、何か引っかかるような書き方である。
あたかも、自身の再選を狙って再稼働反対を表明した、といいたげである。
他社も似たようなことを書いているので、どうせ、配信会社の記事を垂れ流しにしているのは容易に推測できる。
ところが、実際には以下の通りである。
『「海野那珂市長の再稼働反対表明によって、30キロ14市町村のうち、5首長が反対を表明。大子町長、高萩市長、城里町長、茨城町長、そして那珂市長だ。」
あと2人で半数だ。』(1)
「実質的な事前了解権」というのは、今年の初頭になって決めたようだ。東海第2原発を所有する日本原子力発電(原電)との取り決めで、6市村だけの合意で再稼働出来るらしいのだが、実際には30キロ圏内には14市町村が存在する。当初は、その14市町村の事前了解が必要という話だったはずである。
そして、実際には14市町村に広げれば、5首長が反対を表明している、とのことである。6つの内1つと、14の内5つではだいぶ違った感じになる。
一般的に原発が立地している城下町は政治的にはあまり反対しない。なぜなら、補助金で自治体が金満状態だからである。目に見える箱物助成以外にも「目に見えない」マネーの奔流が存在する。もはや、毒を食らわば皿まで状態であり、元敦賀市長の「いまカネになるなら50年後に生まれる子供が全部カタワモノでもかまわない」の世界である。
少し離れた自治体はリスクは立地自治体とさして変わらない。事故が起きれば被曝被害が発生するし、重篤事故の際には自治体を放棄しなくてはならない。だが、特段原発マネーの恩恵が受けられるわけでもない。
ベントが定期点検や必要に応じて行われており、風向きによっては放射能がやってくる。陸から海に風が吹いている時にベントするようにはしているが、すべてがそのようにしているとは限らないし、海に放出された放射能雲が吹き戻ってくることもあるだろう。
アメリカの調査でも原発立地箇所周辺160kmは白血病などが有為に増加するとのことであり、稼働しているだけで被曝被害が出ている。
「働いたら負け」なる迷言が存在したが、その迷言に習えば、まさに原発が「再稼働したら負け」なのである。
沖縄県と長野県が長寿(平均寿命自体は単なる予測値であり実態に即していないが)なのは原発の影響が低いからだという仮設すらある。沖縄県には原発はないし、長野県は南北アルプスと富士山が障壁になっている。
大体、福島原発事故の影響範囲は少なく見ても300km程度に及んでいる。勝手に30km圏内だけの自治体の同意を取れば再稼働できるという制度自体がおかしいとい見方もできる。
『埼玉県議会は2017年12月22日、「原子力発電所の再稼働を求める意見書」を自民党などの賛成により採択し、衆参両議長や安倍晋三首相、世耕弘成・経産相などに送付した。』なんて「事件」も起きた。当然反対運動も起きているようである。
埼玉県には原発はない。福島第一原発は全6基廃炉となった。福島第二原発の4基も廃炉も遅まきながら決定している。つまり、埼玉県議会が再稼働を求めているのは柏崎刈羽原子力発電所か東海第二原発という事になる。
こういった原発再稼働要望はアベ政権への不気味な忖度の一環なのだろう。そもそもが、アベが再登板した事自体が不可思議である。アベは一度、一敗地まみれて首相を辞任している。緑資源機構の捜査が進む中、関係者が分かっているだけで4人も連続で死亡して、捜査そのものができなくなったという曰く付きの事件が起きたりもしていた。しかも、アベは国会答弁で「全電源喪失はあり得ない」と明言してしまった事により、福島第一原発の津波対策の堤防嵩上げが行われなかった可能性すらあり、アベ当人が福島原発事故の直接的な責任を問われてもおかしくない状態だった。
だが、アベは再登板して首相として返り咲いた。今井尚哉という原発ムラの人物を首席秘書官にして、原発再稼働に奔走している。原発再稼働阻止は、アベ政権の政策と正面衝突することになる。
本源的には人民側としては、被曝による人的被害を抑止するために原発再稼働を認めないのであるが、原発再稼働阻止闘争はアベ政権そのものへの挑戦という観点も存在する。
(1)
東海第二発電所
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E7%AC%AC%E4%BA%8C%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80