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ここ数年、にわかなリバイバルブームが起こっている「蟹工船」の作者・小林多喜二の生涯に迫るNHK「歴史秘話ヒストリア たった一人のあなたへ『蟹工船』小林多喜二のメッセージ」が、NHKオンデマンドの見逃し番組サービスに配信されている。視聴料金は315円(税込み)。
多喜二が育ったのは北海道の小樽。北の港町として札幌を凌ぐほど栄えていた中、貧しい労働者買いで育った多喜二は、親戚の支援を受けて進学、エリートコースといえる地元北海道拓殖銀行に就職する。その傍らですでに作家活動を始めていた。しかし、社会勉強のためにと足を踏み入れた夜の街で働くひとりの少女の出会いから、自らの生き方や文学の方向性を変えていく。
そんな中で昭和3年(1928年)、庶民でも政治への参加が可能となった第1回普通選挙が実施される。多喜二は無産候補を積極的に応援するが、選挙直後、政府当局から激しい弾圧を受ける。その上、労働運動に関わることを怖れた仲間たちが多喜二の元を次々と去っていった。その現状を目の当たりにした多喜二は、作家として自らできることはないかと思い立ち、名作「蟹工船」の誕生につながっていく。
昭和4年(1929年)に完成した「蟹工船」は経済恐慌にあえぐ日本にあって一大ブームを引き起こす。当局からの発禁処分など激しい抵抗に遭いながらも、新聞などで高い評価を受け、多喜二は文壇でも注目の的となっていく。一方で当局からの監視の目も次第に強くなり、銀行を辞めるはめに。
多喜二は執筆活動に集中するため東京に拠点を移す。労働者を題材とする作品を次々に発表する一方、特高ににらまれるようになり、ついには昭和5年(1930年)、治安維持法違反容疑で逮捕される。その後、弾圧の手を逃れながら作家活動を続けるものの、再び逮捕され、すさまじい最期を迎えることになる。
番組ではさらに、近年起きている「蟹工船」ブームの背景にも迫る。
歴史秘話ヒストリア たった一人のあなたへ『蟹工船』小林多喜二のメッセージ NHKオンデマンド
若い労働者らと蕎麦屋のニ階で交流する場面では、若い女工が、「おじさん、あたいたちのことも小説に書いてよ!」と懇願すると、多喜二がにこやかに、「うん、君たちががんばれば、きっと書くからね」と答えていました。多喜二が虐殺された後の「赤旗」多喜二追悼号に寄せられた××軍需工場内マツ子の手記中の思い出ですが、眼を輝かせる若者と、温かい多喜二の人柄をよく再現したシーンだったと思います。