今日は『8マン』の最終回について書きたいと思います。
『8マン』の最終回は実は二つあるんです。
(原作者の小説の最終回も入れて三つという説もあります。)
『8マン』の作画ををしていた桑田次郎氏が、銃刀法違反で逮捕されて急遽「少年マガジン」に連載されていた『8マン』は打ち切りになったんです。
そのとき、桑田次郎氏のアシスタントが最終回を描いて「少年マガジン」に載ったそうです。
その後、『8マン』が単行本化や文庫本化されるときに、その最終回の部分が桑田次郎氏の筆ではないということで載せられませんでした。
だから、「少年マガジン」に載ったこの最終回のみは、手に入らないんです。
『8マン』の最後のお話は、「魔人コズマ」でした。
この文庫本に載っています。

桑田次郎氏が描いた部分(最終回を含まず)は次の通りです。
東八郎探偵がさち子さんに、正体を知られてしまうところです。









そして、東八郎探偵は、心の中でさち子さんに別れを告げ、決死の覚悟で魔人コズマとの死闘に赴くのです。

魔人コズマとの戦いの部分は省略します。
魔人コズマは、まさに名前通り、魔人。恐ろしいやつでした。
そして、「少年マガジン」に連載されていた、逮捕される前の桑田次郎氏が描いた最後の2ページが次です。


ここで桑田次郎氏が逮捕されます。
最終回はアシスタントの人が書きました。

楠たかはる氏という方ですね。
この「少年マガジン」に掲載された最終回は、この「完全版」に収録されているそうです。



しかし、この本は絶版。
手に入りません。
そう、幻の最終回なのです。
しかし、インターネットを探して、何とか見つけたのが、次の1ページ。
これが、「少年マガジン」に1965年に掲載された、真の最終回の最後のページなのです。
ご覧ください。

ああ。切ないです。
魔人コズマを何とかやっつけた8マン、東八郎は、さち子さんのいる探偵事務所まで戻ってきたのに、そしてドアのノブに手をかけたのに、ドアを開けることはできずに、黙って去ってしまうのです。
切ない別れです。
切ないがゆえに、心に残ります。
もしかしたら、この後どこかで、さち子さんと東八郎探偵はまた出会うことがあるかもしれない。
そんなことを想像するのだって自由です。
だから私は、このアシスタントの人が書いた最終回が好きです。
※ ※ ※
桑田二郎(改名)氏本人が逮捕されて以来20年以上たってから書いたもう一つの最終回は、単行本や文庫本に収録されているので見ることができます。
でも私はこれが嫌いです。
それは次のものなんですが、

暗い。暗すぎます。

>私の女性秘書ーー若い娘の驚愕と恐怖に満ちた眼差しの記憶が錨と化して私の足を引き止めた。
この文がまずおかしいでしょう。
さち子さんの気持ちになってみれば、【恐怖】ではないはずです。
そうですねえ。【絶望】でしょうか。
そして、この第2の最終回の東八郎探偵は、最後に事務所の窓の明かりを見るだけで、ドアのところまではいかないんです。
そして、
>その後、二度と彼ら、探偵事務所の関係者達とは会っていない。
こう言い切ってしまうと、「その後さちこさんと再び会うことがあったかもしれない」という淡い想像さえ入れる余地がなくなってしまいます。
桑田二郎氏の画風があまりにも変わり切ってしまった、ということにも違和感を感じます。
「少年マガジン」に掲載された最終回こそ、名作だと思います。
こちらを、収録してほしいと思います。
以上、長くなりました。
最後まで見てくださった皆様に感謝いたします。