多摩爺の「時のつれづれ(長月の12)」
コカ・コーラに関わる出来事
毎年、9月のこの時期になると思いだす出来事がある。
それは・・・ 初めて飲んだコカ・コーラという得体のしれない飲み物との出会いだった。
叔父から突然飲まされた、醤油のような真っ黒の飲み物に、驚いたのなんのって
ホントに、ホントに・・・ ぶったまげたことを良く覚えている。
口から鼻に抜ける炭酸が、鼻の穴の中でプチプチっと音を立てて弾けていた。
さらに、ワンテンポ遅れてやって来た・・・ 強烈なゲップ
予備知識がなかったこともあって、人が居る前で大きな声でゲップをやらかしてしまった。
直ぐに口を覆えば良かったが、そんな余裕を与えないぐらい、
喉の奥から込上げてくる強烈過ぎる衝撃だった。
東京オリンピックを1年後に控えた・・・ 昭和38年の秋、9月最後の日曜日
夜明け前に、ドンドンドンと玄関を叩く音に目を覚ますと、
それは入院していた祖父の死を知らせる、ウナ電(至急電報)だった。
その日は、私が小学校3年生、妹が小学校1年生、楽しみにしていた運動会の当日だった。
応援に来る予定だった両親が、ゴザを持って校庭に場所取りに出かける寸前に、
受け取ったのが・・・ 訃報だった。
当然だが、運動会は欠席して、祖父が入院していた病院へ向かうことになる。
病院に着くと、先に来ていた叔父(親父の弟)と合流、一通りの手続きが終わったお昼前、
叔父と一緒に行った病院の売店で、飲まされたのがコカ・コーラだった。
調べによると、コカ・コーラが日本で販売開始されたのは、昭和36年だから既に3年経っていたが、
私たち小学生が、毎日通ってた駄菓子屋にコカ・コーラは置いてなく、
飲んだことがなければ、見たこともなく、それはまさに・・・ 未知との遭遇だった。
当時の常識として、炭酸飲料といえば・・・ ラムネか、サイダーだろう。
ラムネは、ビー玉を使った特殊な形状をしていたが、
コカ・コーラのような斬新さはなく、どちらかといえば、どんくさい形状をしていた。
そこに持って来て、濃い緑色の瓶に入って、真っ黒なんだから・・・ 不気味以外の何ものでもない。
叔父が「飲んでみろ。」っていうんで、飲んでみたら前述のとおり、
炭酸が鼻の穴でプチプチっと弾け、ワンテンポ遅れてから強烈なゲップである。
当時9歳の少年が、驚かないわけないだろう。
それから・・・ 数日後、「 スカッと爽やか コカ・コーラ 」というCMを見た。
よくよく考えてみたら、このCMは以前から流されており、
知らなかったのは、小学生の行動範囲に、コカ・コーラが置いてなかったこともあるが、
近所に新しく出来たスーパーマーケットにも行ったことがなく、
視線が届く範囲になかったのかもしれない。
しかし・・・ その翌年、またまた衝撃的な出来事があった。
当時の飲み物は瓶か缶に入っていて、使い捨てのペットボトル容器はまだなく、
瓶は基本的に使い回しだった。
そんなとこに持って来て、飲み終わったコカ・コーラの空き瓶を、お店に持って行くと、
10円で買い取ってくれるという情報が、子供たちの間で話題になっていた。
たぶん、国内で製造されているコカ・コーラの数量に対して、瓶の数量が足らないことから、
回収された瓶を工場で洗い直して、そのまま使い回していたのだろう。
それにしても、当時の小学生の小遣いは、だいたい10円ぐらいだったから
これは想定外の収入となり、小学生にして・・・ へそくりという裏技を学ぶんだから、
驚き桃の木山椒の木である。
当時は、親の言いつけもあって、小遣い帳なるものを付けていて、
無駄使いしてないかチェックを受けていたが、
このコカ・コーラの空き瓶収入は、簿外資産という位置づけにしていたため、
驚くことに、親からの会計監査を巧みに凌ぐ術を、小学生にして既に身に付けていたのである。
その2~3年後だったと思うが、「 スカッと爽やか コカ・コーラ 」のCMは、
「 コークと呼ぼう コカ・コーラ 」に、掴みのフレーズが変わっている。
おそらく、商売敵のペプシコーラとの差別化だと思うが、私たちの仲間うちでは評判が良くなく、
コカ・コーラはコーラ、ペプシコーラはペプシと呼ぶのが一般的でコークと呼ぶことはなかった。
とはいえ、コークという呼び名は、つい此間まで放映されていたオリンピックバージョンで、
「 ウチのコークは世界一 」といって、使われていたんだから、この会社の執念もアッパレだと思う。
最近では、喉が渇けば麦茶がメインで、コカ・コーラを飲む機会は、ほとんどないが、
ウォーキングの最中に、年に一度ぐらい、自販機で買って飲むことがある。
大人になったんで、鼻孔を擽るプチプチ感と、ゲップはさすがにないが、
その味は、あの頃と少しも変わらない、懐かしい味なので忘れていた感動が蘇ってくる。
コカ・コーラに出会って既に57年、いま密かに考えてる一つの悪だくみがある。
3歳と1歳だから、まだ早いが、
いつか孫にコカ・コーラを飲ませて、驚く顔を見てみたいのだ。
女房に叱られそうだが、鼻孔を擽られ、否応なしに出てくるゲップに、
孫はどんな顔をするだろうか?
認知症になってなければ・・・ おそらく、5~6年ぐらい先に実行するだろう。
コメントを頂戴しありがとうございました。
こんな物、飲めるか!
なんて思ったのも、あの時だけで、その後は快感にはまって、むしろ大満足なんだから
コカ・コーラは、魔法の飲み物でした。
~飲んでいるうちに美味しく感じました。不思議だな(笑)