「たにぬねの」のブログ

いつも、閲覧いただき、大感謝!!

→♂♀←_no.1_2012:宇宙エレベーターの物理学

2012-01-31 21:27:43 | 今月のお薦め_XX.20XX
宇宙エレベーターの物理学 佐藤実 オーム社
宇宙エレベーターの物理学
オーム社

「宇宙エレベーターの物理学 佐藤実 オーム社」の解答!?
章末とかにある問題に対してではないです。
書いてある内容についてです。高校物理の知識で
分かるつくりになっている優れた本であったが、
こっちの物理力が些か不安でして、後から自力で
導出したとき、間違いがないか確認するために
幾つかの数値について書き留めておくことにしたので
そのメモを指しての解答です。

然るに高校の時、学校の数学で使用していた某傍用問題集(4step!?)の巻末みたいです。
折角のメモが当時のように、「分かんないよ~」という状況にならないといいのですが。

□共通な設定、条件
宇宙エレベーターの乗り物部分をクライマーと呼称し、
大きさは全長50m, 直径8m, 質量50t程度で500人乗りを想定。
アルミニウム合金製で比熱は9.1x10^2J/kgK。
カーボンナノチューブの密度ρは1.3x10^3kg/m^3。
上向きは地球(の中心)から遠ざかる方向。
宇宙服は0.27atmの与圧。

地球の質量は6.0x10^24kg、半径は6.4x10^3km。
gは9.8m/s^2、万有引力定数Gは6.7x10^-11m^3/kgs^2。
月の半径1.7x10^3km。
太陽の質量は2.0x10^30kg、
火星の公転軌道の半径は2.3x10^11m。
地球の公転軌道の半径は1.5x10^11m。

シュテファン-ボルツマン定数で5.7x10^-8J/m^2sK^4
宇宙空間の温度は宇宙マイクロ波背景放射のために2.7K。
宇宙全体で平均すると4K。

◇問題略と略解説
1つ厚さ6cm・質量2.5kg・圧縮強度30MPaのレンガは理想的な積み方ができれば、
ざっと25000個超え(高さ1.5km程度)まで積めるかもしれない。

密度2.5x10^3kg/m^3、圧縮強度200MPa超高強度コンクリートのについて
理想的には柱状では8.2km程度、三角錐は24.5km程度の高さの建造物が作れるかも。
また、高さによって圧力が変わらないように頂上の高さ100kmとした場合、
底面の半径は頂上の半径の450倍とちょっとにすればよい。

月地球間(表面)3.8x10^5km、月の半径1.7x10^3km
なので月の周期は2.4x10^6s(28日よりちょっと短い)。

地表(付近)にある物体を円運動させる速さは7.9km/s、
(地表(付近)にある物体を円運動させた場合の周期はざっと85分)
地平線に沿って投げられた物体が落下しているという解釈もできる。

静止衛星は周期が24時間になり、このときの高度は3.6x10^4km(地球の半径を忘れないように)。
静止衛星からつり下げを行う場合、万有引力と向心力の均衡が崩れるが
静止衛星から地球の中心の反対方向である宇宙方向に
均衡を保つよう伸ばしていけばよい。
万有引力は距離の2乗に反比例するので内側より外側のが長くなる。

万有引力と向心力、地表から伸張した時の中心からの距離まで積分した結果が0になるとき、
伸張した物質の長さは1.4x10^5km。
伸張させる物質に働く張力は伸張物質をカーボンナノチューブとして
地球の中心からある距離における微小区間に作用する引力の差(潮汐力と同じ)を考慮し、
59x10^10Paになり、カーボンナノチューブの引っ張り強度が6.5x10^10Pa(65GPa)なので
現在の技術でもスペック的には可能であることが分かる。

伸張物質であるケーブルをつることができる長さの限界は3.6x10^4kmで地表まで届く。
脱出長(宇宙エレベーターが実現する比強度を重力加速度で割った値)は
4.6x10^3kmで破断長が脱出長より長いのでエレベーターは実現する。

クライマーの速度は1000km/hで静止軌道の高度まで1日半程度かかる計算になる。
エレベーターの加速度を0.85m/s^2にすると1000km/hに達する時間は
3.3x10^2sで4.6x10^4m程度の上昇で済むので設定としては妥当。
低軌道である高度400kmのける重力は8.7m/s^2、静止軌道3.6x10^4kmで重力は0.23m/s^2。
(低軌道を周回するISSでは地平線に沿って落ちているので周回方向では微小重力で10^-5G程度。)

静止軌道へ向かうクライマーのコリオリ力は
角速度が7.3x10^-5rad/sなので体重65kgの人は2.6N西向きにコリオリ力を感じる。
(高度400kmでは下に向かう力の0.5%程度西向きに引かれる感覚。)

エレベーターからの眺望は
高度10mでは11kmちょっと、100mでは36kmちょっと、
1kmでは1.1x10^2kmちょっと、10km(ジェット旅客機の巡航高度)で3.6x10^2kmちょっと。
(ちょっとは空気の屈折率の絡みを考慮した分)
さらに高度100kmでは視野角が160°、400kmでは140°(直径30cmの地球儀を表面1cm離れて見た感じ程度)、
静止軌道では8.7°(直径30cmの地球儀を1.7m離れて見た感じ)。

クライマーを静止させるには重力と磁場によるローレンツ力をつり合わせればよいので
ケーブルの磁場の磁束密度を20Tとすると2.5x10^4Aの電流が必要になる。
0.85m/s^2の加速度を上向きに発生させるには2.7x10^4A(=27kA)を要することになる。
高度100kmにおけるクライマーに対する重力の位置エネルギーは4.9x10^10Jであるが
高度が増すと万有引力の位置エネルギーを考えなければいけないので、
万有引力による位置エネルギーは高度100kmであれば、4.8x10^10J。
1000km/sで上昇しているクライマーの運動エネルギーは1.9x10^9J、運動量は1.4x10^7kgm/s。

排気速度2.4km/sのロケットエンジンを使って
地表でクライマーを1秒支えるのに放出する質量は(50tx9.8m/s^2)/2.4km/s=2.0x10^2kg/s。
比推力は1kgの物体が1kgの物体を重力に逆らって支える推力を発生し続けることのできる時間

H-IIBは第1段液体ロケットエンジンLE-7A推進力2196kN,比推力440秒を2基、
第2段液体ロケットエンジンLE-5B推力137kN,比推力448秒。
第1段に取り付けられている固体ロケットブースターSRB-A推力9220kN,比推力114秒を4本。
はやぶさはイオン化した推進剤をクーロン力で押し出して高速で放出する
イオンエンジンμ10の推進力8mN,比推力3200秒を4基。8mNは地表では1円玉を持ち上げられない。
LE-7Aの力積は燃焼時間352秒なので7.7x10^8kgm/s、
μ10は動作時間20000時間だとすると力積は5.8x10^5kgm/sで推進力の差が力積的には減少が分かる。

高度300kmの周回軌道に10t荷物を運ぶ場合、7.7km/sの軌道速度をロケットに与えるには
位置エネルギー分の仕事、地表付近の空気抵抗も考慮し、1.5km/s加えた到達速度を9.2km/s設定が
妥当な線として、ツィオルコフスキーの式より

液体水素と液体酸素を使うロケットエンジン1基
構造物10t,燃料90t,比推力450秒とすると
構造効率ε=20/(110)=0.18で到達速度7.6km/sで9.2km/sには届かないので、

構造物2t,燃料18t,比推力450秒1基を2段目(大きい方を下)にすると、
構造効率ε=40/130=0.31で1段目の燃料が空になった時の到達速度は5.2km/s、
1段目を切り捨てて、2段目に点火、
ε=12/30=0.4で到達速度は4.0km/sで1段目とあわせて9.2km/sを獲得!。

静止軌道にある物体を慣性系から見ると3.1km/sで動いている。
非慣性系が受ける万有引力、感じる遠心力の大きさは15Nでつり合っている。
剛体は点の位置を指定する3つと向きをしている3つの数字が必要。
地球と月の質量中心
地球の座標を0とすると質量中心は4.7x10^3kmで地表より内側に位置する。
宇宙エレベーターを1本の剛体とすれば質量中心は静止軌道から34000km外側になる。
無重力で回転してしまうのは質量中心の周りを回転する回転運動。

宇宙服を着て行う仕事は
気体が膨張したときに気体がする仕事は圧力を体積で積分すればわかる。
宇宙服を着てレンチを握るには伸ばしていた指を手袋の中で曲げる必要がある。
指を曲げると手袋の体積は減少する、このときの手がする仕事を
1本の指を円柱、それを覆う手袋部分を円筒として90°程度曲げる場合を考える。
円筒を曲げて押しつぶされる容積は
45°の角度で斜めに切り取り切り口を貼り合わせたイメージ。

手袋筒部分の半径を1.5cm, 指の半径を1cm、
片手をパーからグーにすると曲がる関節の数は14なので(5本の指で同じ様に変化すると)
このときに手が気体に対してする仕事は4.3J。
この仕事を地表で10kgのダンベルを持ち上げる高さに換算すると4.4x10^-2mになる。
これに宇宙服の素材の曲げにくさも加わるので0.27atmでも結構な労働になることが分かる。

地表付近の脱出速度は位置エネルギーと運動エネルギーの和が
相殺される状態で得られるので1.1x10^4m/s。
同様に考えて、地球脱出臨界高度を求めると4.7x10^7mになり、
接線方向に3.9x10^3m/sの速さを与えるだけで脱出できる。

地球で太陽の引力に逆らうには4.2x10^4m/sの速度が必要。
地表から公転と同じ方向で脱出する場合、1.6x10^4m/sで済む。
さらに、宇宙エレベーターの端1.4x10^5kmから脱出する場合、1.2x10^4m/sが必要なので
ケーブルの端の速さが1.1x10^4m/sあるので0.1x10^4m/s加えるだけで脱出できる。

ホーマ軌道移行で地球から火星へいく場合、宇宙エレベーターの高度5.7x10^4kmより出発。
地球の自転軸は23°傾いているので本当は3回のロケット噴射が必要(3インパルス・ホーマン軌道移行)で、
実際は5.7x10^4kmより少し高い位置から出発することになる。

途中の天体の近くを通過させることで速さや軌道面を変更する方法として
スイングバイ(swing-by)や重力スリングショット(gravitationalslingshot)がある。
スイングバイは軌道変更に使う天体に双曲線軌道で近づき、
近点で双曲線方向にそって漸近線の方向へ飛び去る。

4Kより高い物体表面からは宇宙空間に熱放射で熱が移動するので
大人の男性が1日に消費するエネルギーは2650kcalとして(1cal=4.2J)、
1秒当たりの発熱量は1.3x10^2W。
体温を310K, 宇宙温度を4K, 放射率を1とすると放熱できる面積A=0.25m^2。

宇宙から見た地球の平均温度254Kとして、地球への放熱は0.45m^2。
これらを放熱しないとクライマーに熱がこもることになる。
(宇宙エレベーターではケーブルを放熱に使うことが効果的。)

太陽の熱放射の温度は5777K。
赤道面とケーブル面が一致するとして、
太陽定数:太陽放射による熱量は1m^2当たり1.4kW、
太陽放射を受けるケーブルの温度が313K程度なので放熱できそう。

静止軌道に達したクライマーが獲得する位置エネルギーは
地表REから静止軌道上RGEOまでの力の積分で2.4x10^12J、
全てを運動エネルギーに変えた時の速度は9.8x10^3m/s。
クライマーがアルミニウム合金として、
位置エネルギーが全て熱に変わったときの温度上昇は5.3x10^4K。

"→♂♀←"「オススメ」のインデックス

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« A.D.2012カレンダー更新0 | トップ | →♂♀←_「オススメ」とお読みく... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

今月のお薦め_XX.20XX」カテゴリの最新記事